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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科89巻5号

2017年04月発行

増刊号 臨床力UP! 耳鼻咽喉科検査マニュアル

Ⅰ 聴覚検査

5 閾値上聴力検査(補充現象検査)

著者: 和田哲郎1

所属機関: 1筑波大学医学医療系耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.28 - P.34

文献概要

●目的

・感音難聴の障害部位診断(補充現象の有無から内耳性難聴の確認)

・閾値上のレベルの音に対する聴取の評価(快適レベル,不快レベルの確認)

 難聴の正確な診断には,障害部位の特定が重要である。純音聴力検査では伝音難聴と感音難聴の鑑別は可能だが,感音難聴が内耳性か後迷路性か区別できない。感音難聴症例を診療する際,内耳局所の病態か,第Ⅷ脳神経症状と捉えるかによって鑑別診断も変わり,その後の画像検査や治療方針も変わってくる。この両者を鑑別するために有効とされているのが,耳音響放射と補充現象検査である。


●対象

・感音難聴を認め,障害部位が内耳性か後迷路性か鑑別したい症例

 検査法によって適応対象の範囲が異なる。

・バランステスト:一側性感音難聴であり,かつ,両側の聴力差が50dB以内の症例がよい適応となる。その理由は,対側が健聴耳であることを前提として左右のラウドネスを比較する検査であり,両耳の聴力差が50dBを超えると陰影聴取が起こるため患側と健側を比べることができないからである。

・SISI検査:両側難聴でもそれぞれの耳で検査できるため適応は広くなるが,測定する耳の閾値上20dBの音で検査するため,重度難聴耳には検査ができない。

・Békésy自記オージオメトリー:それぞれの耳について検査できるが,被検者が細かくスイッチのon-offを行わなければならないため,検査法を正しく理解できる被検者でないと結果の信頼性が低下する。

 一般的に行われる補充現象検査のうち,Metz test(p.55参照)以外はいずれも自覚的聴力検査であり,乳幼児や意識障害のある場合,あるいは検査の意義が理解できない被検者では検査が困難である。症例に応じて実施可能な検査を選択し,施行することとなる。

参考文献

1)Rhode WS:Basilar membrane motion:results of Mossbauer measurements. Scand Audiol Suppl 25:7-15, 1986
2)Schrott A, et al:Auditory brainstem response thresholds in a mouse mutant with selective outer hair cell loss. Eur arch Otorhinolaryngol 247:8-11, 1990
3)村井和夫:自記オージオメトリー.聴覚検査の実際,日本聴覚医学会(編).南山堂,東京,2009,pp57-62
4)君付隆,他:内耳機能検査(DPOAE検査,SISI検査,MCL・UCL検査)の陽性率と内耳生理機能について.耳鼻と臨床55:49-54,2009
5)和田哲郎:閾値上揚力検査(補充現象検査).耳鼻頭頸88:392-397,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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