tcDCS(経頭蓋小脳直流電気刺激)を用い前庭リハビリテーションの効果増強を試みた2症例
著者:
五島史行
,
荒井美希
,
利國桂太郎
,
若林毅
,
細谷誠
,
山本修子
,
南修司郎
,
松永達雄
,
角田晃一
,
美馬達哉
,
小金丸聡子
ページ範囲:P.471 - P.475
はじめに
めまいの原因はさまざまであるが,その1つに末梢前庭障害によるものがある。多くの場合には前庭代償によって症状は改善するが,代償不全となり症状が遷延する症例もある。そのような慢性期の治療として重要なのは,前庭代償を目的とした前庭リハビリテーションである。しかし,リハビリテーションによっても十分な効果が得られない症例は少なくない。これらの症例に対しては,より効果的なリハビリテーションが必要である。
リハビリテーションの効果を促進するための新しい方法として,頭蓋の外から大脳に対して直流電気刺激を与える経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)(図1)が注目されている。経頭蓋的に大脳に直流電気刺激を加えることでリハビリテーション効果が促通することが報告されており1),近年この方法を応用したtcDCS(transcranial cerebellar direct current stimulation,経頭蓋小脳直流電気刺激)が報告されている2,3)。前庭代償で重要な役割を果たす小脳に電気刺激を加えることで,難治性めまいのリハビリテーション治療に対する促通効果が期待できる可能性がある。今回,tcDCSを用い,難治性の代償不全となった片側前庭障害症例に対して前庭リハビリテーション治療を試みたので報告する。