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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科89巻1号

2017年01月発行

雑誌目次

特集 めまい診療のNew Trend

ページ範囲:P.5 - P.5

超高齢社会におけるめまいの疫学

著者: 堀井新

ページ範囲:P.6 - P.10

POINT

●加齢により末梢および中枢前庭機能は低下する。

●前庭機能の低下はふらつきだけでなく,認知機能を含むADLの低下や転倒事故の原因となる。

●超高齢社会においては,前庭機能のみならず加齢による身体機能低下に対しても対策を講じる必要がある。

《最新のめまい診断》

神経耳科学的検査

著者: 室伏利久 ,   牛尾宗貴

ページ範囲:P.12 - P.20

POINT

●めまい・平衡障害診療における神経耳科学的検査のトレンドは,前庭迷路にある5つのコンパートメントのすべてを評価することである。

●3つの半規管は,HIT(head impulse test)で評価できる。

●2つの耳石器は,VEMP(vestibular evoked myogenic potential)で評価できる。

画像検査

著者: 寺西正明 ,   曾根三千彦

ページ範囲:P.22 - P.28

POINT

●最近の画像診断の進歩により内耳疾患で画像所見が得られることが多くなり,内耳疾患における画像診断の重要性は大きくなってきている。

●3D-FLAIR MRIは,内耳内の微細なタンパク質や出血,微細なガドリニウム(Gd)を検出できる。内耳炎では,内耳の血管透過性亢進により静脈内のGdが内耳に漏出し内耳造影効果が認められる。

●8倍希釈のGdを鼓室内に注入24時間後,3D-FLAIRおよび3D-real IRを3TのMRIで撮影することにより内リンパ水腫の画像化が可能になった。さらに,現在では通常量Gdを静脈注射4時間後にMRIにて内リンパ水腫画像を得ることができ,両耳の内耳を一度の造影剤静注で評価できるようになった。

遺伝子検査とめまい診断

著者: 野口佳裕

ページ範囲:P.30 - P.34

POINT

●片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛),周期性失調症,家族性両側前庭機能低下症に関する遺伝学的研究が進行中である。

●めまい・平衡障害を伴う代表的な遺伝性難聴として,DFNA9,DFNB4/Pendred症候群,Usher症候群が挙げられる。

●常染色体優性遺伝性メニエール病の原因候補遺伝子としてPRKCBが同定されている。

《主要なめまい疾患の動向》

メニエール病診療ガイドライン

著者: 武田憲昭 ,   松田和徳 ,   佐藤豪

ページ範囲:P.36 - P.40

POINT

●厚生労働省前庭機能異常に関する調査研究班により,メニエール病診療ガイドラインが2011年に発刊された。今後,改定が予定されている。

●メニエール病の病態が内リンパ水腫であることを記載し,メニエール病確実例を「難聴,耳鳴,耳閉塞感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する」場合に診断する。

●メニエール病のめまい発作時の診療,メニエール病の発作後の診療と内リンパ水腫推定検査,メニエール病の発作予防と鼓膜マッサージ器による中耳加圧治療,内リンパ囊開放術と前庭機能破壊術について解説した。

良性発作性頭位めまい症—半規管結石症説から学ぶ温故知新

著者: 中山明峰 ,   佐藤慎太郎 ,   國弘幸伸

ページ範囲:P.42 - P.47

POINT

●良性発作性頭位めまい症(BPPV)の歴史を知ったうえでの診断,治療が必要である。

●「BPPV」という用語の定義があいまいになり,乱用される傾向にある。このため,広義と狭義のBPPVに分けるなど用語の整理が必要である。

●多くの医療者はBPPVの治療はレシピのように順番に行っているが,眼振を観察しながら臨機応変に治療法を変える必要がある。

●BPPVの再発を論じる前に,前の治療で完治したかを検討する必要がある。また,内耳障害などの合併を伴うBPPVは再発しやすいことが知られ,このほかに併発する疾患としての認識も必要である。

●浮遊耳石置換法(CRP)を考案したEpleyは開業医であるが,定説に反した医療を行ったのは,「自身が診たことのほうが正しいと確信していたから」と述べている。この精神は現在世界的に高い評価を得ている。

前庭神経炎

著者: 岩﨑真一

ページ範囲:P.48 - P.54

POINT

●前庭神経炎は,自発眼振を伴う回転性めまいおよび体平衡障害を急性に発症する末梢性前庭疾患であり,前庭神経節に持続感染しているHSV-1の再活性化が病因として有力視されている。

●主に上前庭神経の障害と考えられていたが,近年では,上下の前庭神経が障害される全前庭神経炎や下前庭神経の単独障害による下前庭神経炎も存在することが明らかになっている。

●治療は,急性期には安静と補液などの対症療法,その後は前庭代償を促進させる前庭リハビリテーションが有効である。急性期のステロイド治療についても,前庭機能の回復に有効とされている。

椎骨脳底動脈循環不全

著者: 瀬尾徹

ページ範囲:P.55 - P.59

POINT

●椎骨脳底動脈循環不全(VBI)は,椎骨脳底動脈のさまざまな病因による循環障害に起因するめまいを主体とする疾患として捉えることができる。

●VBIはめまい以外の椎骨脳底動脈系の局所神経症状を伴うことが多い。

●MRAにおいて,椎骨脳底動脈の屈曲,蛇行,狭窄,途絶を認めることがある。

●他の神経症状がなくとも脳梗塞予防のための適切な介入が必要である。

心因性めまい

著者: 小川恭生 ,   永井賀子

ページ範囲:P.60 - P.65

POINT

●心因性めまいは精神疾患の一症状としてめまい・ふらつきを起こしている場合と器質的前庭疾患に続発して不安障害やうつを起こしている場合の2つに分けられる。

●心因性めまいの診断には心理テストが有用である。

●めまいの治療では前庭疾患に対する治療だけでなく,原因となる精神疾患,ストレスにも注意を払う必要がある。

●ベンゾジアゼピン系睡眠薬,抗不安薬の漫然とした長期投与は避けるべきである。

●心因性めまいの治療には,精神科,心療内科との連携が必要である。

《めまい診療のトピックス》

前庭性片頭痛

著者: 新井基洋 ,   中山貴子

ページ範囲:P.66 - P.70

POINT

●前庭性片頭痛の診療は『国際頭痛分類第3版beta版』に基づいて行われるのが世界的なスタンダードとなっている。

●しかし,この診断基準には前庭性片頭痛に特徴的な眼振所見の記載がないなど十分とは言えず,治療上発展が望まれる。

●代表的な片頭痛予防薬には,塩酸ロメリジンがある。その治療効果を自験例35例で解説した。

小児のめまい—良性発作性めまいとその類縁疾患

著者: 五島史行

ページ範囲:P.72 - P.77

POINT

●良性発作性めまいの類縁疾患として,脳底型片頭痛と片頭痛関連めまいが挙げられる。

●小児のめまい診療においても最も重要なことは問診であり,いかに本人・家族から情報を収集するかがポイントとなる。

●症状の発生頻度の高い良性発作性めまいでは,頭痛の有無,家族の片頭痛の有無,乗り物酔いのしやすさなどが診断の助けとなる。

Visual display terminal(VDT)作業によるめまい

著者: 都筑俊寛

ページ範囲:P.78 - P.84

POINT

●長時間のVDT作業はめまいを引き起こす。

●VDT症候群のめまいは女性に多く,眼精疲労・頸部痛・頭痛・不安障害・うつを合併することが多い。

●治療は,こまめな休息の指導と,合併症状の治療が大切である。

●VDT症候群は人類の英知が生んだユビキタスの副産物である。

上半規管裂隙症候群

著者: 堤剛

ページ範囲:P.86 - P.89

POINT

●前半規管膜迷路の中頭蓋底への露出により,めまいと聴覚症状を生じる。

●前半規管瘻孔により,中耳圧や脳脊髄圧変化,強大音響に伴う病的な内リンパ流動が惹起される。

●薄切CTにより診断されるが,false positiveも多く,臨床所見やVEMPなどを参照すべきである。

●治療は手術(中頭蓋底のre-surfacing/capping,乳突洞削開によるcanal pluggingなど)となる。

動揺病と地震酔い

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.90 - P.92

POINT

●動揺病には船酔い,車酔い,空酔い,シネマ酔い,シミュレータ酔い,宇宙酔いなどがある。

●乳幼児ではほとんど認めない。入学前の小児期では顕著であるが,学童期頃までに70%がよくなる。女性に多く,成人まで持続する率も女性において高い。

●ふらつきや浮動感に前庭-自律神経症状(冷汗,蒼白,嘔気,嘔吐など)を伴う。眼振は認めないことが多い。

●発症メカニズムとしては,神経ミスマッチ説が有力視されている。

●地震酔いは下船病(Mal de debarquement)の一種と考えられている。動揺病とは異なり,じっとしているときに最も症状が強く,歩行や運転などの実際の動きによって軽減する。静止空間への再適応障害と考えられている。

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欧文目次

ページ範囲:P.3 - P.3

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.96 - P.96

 11月18日,大方のメディアの予想に反しトランプ氏が次期米国大統領に選ばれました。政治経験がないことを逆手にとり「メキシコとの国境に壁を築く」,「環太平洋パートナーシップ協定から離脱する」,「オバマケアを撤廃する」,「イスラム教徒の入国を制限する」など過激な主張を繰り返し,既存の政治に強い不満を抱く白人労働者層から熱狂的な支持を集めたのが勝因とされます。こうしたアメリカ第一主義というスローガンに沿った内向的な政策が果たして実施されるのか? 果たして米国の国益になるのか? は甚だ疑問ですが,米国民は既存の政治家には期待できず,「建前ではなく,言いたいけど言っちゃいけないこと」を大胆に発言してくれるリーダーの登場を待ち望んでいたようです。5日後に大学で行われた緩和ケア講習会。最後のセッション「コミュニケーション・スキル」のTake Home Messageは「沈黙」でした。われわれの世界では,「雄弁」であることより,「沈黙の時間」をつくって,患者さんやご家族の言い出せない思い・表現できない感情を引き出すことが大切です。

 さて,今月の特集は「めまい診療の New Trend」です。堀井 新(新潟大),室伏利久(帝京大溝口病院),寺西正明(名古屋大),野口佳裕(信州大),武田憲昭(徳島大),中山明峰(名古屋市立大),岩崎真一(東京大),瀬尾 徹(近畿大),小川恭生(東京医科大八王子医療センター),新井基洋(横浜市立みなと赤十字病院),五島史行(東京医療センター),都筑俊寛(銀座コレージュ耳鼻咽喉科),堤  剛(東京医科歯科大),肥塚 泉(聖マリアンナ医大)と錚々たるメンバーにより,最新のめまい検査法や代表的なめまい疾患の診断と治療,前庭性片頭痛や小児・高齢者のめまい,VDT作業によるめまい,上半規管裂隙症候群,動揺病と地震酔いなどの最新のトピックスについてご執筆いただいています。是非,ご一読ください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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