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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻1号

2018年01月発行

文献概要

特集 こんなときどうする? 術中・術後のトラブル対応 《咽頭・喉頭・頭頸部領域》

気管カニューレ(気管切開孔)から大出血した

著者: 益田宗幸1 福島淳一2

所属機関: 1国立病院機構九州がんセンター頭頸科 2国立病院機構九州がんセンター形成外科

ページ範囲:P.72 - P.74

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●こんなとき…

【症例】61歳,男性。気管膜様部へ浸潤を認める頸部食道癌(cT4N2M0)に対してFP併用CRT 70.2Gyを行い,いったん完全奏功(CR)となった。しかし,治療終了後5か月で原発巣再発rT3N0M0をきたしサルベージ手術を行う方針となった。

 腫瘍下端は胸骨上縁を超えて下方へ進展しており,咽頭喉頭頸部食道摘出術(気管8リング切除),両側頸部郭清術,遊離空腸再建術と併せて縦隔気管孔造設術を行った。当科では CRT後のサルベージ縦隔気切孔の造設に際し,気管壁の血流を保つために残存気管を極力剝離せず,移動(腕頭動静脈間などに)させない,無理に引き出さないことを基本としている1,2)。また,大胸筋弁への筋体を気管と大血管の間に充塡し,胸骨鎖骨の切断面を完全に被覆する形で手術を行うことにしている。本症例もこの方針で縦隔気管孔の造設を行った(図1a〜c)が,術後10日目,気管断端の6時から10時方向で気管壊死を認め,創部が離開し腕頭動脈の露出を認めた。再手術を行い,大胸筋皮弁を外し,壊死した気管を,血流が十分に確認できるまで1リング程度除去した。大胸筋皮弁の血流は良好であったため,再度筋体を気管と腕頭動脈間に充塡する形で閉創した。その後,気管や大胸筋皮弁の壊死所見なく,感染兆候も出現せず良好に経過していたが,再手術後15日目の気管孔処置時に突如縦隔気管孔から大出血をきたした。

参考文献

1)大森裕文・他:気管腕頭動脈瘻を来したサルベージグリロー手術症例に対する血管内ステントグラフト留置.頭頸部外26:271-276,2016
2)麻生丈一朗・他:甲状腺扁平上皮癌症例の臨床的検討.頭頸部癌43:68-75,2017
3)仲野敦子:小児の気管切開とカニューレ管理 長期経過観察例から考える.小児耳鼻37:281-285,2016
4)阿部尚央・他:救命できた気管腕頭動脈瘻例.耳鼻臨床109:577-581,2016
5)Grant CA, et al:Tracheo-innominate artery fistula after percutaneous tracheostomy:three case reports and a clinical review. Br J Anaesth 96:127-31, 2006
6)Kapural L, et al:Tracheo-innominate artery fistula after tracheostomy. Anesth Analg 88:777-80, 1999
7)Komatsu T, et al:Tracheo-innominate artery fistula:two case reports and a clinical review. Ann Thorac Cardiovasc Surg 19:60-2, 2013
8)Ridley RW, et al:Tracheoinnominate fistula:surgical management of an iatrogenic disaster. J Laryngol Otol 120:676-80, 2006
9)Wang PK, et al:Endovascular repair of tracheo-innominate artery fistula. Acta Anaesthesiol Taiwan 47:36-9, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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