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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科89巻3号

2017年03月発行

雑誌目次

特集 女性と耳鼻咽喉科—診療のポイント

ページ範囲:P.197 - P.197

耳鼻咽喉科領域の女性診療のポイント

著者: 飯野ゆき子

ページ範囲:P.198 - P.202

POINT

●女性はホルモン,特にエストロゲンの働きによってライフサイクルの各時期に特徴がある。この年齢的特徴を理解し,女性診療に臨むことが求められる。

●ライフサイクルによって出現しやすい疾患を理解する。

●診療のみならず,検査や治療といった面で妊娠と授乳の有無を必ず問診する。

●生活環境の変化が大きい女性は多くの負担を抱え,過剰なストレスが原因となる疾患もあるため,生活環境の背景を知ることが重要である。

《主要疾患の診療ポイント》

急性低音障害型感音難聴とメニエール病

著者: 佐藤宏昭

ページ範囲:P.204 - P.206

POINT

●急性低音障害型感音難聴の原因は不明であるが,メニエール病と同様に病態として内リンパ水腫が想定されている。

●急性低音障害型感音難聴とメニエール病はともに女性に多い疾患である。

●両疾患が女性に多い理由の1つとして,性ホルモンの関与が考えられる。

●いずれの疾患も性差を考慮した対処が必要である。

心因性難聴

著者: 野口佳裕

ページ範囲:P.208 - P.211

POINT

●心因性難聴は小児例と成人例で臨床像が異なるが,女性に多い点で共通している。

●器質的耳疾患を背景とする心因性難聴が存在する。

●小児例では,知的発達の遅れが認められる場合がある。

●早期に心療内科医,精神神経科医や児童精神科を専門とする小児科との連携が必要な場合がある。

口腔内灼熱症候群・ドライマウス・味覚異常

著者: 山村幸江

ページ範囲:P.212 - P.215

POINT

●口腔内灼熱症候群(burning mouth syndrome:BMS)は主に更年期と閉経後の女性にみられる。

●ドライマウス(口腔乾燥症)は高齢者に多く,そのなかでも女性の割合が高い。

●BMSとドライマウスが更年期・閉経後女性に多い理由は明らかではないが,性ホルモンの減少が関与するかもしれない。

●味覚障害の発症頻度には性差はないと推定されるが,受診者数は女性に多い傾向がある。これは,調理などで味覚を意識する機会が多いためと考えられる。

咽喉頭異常感症

著者: 矢部はる奈

ページ範囲:P.216 - P.219

POINT

●咽喉頭異常感の要因は多岐にわたり,胃食道逆流の関与が半数程度とされる。

●特に女性に生じやすい要因としては,唾液分泌量低下による口腔内乾燥がある。

●悪性疾患を含めた器質的疾患を見逃してはならない。

音声障害

著者: 許斐氏元 ,   渡邊雄介

ページ範囲:P.220 - P.225

POINT

●女性に多く発症する特徴的な音声疾患は,発声器官の解剖学的特徴や女性ホルモンの影響,加齢変化などに加え,社会的な生活背景が関与している。

●女性に多い器質性音声障害は声帯結節である。

●過緊張性発声障害などの機能性発声障害の多くが女性に好発し,適切に診断することが重要なポイントとなる。

甲状腺疾患

著者: 古川まどか

ページ範囲:P.226 - P.231

POINT

●ほとんどの甲状腺疾患は女性に多くみられ,その診断・治療は女性としてのライフステージを考慮して決定すべきである。

●びまん性甲状腺腫をきたす疾患は慢性甲状腺炎(橋本病)とバセドウ病が多く,混在する甲状腺がんの診断が難しくなるため注意が必要である。

●甲状腺疾患の画像診断の第一選択は超音波診断であり,放射線被曝の心配が不要であるため,若年・壮年期の女性でも安心して施行できる。

●甲状腺疾患の治療においては整容面,機能面も考慮すべきである。

不定愁訴

著者: 小林一女

ページ範囲:P.232 - P.236

POINT

●愁訴にとらわれ,器質的疾患を見逃さないこと。

●女性特有のライフサイクル,ライフステージを考えて診療にあたる。

《ライフステージからみた診療のポイント》

女児のめまい症状

著者: 五島史行

ページ範囲:P.238 - P.242

POINT

●女児にみられる主なめまいに,片頭痛関連めまい,良性発作性めまい(BPV),心因性めまい,起立性調節障害がある。

●BPVは発作の間欠時には器質的,機能的異常を認めないのが特徴である。

●心因性めまいは,女児では明確に心因が特定できないこともある。

●器質的疾患や一般的な機能的疾患を除外したのちに,めまい症状以外についても本人,家族から時間をかけて問診を行う。

妊娠中の投薬の注意点

著者: 酒見智子 ,   山中美智子

ページ範囲:P.244 - P.249

POINT

●薬剤の影響は妊娠の時期によって異なる。催奇形は妊娠初期(4〜15週)に起こることがほとんどである。ただし,後期に影響する薬剤もあり,全期間を通じて注意が必要である。

●先天異常は出生した児の3〜5%に認められ,このうち薬剤の影響によるものはごくごくわずかである。薬剤の影響があるかどうかは,このベースラインと比較し,増えるか,変わらないか,で評価される。

●薬の投与は,原則として添付文書の「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の記載内容に従う。

●妊娠中に偶発的に禁忌薬を投薬した場合は,安易に妊娠中断を勧めず,専門機関へ紹介する。

高齢女性の嗅覚障害

著者: 三輪高喜

ページ範囲:P.250 - P.255

POINT

●嗅覚は加齢とともに低下するが,嗅覚低下に気づいていないことが多い。

●女性は男性よりも嗅覚低下の開始が遅く,低下の程度も軽度である。

●嗅覚障害者は食品腐敗,ガス漏れ,煙に気づきにくく,味覚の低下により調理の際の味付けが難しくなる。

●エストロゲンの低下が嗅覚低下,嗅覚障害と関連する。

●日頃からにおいを意識して嗅ぐことにより,嗅覚低下が予防できるかもしれない。

書評

がん診療レジデントマニュアル(第7版)

著者: 西田俊朗

ページ範囲:P.256 - P.256

 私が専門医をめざし臨床で修練をしていた時代,コンパクトにその領域の知識や情報をまとめてくれた本がどれだけ欲しかったことか。今でもそういう要望をもつ研修医やレジデントは多い。これまでその課題解決を目標に多くの本が出版されてきたが,満足するものがほとんどなかったのが現実である。

 『がん診療レジデントマニュアル』の初版は1997年にさかのぼり,以来20年,国立がん研究センターの若手医師・レジデントが,実際に自分たちにとって役に立つ,欲しい・知りたい情報を徹底的に書き込んでつくってきた。幸いこれまで非常に高い評価を得ている。がん診療に関わる情報はこの間,指数関数的に増え,膨大なものとなった。このたび出版された第7版は,そのような状況にありながら,がん診療の基本—インフォームドコンセントや臨床試験,がん薬物療法の考え方から,各がんの診療に必須の医学知識や情報,診断・治療法,薬剤情報を網羅し,しかもコンパクトである。確かにこれほどよくまとまった本はない。

原著

Crowned dens syndromeの1例

著者: 坂口功一 ,   金子賢一 ,   田中藤信 ,   加瀬敬一 ,   奥竜太 ,   髙橋晴雄

ページ範囲:P.257 - P.260

はじめに

 Crowned dens syndrome(CDS)は,1985年にBouvetら1)により初めて報告された軸椎歯突起周囲に石灰成分が沈着することで急性頸部痛および頸椎運動制限を呈する症候群である。強い頸部痛のため他科を初診することが多く,耳鼻咽喉科からの報告はいまだ少なく,診断に苦慮されることも多い。

 今回われわれは頸部痛,発熱を主訴に当院を紹介されCDSと診断・加療した1症例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する。

鼻腔内異物が疑われた逆生歯牙の1例

著者: 佐藤恵里子 ,   佐伯忠彦 ,   大河内喜久

ページ範囲:P.261 - P.264

はじめに

 歯冠が正常に萌出する方向とは逆の鼻腔内や上顎洞内へ向かっている歯牙を,逆生歯牙という。本邦では金杉1)が1901年に初めて報告して以来,現在までに200例余りの報告がみられる2)が,日常診療で遭遇することは比較的稀である。今回われわれは,左鼻腔内に萌出し当初鼻腔内異物を疑った逆生歯牙の1例を経験したので報告する。

当医療センターで初回人工内耳手術を行った聴覚障害児138児の療育先およびその後の就学状況調査

著者: 南修司郎 ,   榎本千江子 ,   加藤秀敏 ,   山本修子 ,   細谷誠 ,   若林毅 ,   利國桂太郎 ,   松永達雄 ,   加我君孝

ページ範囲:P.265 - P.269

はじめに

 両側感音難聴児は出生1000人に1人の割合で生まれてくるとされており1),先天性の神経疾患の中では最も頻度が高いものの1つである。聴覚スクリーニングの体制や,その後の療育に関してはいまだ地域差がみられ,確定診断や療育への移行が早期に行われないケースも散見され,難聴児に与えられている環境は日本国内でも平等ではないと考えられる。東京圏(東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県)では,聴覚障害幼児療育機関として,児童発達支援センター(旧難聴幼児通園施設),ろう学校(国立・公立・私立),地域療育センター,医療機関,私塾と選択肢が多く,それぞれの施設の療育方針で聴覚の活用度は異なる。

 1994年に人工内耳の小児への手術が保険適応になってから現在に至るまで,手術件数が毎年増加してきている。人工内耳術後の療育は,高められた聴覚を十分に活用することが重要であるが,術前からも残存聴覚を主体に補聴器装用下の療育をするほうが術後の語音聴取成績がよい2)。つまり,術前の療育に引き続いて,術後にも聴覚コミュニケーションを重視し,音声言語の習得を目指した療育を行うことで,年齢相応の言語力を身につけ,重度難聴児でも通常小学校へ就学が可能となっている3,4)

 今回,選択肢の多い東京圏にある東京医療センターで人工内耳手術を受けた難聴児が,どのような療育施設を選択し,その後どのような学校進路状況となっているか調査を行ったので,その傾向を解析し報告する。

佐藤式彎曲型喉頭鏡が有用であった下咽頭梨状陥凹瘻の1例

著者: 坂本ひかり ,   岡本伊作 ,   塚原清彰 ,   縣愛弓

ページ範囲:P.271 - P.274

はじめに

 近年,光学内視鏡の発展とともに下咽頭喉頭の観察方法も工夫がされるようになってきた1)。佐藤式彎曲型喉頭鏡もその1つで,従来は観察困難であった下咽頭粘膜病変も観察良好となった。下咽頭梨状陥凹瘻は,第3または第4鰓囊から生じる先天性瘻孔で,深頸部膿瘍や急性化膿性甲状腺炎の原因となる2,3)。そのため,日常臨床では小児や若年者の反復する頸部膿瘍の原因疾患として遭遇する。根治治療は瘻管の完全摘出あるいは閉鎖であり,瘻管の同定が不可欠である。一方,従来の直達喉頭鏡や内視鏡による観察方法では瘻孔同定が困難で,結果的に再発する症例も散在した。

 佐藤式彎曲型咽喉頭鏡は下咽頭の良好な視野を確保できるが,これを瘻孔同定に使用した報告は本邦で1例しかない4)。今回われわれは,佐藤式彎曲型咽喉頭鏡を用いた観察により瘻孔の同定方法を追試し,瘻管の完全摘出が可能であった1例を経験したので報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.195 - P.195

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.275 - P.275

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.276 - P.276

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.280 - P.280

 2015年1月に厚労省は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を発表し,認知症の危険因子の1つとして「難聴」を明記しました。その直後に米国大統領科学技術諮問委員会から「米国でも,難聴が高齢者の健康に与える影響についても調べており,補聴器を利用することで認知症などの病気を改善できないかなど調査を行っています。この問題に対して日米で解決策を検討したいと思っています」という連絡をいただきました。一方で武見敬三参議院議員を中心に学会,厚労省,補聴器工業会を含めた「難聴と補聴器に関する勉強会」が立ち上がり,これらの動きから「難聴と認知症,うつ病に関する国際シンポジウム」を開催することになりました。超高齢社会を迎え,高齢者の難聴に対する介入,特に補聴器の活用で認知症やうつ病の進行が予防できるか? がテーマです。1月15日に日経ホールで開催された国際シンポジウムでは米国のLin先生,フランスのAmieva 先生,そして日本からは愛知医大の内田育恵先生がそれぞれの国の状況について講演され,急遽参加されたWHOのChadha 先生がWHOの取り組みを紹介されました。また,その後のパネルディスカッションには厚労省から椎葉茂樹審議官,日本補聴器工業会からは赤生秀一副理事長,日本聴覚医学会から原晃理事長,そして日本耳鼻咽喉科学会からは私が参加して,主に今後の補聴器販売のあり方について議論されました。3月3日は「耳の日」,世界的にも「World Hearing Day」です。今年の第70回WHO総会では難聴の予防に対する新たなアクションプランが決議される予定で,今年は難聴の問題を世界的に討議する年になりそうです。

 さて,今月号の特集は「女性と耳鼻咽喉科—診療のポイント」です。小池東京都知事に代表されるように女性の社会進出が望まれるなか,今回の国際シンポジウムでも主役の3人は女性でした。このように,これから社会的な活躍が期待される女性の健康維持は重要な課題です。今回の特集はまさに時代の要請を受けたテーマです。また,原著4編も力作揃いです。トランプ新米国大統領就任で全世界が混乱していますが,「耳の日」には是非,難聴の問題を考えながら本誌をお読みいただければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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