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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科89巻2号

2017年02月発行

雑誌目次

特集 こどもの上手な診かた

ページ範囲:P.101 - P.101

《主要症候・疾患の診かた》

難聴

著者: 柿木章伸

ページ範囲:P.102 - P.107

POINT

●こどもは自身の症状を表現することが難しく,診療中の協力も得られにくいため,診察室の入出時からこどもの状態をよく観察し,情報を得ることが重要である。

●小児では,年齢やプローブの挿入位置などが聴力検査閾値に影響を及ぼすため,検査結果の解釈には注意が必要である。

●遺伝子検査は先天性難聴の正確な診断・治療,予後予測などに有用であるが,遺伝カウンセリング体制が整備された施設で行われるべきである。

●こどもの聴覚障害は発症時期によりさまざまな二次的障害を引き起こすため,安易な経過観察は避ける。

中耳炎

著者: 伊藤真人

ページ範囲:P.108 - P.112

POINT

●こどもの正確な鼓膜所見をとるための中耳炎の診療は,鼓膜を診る前から始まっている。

●聴力の推定は,乳幼児聴力検査やABR,ASSRができない施設でも,耳鼻咽喉科であればどこでも可能である。

●こどもの中耳炎では,急性中耳炎・滲出性中耳炎の鼓膜チューブ留置術と,乳様突起炎の一部が手術適応となる。

●慢性中耳炎における保存的加療はあくまでも手術を前提とした消炎治療であり,保存的加療で時間を浪費し,病態を長引かせてはならない。

●急性中耳炎と滲出性中耳炎は密接な関係にある。特に3歳未満の乳幼児での診断・治療においては,これら2つの中耳炎を全体として捉える必要がある。

鼻炎・副鼻腔炎

著者: 保富宗城

ページ範囲:P.114 - P.119

POINT

●患児が鼻症状を訴えることは少ないため,保護者にもていねいな問診を行う。

●診察時のみならず,その前後の反応を十分に観察し,症状把握に努める。

●小児の鼻副鼻腔炎の診断に際しては,湿性咳嗽を見逃さないことが極めて重要である。

●小児の急性鼻副鼻腔炎に対しては,鼻漏,不機嫌・湿性咳嗽の程度に加え,鼻汁あるいは後鼻漏の性状と量から重症度を評価する。

吃音・言語障害

著者: 菊池良和

ページ範囲:P.120 - P.124

POINT

●診察時には,吃音が出ないことが多い。

●自然回復率は,男児は3年で約6割,女児は3年で約8割である。

●成人になると約4割は社交不安障害に陥るので,発話意欲を損なわないことが大切である。

●180度方向転換した,吃音の歴史的変遷を知っておくことが大切である。

気道狭窄・嚥下障害

著者: 安岡義人

ページ範囲:P.126 - P.133

POINT

●小児の気道狭窄・嚥下障害の原因疾患には,乳幼児に多い先天性疾患や神経・筋疾患(広義),炎症・アレルギー性疾患,異物,腫瘍,外傷などがある。

 本論文では,先天性要因をもつ疾患を中心に述べる。

●問診と視診での注意点と画像診断の有用な症例を示す。

●部位別に代表的疾患を提示し,呼吸,嚥下,発声に関する特徴的症状と病態,診断,治療の要点と手術療法について解説する。

扁桃と睡眠時無呼吸症候群

著者: 安達美佳 ,   鈴木雅明

ページ範囲:P.134 - P.139

POINT

●小児の閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は,睡眠・呼吸の障害が健康な成長発達を妨げる疾患である。

●扁桃肥大・アデノイドはOSAの主な原因であるが,重症度を示すものではない。

●OSAの重症度診断の基準は確定されたものはなく,全身の状態,OSA-18問診票や動画撮影,多点感圧センサーなど多角的な評価が重要である。現状では携帯型モニターの信頼性は低いので,注意が必要である。

●扁桃肥大・アデノイドを認める症例では,扁桃摘出・アデノイド切除が第一選択となる。保存的に経過をみる場合でも,半年程度で重症度の再評価が必要である。

●扁桃肥大・アデノイドを認めない重症例,合併症をもつ症例,36か月未満の乳幼児例は専門機関への紹介が望ましい。

頭頸部腫瘍

著者: 有泉陽介 ,   朝蔭孝宏

ページ範囲:P.140 - P.144

POINT

●疾患頻度,身体的特徴,心理的・社会的背景など成人と異なる点に注意する。

●CT,MRI検査の適応は小児科医コンサルトを検討する。

●保険適応や指定難病などの変化に留意する。

●血管奇形と血管腫の区別が必要である。

●肉腫は専門施設へ紹介する。

異物

著者: 竹内頌子 ,   大久保淳一 ,   高橋梓 ,   若杉哲郎 ,   北村拓朗 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.146 - P.149

POINT

●本人からの聴取が困難な場合も多いが,保護者などからの十分な問診が適切な対応への手助けとなる。

●気道異物や危険異物など緊急の対応を要する場合には,迅速な診断と適切な処置が求められる。

●安全性を優先して,待機的な対処が望ましい場合もある。

●異物に対する保護者への注意喚起も必要である。

《トピックス》

ワクチンの現状と問題点

著者: 小川洋

ページ範囲:P.150 - P.155

POINT

●2013年の予防接種法改正によりHib(インフルエンザ菌b型)ワクチン,小児用肺炎球菌ワクチン,ヒトパピローマウイルスワクチン,水痘ワクチンが定期接種となった。

●2013年の予防接種法改正により,ワクチン・ギャップ解消に向けて予防接種基本計画が策定された。

●ワクチンが唯一の予防手段である疾患にはワクチン接種が必須である。

●おたふくかぜに対するワクチン接種は,いまだに任意接種である。

学校健診

著者: 大島清史

ページ範囲:P.156 - P.161

POINT

●健診はスクリーニングシステムとしての評価が必要である。

●学校医未配置地区への対応を検討する必要がある。

●インクルーシブ教育に伴う諸問題への対応が必要である。

●音声言語検診の普及が不十分であり,推進の必要がある。

発達障害

著者: 渡部京太

ページ範囲:P.162 - P.167

POINT

●自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の診断には,それらの疾患概念や歴史的背景を理解することが重要である。

●ASDは聴覚的理解よりも視覚的理解に優れており,検査・治療の見通しを伝える際には,絵・写真など視覚化したものを用いるとよい。

●ASDは,病院・注射への不安からだけでなく,ある種の音(純音聴力検査やMRI検査時の音など)に対して知覚過敏を示したり,急な予定変更にかんしゃく(パニック)を起こすことがあるため,配慮が必要である。

遺伝子検査

著者: 原真理子 ,   守本倫子

ページ範囲:P.168 - P.172

POINT

●先天性難聴に対し遺伝子検査を行うことにより,難聴の程度や自然歴,治療法,合併症などが予測でき,個々の症例に応じた介入が行える。

●難聴を合併する症候群では,難聴のみならず,合併症に対する事前の予防策や適切な治療開始など,時機を逸することなく対応していくことができる。

●遺伝情報には,生涯変化しない不変性,血縁者間で同じ情報を有する可能性がある共有性,将来の発症を推測できる予測性などの特殊性があり,不適切に扱われた場合には不利益が生じる可能性があるため,慎重に扱うべきである。

●遺伝子検査を行う際には,検査前後に専門家を交えた遺伝カウンセリングが必須であり,心理社会的な支援を含めた総合的な遺伝医療体制を整える必要がある。

原著

ピアス型イヤリングが埋没した耳介異物の1例

著者: 酒井昇 ,   白取謙一 ,   今石寛昭 ,   永沼久夫 ,   山地誠一 ,   吉澤朝弘 ,   小市健一

ページ範囲:P.175 - P.177

はじめに

 イヤリングはファッションとして代表的なものの1つである。最近イヤリングの中で,耳垂に小穿孔をあけ金属の針金を通すピアス型イヤリンが好んで使用されている。これに伴い,ケロイド,接触皮膚炎,感染などの合併症が多数報告されてきている。今回われわれは合併症としては稀な耳介の埋没異物の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

下咽頭がん術後に対する経直腸的甲状腺ホルモン補充療法例

著者: 南和彦 ,   大庭晋 ,   久場潔実 ,   松村聡子 ,   小柏靖直 ,   中平光彦 ,   菅澤正

ページ範囲:P.179 - P.182

はじめに

 甲状腺機能低下時のホルモン補充には,現在主にサイロキシン(T4)の合成剤であるレボチロキシンナトリウム水和物(チラージン® S)の経口内服投与が行われている。内服が処方どおりに正しくできれば機能低下症のコントロールは比較的容易であるが,本邦では甲状腺ホルモン製剤は経口薬しか製剤化されていない。このため,なんらかの理由で経口摂取,経管栄養管理が困難となった場合にはその代替法が必要となる。

 今回,下咽頭がんのために下咽頭喉頭頸部食道切除術・遊離空腸再建術を施行し,術後10か月で遊離空腸部分壊死をきたして長期間経口摂取ができない症例に対して坐薬(チラーヂン® S坐薬)として経直腸的に甲状腺ホルモン薬を投与し,良好な結果が得られたので報告する。

耳下腺に発生しリンパ節病変を伴ったMALTリンパ腫の1例

著者: 池田文 ,   及川伸一 ,   宮口潤 ,   齋藤大輔 ,   片桐克則 ,   志賀清人 ,   佐藤宏昭

ページ範囲:P.183 - P.186

はじめに

 Mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫はB細胞性腫瘍細胞からなり,低悪性度で緩徐な進行が特徴とされる。全身のあらゆるリンパ節外臓器から発生するが,多くは消化管に発生し,そのなかでも胃を原発とするものが最多である。頭頸部での発生は比較的稀とされているが,甲状腺や唾液腺に発生することが多く,症例の報告が散見される。今回われわれは,基礎疾患としてシェーグレン症候群の可能性がある85歳女性の耳下腺に発生したMALTリンパ腫を経験したので,文献的考察を含めて報告する。

書評

マイナー外科救急レジデントマニュアル

著者: 林寛之

ページ範囲:P.187 - P.187

 確かに救急外来では実にバラエティ豊かな訴えの患者が行き来する。専門分化が進んだ昨今であればこそ,「専門以外の疾患をみて訴えられたらどうしよう」という当直医の不安はよくわかる。でもね,患者も条件は同じなんですよ。救急となれば背に腹は変えられず,患者も医者を選べない。相思相愛といかない条件下での診療こそ,「患者の期待に応える医療」であって,自分の好きなものしかみない「選り好みの医療」ではないのだ。当直で頑張っている先生方は本当に偉い!

 一方,「困ったらいつでも呼んでもらっていいですよ」というオフィシャルな他科コンサルトルールはあっても,いざコンサルトすると「マジ? この程度で呼びつけたの?」といったように,各科からみれば初歩中の初歩の処置で済んでしまうということも少なくない。そんな時に強い味方が本書なのだ。

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欧文目次

ページ範囲:P.99 - P.99

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.188 - P.188

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.192 - P.192

 新年を迎えて1月も過ぎ,業務も通常どおりのかたちになった頃と思います。2016年から東京オリンピック準備にかかわる問題,豊洲市場の問題,TPP問題,米国・ロシアその他外交上の多くの問題が山積したまま年が変わりました。医療の現場でも未だ混迷深める専門医制度,多くの高額新薬保険適応による医療費増大への危惧など,今年は何かさまざまな出来事が起こる可能性を秘めていますが,あらゆることに対応できるよう柔軟な気持ちをもちたいと思います。本誌も今年はさらにバージョンアップし,多くの耳鼻咽喉科の先生に期待される雑誌になると思います。

 2月号の特集は「こどもの上手な診かた」です。小児に特有の疾患,診察法,治療法など日常診療で耳鼻咽喉科医を悩ますこともしばしばです。項目としては難聴,鼻炎・副鼻腔炎,吃音・言語障害,気道狭窄・嚥下障害,扁桃と睡眠時無呼吸症候群,頭頸部腫瘍,異物,〈トピックス〉としてワクチンの現状と問題点,学校健診,発達障害,遺伝子検査,一般的な疾患から新しい分野まで網羅されています。小児の耳鼻咽喉科診療に関して,皆新進気鋭の執筆者の方々です。力のこもった原稿で日常診療に役立つ内容となっています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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