文献詳細
特集 見逃してはならない耳鼻咽喉科疾患—こんな症例には要注意!
《口腔・咽喉頭・頭頸部領域》
文献概要
Case
患者:6歳,女児
主訴:右頸部腫瘤,頸部痛,発熱,咽頭痛
4日前に38℃台の発熱,頸部・耳の痛みが出現した。翌日に咽頭痛も出現し,近医を受診し,セフジトレン ピボキシルの内服を開始するも改善せず,夜間診療所でA群溶連菌検査,アデノウイルス迅速検査を行ったがともに結果は陰性であった。経口摂取不能となり,当院へ紹介され,入院となった。
圧痛著明な右頸部リンパ節腫脹,右鼓膜発赤,右耳下部発赤を認め,頭部は斜頸位で固定し,開口障害,軽度の流延を認めた。
WBC 21800/μL(seg 88%),CRP 27.1mg/dL。造影CTで,咽後間隙右側に長径約1.6cmの辺縁が淡く造影される腫瘤陰影と,咽後間隙に一部辺縁が造影される低吸収域を認めた(図1)。頸部リンパ節炎,咽後膿瘍を疑い,セフォタキシム(CTX)の点滴を開始した。翌朝解熱したが,夕方には再度発熱した。さらに眼球結膜の充血が認められ,入院3日目に足指の硬性浮腫が出現し,川崎病の主要症状が5/6となった。川崎病の診断で,免疫グロブリン静注療法(IVIG)2g/kg単回投与とアスピリン(ASA)30mg/kg/日を開始し,CTXは中止した。その後,解熱して症状は改善し,斜頸に対し環軸椎回旋固定の診断となり,保存的治療を行い32日目に退院となった。経過中,心臓超音波検査,心電図に異常はなかった。
患者:6歳,女児
主訴:右頸部腫瘤,頸部痛,発熱,咽頭痛
4日前に38℃台の発熱,頸部・耳の痛みが出現した。翌日に咽頭痛も出現し,近医を受診し,セフジトレン ピボキシルの内服を開始するも改善せず,夜間診療所でA群溶連菌検査,アデノウイルス迅速検査を行ったがともに結果は陰性であった。経口摂取不能となり,当院へ紹介され,入院となった。
圧痛著明な右頸部リンパ節腫脹,右鼓膜発赤,右耳下部発赤を認め,頭部は斜頸位で固定し,開口障害,軽度の流延を認めた。
WBC 21800/μL(seg 88%),CRP 27.1mg/dL。造影CTで,咽後間隙右側に長径約1.6cmの辺縁が淡く造影される腫瘤陰影と,咽後間隙に一部辺縁が造影される低吸収域を認めた(図1)。頸部リンパ節炎,咽後膿瘍を疑い,セフォタキシム(CTX)の点滴を開始した。翌朝解熱したが,夕方には再度発熱した。さらに眼球結膜の充血が認められ,入院3日目に足指の硬性浮腫が出現し,川崎病の主要症状が5/6となった。川崎病の診断で,免疫グロブリン静注療法(IVIG)2g/kg単回投与とアスピリン(ASA)30mg/kg/日を開始し,CTXは中止した。その後,解熱して症状は改善し,斜頸に対し環軸椎回旋固定の診断となり,保存的治療を行い32日目に退院となった。経過中,心臓超音波検査,心電図に異常はなかった。
参考文献
1)切替一郎:咽後膿瘍.新耳鼻咽喉科学 改定11版.野村恭也(監),加我君孝(編).南山堂,東京,2013,p445
2)特定非営利活動法人 日本川崎病研究センター 川崎病全国調査担当グループ:第24回川崎病全国調査成績,2017
3)川崎病(MCLS,小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き(厚生労働省川崎病研究班作成改訂5版),2002
4)小池大輔・他:5歳以上で発症した川崎病の臨床像の検討.小児臨64:949-953,2011
5)米田真紀子・他:急性咽後膿瘍と類似の画像所見を呈した不全型川崎病の1例.小児臨64:1871-1875,2011
6)佐地 勉,他;日本小児循環器学会学術委員会:川崎病急性期治療のガイドライン(平成24年改定版).日小循誌28:s1-29,2012
7)野村裕一:頸部リンパ節腫脹で発症する例を鑑別する.小児診療78:315-318,2015
8)友森あや・他:咽後膿瘍との鑑別を要した川崎病の5例.小児臨67:2159-2164,2014
9)鮎沢 衛:川崎病.日大医誌75:188-193,2016
10)吉村 健:小児科疾患における口腔粘膜病変—川崎病と鑑別疾患.MB ENT 178:1-9,2015
11)飯ヶ谷七重・他:咽後膿瘍を疑われた川崎病の2例.小児耳28:223-229,2007
掲載誌情報