icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科89巻4号

2017年04月発行

雑誌目次

特集 内視鏡手術の上達ポイント

ページ範囲:P.285 - P.285

《耳領域》

内視鏡下鼓室形成術

著者: 西池季隆 ,   大島一男 ,   上塚学

ページ範囲:P.286 - P.292

POINT

●経外耳道内視鏡下耳科手術(transcanal endoscopic ear surgery:TEES)は,中耳アプローチに皮膚切開や骨削開は必要なく,低侵襲な手術である。

●TEESでは,顕微鏡では死角となるような部分も容易に観察することができる。

●片手操作であることから,慣れやトレーニングが必要である。

●内視鏡を汚さないように,また画面の曇りを取るために術中に配慮が必要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

内視鏡を用いたアブミ骨手術

著者: 枝松秀雄

ページ範囲:P.294 - P.300

POINT

●内視鏡耳科手術の最大の利点は,中耳内の複雑な構造を死角なく広い視野で観察し,安全な手術操作を行うことができる点である。

●アブミ骨手術の術式には,stapedectomy,stapedotomy,stapes mobilization,endoarm surgeryなどがある。

●内耳障害を起こさないために,硬化したアブミ骨を明視下に除去し,内耳開窓を慎重に行い,確実な伝音再建をめざした手術法を選択する。

●若手医師にとっては,内視鏡アブミ骨手術は正常な中耳解剖を理解し,中耳手術の基本的な手技を獲得できる利点がある優れた教育法である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

《鼻・副鼻腔領域》

内視鏡下副鼻腔手術(ESS)Ⅰ型からⅣ型までを学ぶ

著者: 近藤健二

ページ範囲:P.301 - P.309

POINT

●術前に内視鏡検査,CTで鼻副鼻腔の解剖のバリエーションを確認する。

●最初に中鼻甲介を確認する。

●マイクロデブリッダーは有用だが,骨の細かな切除は鉗子のほうがコントロールが効きやすい。

●一通り操作が終わったら最後にやり残した処置がないか再確認し,パッキングを術後の中鼻甲介の形をイメージしてていねいに挿入する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

内視鏡下副鼻腔手術(ESS)Ⅴ型の習得—副鼻腔炎に伴う眼窩手術,頭蓋底手術

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.310 - P.317

POINT

●副鼻腔内は顕著な細菌感染のため膿汁と浮腫腫脹が著明な粘膜で占拠されており,術野からの出血が多い。出血を上手にコントロールする必要がある。

●副鼻腔自然口は可及的に広く開放し,生理食塩水で十分に洗浄する。

●眼窩内にアプローチする際は,ナビゲーションシステムで病変の位置を確認するとよい。眼球を押すだけでもオリエンテーションの情報が得られる。

●眼窩内側壁を除去して眼窩内へアプローチする取っ掛かりとして最も安全な位置は,第3基板の付着部からやや手前で篩骨上顎板の高さである。

前頭洞単洞化手術

著者: 児玉悟

ページ範囲:P.318 - P.325

POINT

●内視鏡下前頭洞単洞化手術には,基本的なinside-outアプローチと,変法としてoutside-inアプローチがあり,それぞれの術式を理解する。

●直視鏡下によい視野と広いワーキングスペースを確保し,安全かつ効率的にドリリングを行う。

●解剖学的限界,ランドマークを確認し,前頭洞単洞化の完成形をイメージしながら操作を進める。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

《咽喉頭・唾液腺領域》

唾液腺内視鏡の応用

著者: 高原幹

ページ範囲:P.326 - P.332

POINT

●手術にあたり,①唾液腺内視鏡,②ハイビジョンCCDシステム,③バスケットカテーテルは最低限必要である。

●唾液腺内視鏡は壊れやすいので,愛護的に扱う。

●内視鏡操作自体に特に難しい手技はなく,むしろその前段階であるワルトン管への内視鏡ルートの確保が手術のポイントとなる。

●当科での成績では顎下腺唾石症の約1/3は内視鏡のみで摘出可能であった。

●腺内唾石においては内視鏡摘出,内視鏡補助下口内法摘出の利点は少ないと思われる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

経口的咽喉頭部分切除術

著者: 森本浩一 ,   丹生健一

ページ範囲:P.333 - P.339

POINT

●TOVSを行うにあたり必要なことは,①術野の確保,②視野の確保,③病変を扱う鉗子や切除・止血器具,といった手術環境および器具である。

●中咽頭がん側壁型の切除では内側翼突筋の確認,舌根部の切除を行い,術後は挿管のまま管理することで後出血のリスクを避けられる。

●下咽頭がん後壁型の切除では食道癌に対するESDと同様の手順となる。確実な腫瘍の進展範囲確認にも必須の手技である。

●TOVSは低侵襲な手技であるが,術後障害に留意して慎重に適応を検討する必要がある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

当科における中下咽頭がんに対する経口内視鏡治療

著者: 浅田行紀

ページ範囲:P.340 - P.346

POINT

●内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)を検討する際には,消化器内視鏡による中下咽頭の観察が重要である。

●内視鏡下手術において,安全かつ効率的に剝離を行うためには,カウンタートラクションが必須である。

●切除範囲が披裂軟骨襞や食道入口部の3/4周以上になると,嚥下障害を起こしやすく,注意が必要である。

●化学放射線治療後のELPSでは創傷治癒が悪いため,特に強い疼痛を訴える患者では,創部の注意深い観察が必要となる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

経口的ロボット支援手術

著者: 藤原和典

ページ範囲:P.347 - P.354

POINT

●本邦では,頭頸部領域におけるロボット手術は未承認であるが,適応の拡大に向け準備が進められている。

●da Vinciサージカルシステムでは,さまざまな鉗子を用いることができ,狭い手術腔や入りくんだ部位でも操作が可能である。

●術野画像は即時に3D構築されるため,リアルで詳細な画像を見ながら安全かつ微細な操作が行える。

●内視鏡手術に比べ把持感覚がないため,視覚で補う必要がある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月)。

原著

ビスホスホネートの副作用と考えられた外耳道骨壊死の1例

著者: 小出千秋 ,   穂苅豊

ページ範囲:P.355 - P.359

はじめに

 ビスホスホネート(bisphosphonate:BP)は悪性腫瘍の骨転移による高カルシウム血症などの抑制や,骨粗鬆症による高齢者の骨折の予防を目的とする薬剤として広く使用されている。その副作用として頭頸部領域では顎骨壊死が知られている。頭頸部領域における他の部位の骨壊死として,海外においては外耳道骨壊死の報告が散見されるが,本邦ではBPによる外耳道骨壊死の報告はまだみられない。

 今回,筆者らはBPによる外耳道骨壊死と考えられる症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

末梢前庭性めまいと鑑別を要した小脳腫瘍の1症例

著者: 松吉秀武 ,   山西貴大 ,   後藤英功 ,   三輪徹

ページ範囲:P.361 - P.365

はじめに

 中枢性めまいは,耳鼻咽喉科診療所1)と大学病院2)など施設により頻度のばらつきが大きいものの生命にかかわる可能性があり注意を要する疾患である(図1)。今回,当院にて末梢前庭性めまいを疑い,画像診断,神経学的所見により小脳病変を認めたWaldenströmマクログロブリン血症の1例を経験したので報告する。

前庭型片頭痛患者の前庭動眼反射機能についてvideo head impulse test(vHIT)を用いた検討

著者: 小板橋美香 ,   五島史行 ,   荒井美希 ,   新藤晋 ,   池園哲郎

ページ範囲:P.367 - P.372

はじめに

 めまいと片頭痛は従来から合併することが報告されており,めまいは片頭痛患者の30〜50%に認められ,逆にめまいを主訴とする患者の38%が片頭痛を訴えるとの報告もある1)。片頭痛を有するめまい症例のなかには,メニエール病(Meniere's disease:MD)や良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)などの既知の疾患によるめまい症例も少なくない。しかし,その一方で,めまいと頭痛の発作が共通の病因によって生じるものと考える疾患単位,片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)が提唱されている2)。今まで国際的に公認された診断基準がなかったが,近年改訂された国際頭痛分類第3版β版(ICHD-Ⅲ beta)3)の付録に,vestibular migraineとして収載された4)。欧米に比べ日本ではまだ認識が少ない疾患であるが,原因不明とされていためまい症例のなかには,本疾患が含まれている可能性があり,今後さらに周知されることが望まれる。

 前庭性片頭痛(vestibular migraine:VM)の病態や病巣はまだ不明瞭であり,また客観的所見を捉えにくいことから診断が困難である。欧米ではvideo head impulse test(vHIT)が普及しており,本疾患の前庭機能について温度刺激検査のみならずvHITを用いた検討5,6)があるが,本邦においては,VEMPや温度刺激検査を用い検討した報告7)はみられるがvHITを用いた検討はない。vHITは侵襲なく頭部回転終了前に出現するovert catch-up saccade(overt CUS)や頭部回転終了後に出現するcovert catch up saccade(covert CUS)が検出できるだけでなく,左右それぞれのVOR gainの平均値を算出することにより,半規管機能を客観的に定量化できる利点をもつ8)。今回,前庭性片頭痛患者の半規管機能についてvHITを用い検討したのでここに報告する。

--------------------

欧文目次

ページ範囲:P.283 - P.283

〔お知らせ〕第34回 耳の手術研修会

ページ範囲:P.360 - P.360

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.376 - P.376

 是非,動画をチェック! 4号の特集は「内視鏡手術の上達のポイント」です。耳鼻咽喉科領域の内視鏡手術を網羅したもので,年度初めにふさわしい内容となっています。特筆すべきことは手術の実際の動画にアプローチ可能なことで,本誌にとっても従来の耳鼻咽喉科月刊誌に比べても,執筆者の力のみなぎった,エポックメーキングな企画です。

 また,原著も2編掲載していますが,診療所の先生からの貴重な症例の報告で,日常の診療activityの高さを示しているものと思います。今後も多くの先生からの投稿を期待しています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?