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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻1号

2018年01月発行

文献概要

特集 こんなときどうする? 術中・術後のトラブル対応 《咽頭・喉頭・頭頸部領域》

乳糜漏が止まらない

著者: 小川武則1 大越明1 香取幸夫1

所属機関: 1東北大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科

ページ範囲:P.66 - P.69

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●こんなとき…

【症例1】53歳,男性,喉頭扁平上皮癌(声門上:T2N2cM0)

既往歴:特記すべきことなし

生活歴:喫煙60箱/年,ウイスキー2杯×20年

現病歴:6か月前に同時併用化学放射線治療を施行した。照射範囲は,前頸部+鎖骨上窩40Gy+両全頸部30Gyの70Gyであり,左静脈角付近は60Gy照射されていた。化学療法はTPF(ドセタキセル50mg/m2,シスプラチン60mg/m2,5FU 1000mg/body)1コースを施行した。

 一次治療効果は,局所完全奏効(CR),頸部リンパ節は部分奏効(PR)であった。造影CTでは,左上内深頸,中内深頸にリング状造影効果を呈する長径10〜20mmの遺残リンパ節を認めたため,根治的頸部郭清術を施行した。レベルⅡ〜Ⅴ郭清術を行い,内頸静脈,副神経は温存したが,胸鎖乳突筋は切除した。レベルⅡ,Ⅲに最低5個の腫大リンパ節を認め,最大径24mm,複数リンパ節の癒合所見も認めた。上中内深頸リンパ節に遺残を認めた(図1a)。手術時間3時間15分,出血19mLであった。術後,頸部腫脹がみられ,滲出液は黄白色で多め(術後3〜6病日40〜50mL/日)であったが,術後8病日には25mL/日へ減少したためドレーンを抜去し,術後13病日に退院した。退院後に頸部腫脹が再燃し,18,20病日に外来処置を行ったが軽快なく,頸部腫脹,穿刺にて50mLの黄白色の貯留液を認めた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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