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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻13号

2018年12月発行

原著

椎骨脳底動脈循環不全の診断の一助となる問診チェックリスト作成の試み

著者: 松吉秀武1

所属機関: 1松橋耳鼻咽喉科・内科クリニック

ページ範囲:P.1157 - P.1163

文献概要

はじめに

 椎骨脳底動脈循環不全(vertebrobasilar insufficiency:VBI)は,椎骨動脈系の一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)とほぼ同様の病態である。めまいを主症状とし,めまい以外の神経症状を伴うことがある。椎骨脳底動脈系の動脈硬化などによる狭窄・閉塞,血圧変動による血行力学的な異常,頸部の回旋による環椎・軸椎レベルでの椎骨動脈の圧迫,椎骨動脈起始部の奇形などによる椎骨脳底動脈系血流量の一過性減少,が原因と想定される病態1)を総称していると考えられている。治療薬は前庭機能改善薬としてのビタミンB12,アデノシン三リン酸(ATP),脳神経保護薬としてのエダラボン,脳循環代謝改善薬としてのイブジラスト(抗血小板作用も有する),ニセルゴリン,抗血小板薬としてのアスピリン,塩酸ジラゼプ,自律神経調整薬としてのトフィソパムなどが報告されている。耳鼻咽喉科診療所においては,MRI,MR血管造影(MRA),頸部血管超音波検査などの画像診断を即時に行いにくいため,初診時での確定診断が困難であり,治療方針も確立されていないのが現状である。

 こうした背景から,日本めまい平衡医学会にて作成された「めまいの診断基準化のための資料」2)の「病歴からの診断」に基づき,問診によりVBIの診断を行うチェックリストの作成を試みた。この問診チェックリストからVBIの重症度を数値化(VBIスコア)し,このVBI診断としての妥当性を検討した。

 病歴から診断したVBI群と,頭位変換によりめまいが誘発されやすいという症状においてVBIと類似している良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)症例に仮のVBIスコアを付けて非VBI群(BPPV確実例)とし,比較した。さらに内服療法を「ATP+イブジラスト」によって行い,治療経過中のVBIスコアとめまいによる日常障害度アンケート(Dizziness Handicap Inventory:DHI)のスコア3)を比較検討した。

参考文献

1)Williams D, et al:The diagnosis of the major and minor syndromes of basilar insufficiency. Brain 85:741-774, 1962
2)小松崎篤・他:めまいの診断基準化のための資料.Equiliblium Res 47:245-273,1988
3)増田圭奈子・他:めまい問診票(和訳Dizziness Handicap Inventory)の有用性の検討.Equiliburium Res 63:555-563,2004
4)渡辺行雄・他;日本めまい平衡医学会診断基準化委員会:良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン(医師用).Equilibrium Res 68:218-225,2009
5)伊藤文英:椎骨脳底動脈系の循環不全によると考えられた頭位性めまい症例.新しいめまいの診断と治療 改訂第2版.診断と治療社,東京,2017,pp46-52
6)Kerber KA, et al:Stroke among patients with dizziness, vertigo, and imbalance in the emergency department:a population-based study. Stroke 37:2484-2487, 2006
7)Forrester T, et al:Effect of adenosine triphosphate and some derivatives on cerebral blood flow and metabolism. J Physiol 296:343-355, 1979
8)秋吉正豊・他:ATPの内耳末梢血管系に及ぼす形態学的研究.Audiology Japan 21:660-667,1978
9)中村政記・他:回転後眼振および前庭機能障害に対するATPの効果.日薬理誌75:487,1979
10)Ohashi M, et al:Antityhrombotic effect of KC-404, novel cerebral vasodilator. Gen Pharmacol 17:385-389, 1986
11)Ohashi M, et al:Mode of KC-404 in isolated canine basilar artery. Arch Int Phrmacodyn Ther 280:216-229, 1986
の使用経験.耳鼻臨床86:885-894,1993

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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