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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻12号

2018年11月発行

特集 見逃してはならない耳鼻咽喉科疾患—こんな症例には要注意!

《口腔・咽喉頭・頭頸部領域》

突発性反回神経麻痺だと思ったら解離性大動脈瘤だった!

著者: 真栄田裕行1

所属機関: 1琉球大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座

ページ範囲:P.1046 - P.1049

文献概要

Case

患者:73歳,男性

主訴:嗄声

現病歴:当科受診日の2か月前に突然嗄声が出現した。近医内科を受診したが咽頭炎との診断で,抗炎症薬のみで経過観察されていた。数週間経過しても改善しないため近医耳鼻咽喉科を受診した結果,左の声帯麻痺を指摘され,精査目的に当科へ紹介となった。

既往:高血圧,糖尿病

家族歴:特記事項なし

生活歴:〔喫煙〕20本/日×50年,〔飲酒〕ビール700mL/日×30年+泡盛2合/日×25年

初診時現症:嗄声は気息性嗄声であり,GRBAS分類でG3 R0 B3 A0 S0であった。その他,鼻・口腔および頸部に異常所見はみられず,また自覚症状も嗄声以外の訴えはなかった。

喉頭内視鏡所見:左声帯は開大位で固定しており,声帯遊離縁の弓状変化が認められた(図1a)。声帯粘膜に炎症や腫瘤性病変はみられなかった。

画像所見:頸部超音波検査では甲状腺に腫瘤性病変などはみられず,また頸部リンパ節の腫大もなかった。胸部単純X線写真において,心陰影の左第1弓の拡大が認められた(図1b)。この時点で肺あるいは縦隔の悪性腫瘍を疑い,胸部造影CTが施行された。ところがCT画像上,大動脈弓部の血管壁の膨隆および,周囲への血栓形成が確認された(図2)。

診断:弓部解離性大動脈瘤

治療:準緊急的弓部人工血管置換術

経過:全身状態は術前の状態に復したが,声帯麻痺の回復はみられていない。ただし嗄声は若干の改善がみられた。今後,音声改善手術が予定されている。

参考文献

1)真栄田裕行・他:初診時左反回神経麻痺を呈した弓部解離性大動脈瘤の2症例.耳喉頭頸71:59-62,1999
2)山田裕子・他:早急な対応により救命し得た胸部大動脈瘤に起因した反回神経麻痺の2症例.耳展55:279-284,2012
3)任書 熹・他:反回神経麻痺症例の統計的検討.耳鼻臨床84:217-223,1991
4)Yumoto E, et al:Causes of recurrent laryngeal nerve paralysis. Auris Nasus Larynx 29:41-45, 2002
5)Plastiras SC, et al:Ortner's syndrome:a multifactorial cardiovocal syndrome. Clin Cardiol 33:E99-100, 2010
6)上出洋介・他:左反回神経麻痺を呈した胸部大動脈瘤の4症例 画像診断をめぐって.耳展30:316-322,1987
7)Lew WK, et al:Endovascular management of hoarseness due to thoracic aneurysm:case report and review of the literature. Vasc Endovascular Surg 43:195-198, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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