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特集 見逃してはならない耳鼻咽喉科疾患—こんな症例には要注意! 《口腔・咽喉頭・頭頸部領域》
耳下腺癌だと思っていたら壊死性ワルチン腫瘍だった!
著者: 森田成彦1 大月直樹1
所属機関: 1神戸大学大学院医学研究科外科系講座耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野
ページ範囲:P.1038 - P.1040
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患者は73歳,男性。
約1か月前に左耳下部腫瘤を自覚した。自発痛,圧痛が出現し,増大してきたため受診した。既往歴・家族歴に特記すべき事項はなかった。嗜好歴は,喫煙歴20〜30本/日×45年(3年前禁煙),日本酒1合/日であった。理学所見では,左顔面神経麻痺を認めた(図1)。穿刺吸引細胞診は良性で,細菌培養検査も陰性であった。造影CTでは,左耳下腺内に境界明瞭で内部壊死を考える低吸収域(LDA;図2),および散在性にリンパ節腫大を認めた。
悪性が否定できず左耳下腺切除術を施行した。レベルⅡAリンパ節をサンプリングし,術中迅速病理診断に提出したところ,炎症所見のみで悪性所見はなかった。耳下腺実質内に小結節状の硬結を触れるが被膜は存在せず,実質自体が硬くなっていた。耳下腺下顎縁枝は肉芽組織内に一部走行しており,可及的に剝離を行った。摘出標本は,膿汁や壊死物質を内部に認めた(図3)。病理組織では,上皮細胞で2層性の好酸球増生があり,表皮には炎症細胞浸潤を認めた(図4)。壊死性ワルチン腫瘍の診断を得た。術後の創部や全身状態は良好であったが,下顎縁枝の麻痺は残存している。
〔実症例を一部改変〕
患者は73歳,男性。
約1か月前に左耳下部腫瘤を自覚した。自発痛,圧痛が出現し,増大してきたため受診した。既往歴・家族歴に特記すべき事項はなかった。嗜好歴は,喫煙歴20〜30本/日×45年(3年前禁煙),日本酒1合/日であった。理学所見では,左顔面神経麻痺を認めた(図1)。穿刺吸引細胞診は良性で,細菌培養検査も陰性であった。造影CTでは,左耳下腺内に境界明瞭で内部壊死を考える低吸収域(LDA;図2),および散在性にリンパ節腫大を認めた。
悪性が否定できず左耳下腺切除術を施行した。レベルⅡAリンパ節をサンプリングし,術中迅速病理診断に提出したところ,炎症所見のみで悪性所見はなかった。耳下腺実質内に小結節状の硬結を触れるが被膜は存在せず,実質自体が硬くなっていた。耳下腺下顎縁枝は肉芽組織内に一部走行しており,可及的に剝離を行った。摘出標本は,膿汁や壊死物質を内部に認めた(図3)。病理組織では,上皮細胞で2層性の好酸球増生があり,表皮には炎症細胞浸潤を認めた(図4)。壊死性ワルチン腫瘍の診断を得た。術後の創部や全身状態は良好であったが,下顎縁枝の麻痺は残存している。
〔実症例を一部改変〕
参考文献
1)Califano J:Benign salivary gland neoplasms. Otolaryngol Clin North Am 32:861-873, 1999
2)四宮弘隆・他:超高齢者の皮膚自壊を伴う耳下腺ワルチン腫瘍の露出例.頭頸部外科21:287-290,2012
3)中下陽介・他:大唾液腺腫瘍の臨床統計的観察.耳鼻臨床 補117:46-53,2006
4)Eveson JW, et al:Infarcted(‘infected’)adenolymphomas. A clinicopathological study of 20 cases. Clin Otolaryngol Allied Sci 14:205-210, 1989
5)広川満良・他:壊死性ワルチン腫瘍の塗抹細胞像.日臨細胞会誌36:124-127,1997
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