文献詳細
原著
前庭性と心原性の鑑別を要したドロップアタックの3症例
著者: 小板橋美香1 荒井美希2 五島史行2
所属機関: 1東京女子医科大学東医療センター耳鼻咽喉科 2独立行政法人国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.843 - P.847
文献概要
ドロップアタックは,姿勢を維持する筋の脱力または脚の筋の異常収縮によって生じる,突然の転倒である1)。心原性,脳血管性,てんかん,心因性,前庭性などさまざまな原因で生じるが,原因が同定できることのほうが少なく,2/3の症例では原因不明である。メニエール病の経過中に認められる前庭性のものはドロップアタック全体の約3%にすぎない2)。前庭性ドロップアタックはTumarkinによって最初に報告されたためTumarkin otolith crisis3)とも呼ばれている。Balohら4)は10年以上の経過で175例のメニエール病患者の12人,Blackら5)は200例中11例に認めたと報告しているように,メニエール病の10%に認めるとする報告が多い。前庭性ドロップアタック発作の特徴は,
①立位または座位で,特別の誘因や前兆なく発症する
②重力によって地面に押されたり,つかれたりするような感覚を伴う
③突然に自分の周囲が動いたり傾いたように感じて転倒する
④意識消失は伴わない
ことである6)。ドロップアタックに意識消失の有無は問わないとする報告もある1)が,一般に前庭性ドロップアタックは意識消失はなく7),本邦での報告は稀である。
今回われわれはめまいの経過中にドロップアタックを認めた心原性,前庭性の3症例を経験したので報告する。なお本論文は東京医療センターの倫理審査委員会の承認を受け(承認番号第R16-073号),内容に同意を得られた症例を対象者とした。
参考文献
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