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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻2号

2018年02月発行

雑誌目次

特集① 耳鳴診療のNew Trend

ページ範囲:P.111 - P.111

耳鳴の発生機序

著者: 岡本秀彦

ページ範囲:P.112 - P.115

POINT

●従来,主観的耳鳴(以下,耳鳴)の発生源は耳または末梢聴覚受容器である蝸牛と考えられていた(末梢由来説)が,近年,蝸牛より中枢側にその責任病巣があるのではないか(中枢由来説)との説が広く支持されている。

●耳鳴の知覚には聴覚野の可塑性変化のほか,意識や記憶,恐怖などを司る多様な脳内ネットワークの変化が関与しているとも示唆されている。

●耳鳴に遺伝子の関与が示唆されているが,現段階では耳鳴関連遺伝子の研究は始まったばかりである。

●耳鳴の発生機序に関しては現在でもまだ不明な点が多く,さまざまな議論が現在進行形でなされている。

耳鳴と聴覚過敏

著者: 坂田俊文

ページ範囲:P.116 - P.121

POINT

●耳鳴と聴覚過敏はその発現機構が類似すると考えられており,治療も一部の例外を除いて共通する。

●耳鳴と聴覚過敏の多くは,音声入力の減衰による音量認知機能の変調が原因である。したがって,豊富な音環境や積極的な音声提示によって音量認知機能の修復を行う。

●耳鳴と聴覚過敏は生来健常者でも感じうるものであり,正常な脳機能の延長上にある現象とも解釈できる。したがって完全消失は不自然な治療目標であり,共生可能なレベルまでの緩和がエンドポイントである。

●多様な精神症状を伴うことがあるので,精神医学に準じた診療手法も望まれる。精神疾患が明らかであれば精神医学の支援を求める。

●発達障害や精神疾患を背景とする場合は,治療介入を控え,症状に起因する社会的困難への助言に終始することがある。

耳鳴の診断と評価法

著者: 若林聡子 ,   大石直樹

ページ範囲:P.122 - P.129

POINT

●本邦では,耳鳴の評価法として標準耳鳴検査法1993が使用されてきたが,国際標準化の流れを受け,改定が検討されている。

●2006年に開催された耳鳴研究の国際会議であるTinnitus Research Initiative(TRI)で,耳鳴評価の国際的なコンセンサスが示され,提唱された耳鳴実態調査票(tinnitus sample case history questionnaires:TSCHQ)が国際的に広く用いられるようになっている。

●国際的には,質問紙による耳鳴の生活支障度,苦痛度の評価は必須であり,THI(tinnitus handicap inventory)をはじめ,さまざまな質問紙が用いられている。

●現時点では,耳鳴の評価は主観的評価に限られているが,今後客観的評価の臨床応用が期待される。

耳鳴に対する薬物療法

著者: 高梨芳崇

ページ範囲:P.130 - P.134

POINT

●アメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から発行されたガイドラインによると,薬物療法単独ではRecommendation againstとされている。

●筆者は慢性耳鳴患者に対して,カウンセリング,音響療法と並行して薬物療法を補助として用いれば治療の効果を上げることができると考えている。

●耳鳴と不安,うつ傾向は密接にかかわっており,治療前にスクリーニングを行い,うつ傾向があれば抗うつ薬投与も検討していくとよい。

●メニエール病や低音部障害型難聴に伴う耳鳴では,慢性耳鳴への対応に加え,原疾患への薬物療法を組み合わせると治療の効果が上がることがある。

耳鳴に対する音響療法

著者: 神田幸彦 ,   古賀文菜 ,   古賀涼 ,   林田幸子

ページ範囲:P.135 - P.140

POINT

●耳鳴音響療法には耳鳴再訓練療法(tinnitus retraining therapy:TRT)と補聴器を用いた耳鳴への音響療法がある。

●耳鳴音響療法は機器の進歩とともに経時的に効果が上がってきている。

●TRT,補聴器による音響療法のほか,人工内耳や補聴器と人工内耳を組み合わせたEASのそれぞれで有効性がみられ,機器や医療の進歩も最近著しい。

●医療の進歩とともに耳鳴音響療法の適応が拡大するであろう。

人工内耳による耳鳴制御の効果

著者: 神崎晶

ページ範囲:P.142 - P.144

POINT

●片側の耳鳴難聴患者の耳鳴に対しては人工内耳の効果が示されている一方,耳鳴を伴う両側難聴患者では,耳鳴の誘発,悪化の可能性が示されている。

●本邦では人工内耳の保険適応は両側難聴例に限定されており,今後は,軽度難聴者に伴う耳鳴患者への岬角電気刺激も検討されていくであろう。

●人工内耳患者は心理学的問題を抱えていることも多いが,人工内耳植込みによってそれらが改善し,間接的に耳鳴の改善効果も期待できるかもしれない。

特集② 知っておきたい眼科疾患の知識

ページ範囲:P.145 - P.145

アレルギー性結膜炎

著者: 高村悦子

ページ範囲:P.146 - P.150

Point

●アレルギー性結膜炎の主症状は目のかゆみであり,眼局所のアレルギーの診断として,涙液IgE検査が有用である。

●治療の第一選択は抗アレルギー点眼薬で,症状が治まらないときにステロイド点眼薬を併用する。

●ステロイド点眼薬には眼圧上昇という副作用があり,使用中には眼圧チェックが必要である。

●花粉症のセルフケアには,外出時の眼鏡装用,人工涙液による洗眼を勧めている。

眼外傷

著者: 上田幸典

ページ範囲:P.152 - P.157

Point

●眼周囲の外傷は治療に際し,積極的に眼科と連携して視機能の評価を行うべきである。

●耳鼻咽喉科と眼科の境界領域における外傷には,眼窩骨折や視神経管骨折,涙道外傷などが挙げられる。また,近年,重篤な眼窩内合併症をきたす症例が増加している鼻内内視鏡手術における眼窩損傷を取り上げる。

●眼窩に及ぶ外傷は,時間が経過して眼窩内の軟部組織が癒着・瘢痕化するとスムーズな眼球運動は困難となり,患者の生活の質を著しく低下させる。そのため,可能な限り早期に治療を開始すべきである。

涙道閉塞

著者: 後藤聡

ページ範囲:P.158 - P.163

Point

●涙道閉塞は導涙性流涙(閉塞性流涙)の代表であるが,なかでも鼻涙管閉塞が多いといわれている。

●涙道閉塞の治療は,涙管チューブ挿入術(intubation:INT)と涙囊鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)に大別され,現在,その選択法については明確な基準はないが,閉塞部位は手術方法の選択の重要な要素である。

●手術法の治療選択にあたっては,問診,視診,触診,眼科的検査などを行うが,問診によって多くの情報を得ることができる。

神経眼科

著者: 中馬秀樹

ページ範囲:P.164 - P.168

Point

●視機能の評価は対光反射,視力と視野で行う。

●ゴールドマン視野は広さで,ハンフリー視野は感度で評価する。

●真菌性浸潤性視神経症は重篤な経過をたどるため,積極的な加療が必要である。

●外転神経麻痺をはじめとする脳神経麻痺は原疾患の治療後,プリズムや手術で加療する。

眼窩腫瘍

著者: 金子博行 ,   溝田淳

ページ範囲:P.169 - P.173

Point

●眼球の偏位の方向によって,原因となる腫瘤の存在部位が予測できる。

●眼窩腫瘍では画像診断が必須であり,CT・MRTの両方を行うことが望ましい。転移が疑われる場合には,PETも行う。

●副鼻腔囊腫の多くは眼球運動障害は軽度であり,視神経障害が認められれば画像検査を行い,副鼻腔疾患に続発するものでないことを確認する。

●鼻副鼻腔悪性腫瘍の治療の基本は観血的腫瘍全摘出術であるが,形成外科的再建を要することが多く,関連診療科と十分協議したうえで患者1人ひとりにあった治療を行う。

眼科領域の自己免疫疾患

著者: 河越龍方 ,   水木信久

ページ範囲:P.174 - P.178

Point

●Vogt-小柳-原田病はめまい,耳鳴,難聴をきたしうる。

●サルコイドーシスは全身のさまざまな臓器に炎症を引き起こす可能性があり,鼻腔・副鼻腔・咽頭喉頭・内耳などにも症状をきたしうる。

●ベーチェット病は口腔内アフタをきたすことが多い。

●シェーグレン症候群はドライアイ,ドライマウスをきたし,その他の膠原病とも合併しやすい。

甲状腺眼症

著者: 石川恵里 ,   高橋靖弘 ,   西村邦宏 ,   柿﨑裕彦

ページ範囲:P.180 - P.187

Point

●甲状腺眼症は,甲状腺自己抗体に関連した自己免疫性炎症性疾患で,眼窩部が標的となる病態である。

●甲状腺眼症は,視機能および整容の両面から患者の生活の質を著しく低下させる。

●甲状腺機能が重度に乱れた場合には,甲状腺眼症が悪化することがある。放射性ヨード治療はその誘因の1つであるが,一方,甲状腺摘出後に甲状腺眼症が悪化することはほとんどない。

●鼻内視鏡およびナビゲーションシステムの発達に伴い,経鼻アプローチによる内側眼窩減圧術が,従来に比べてかなり普及してきた。

原著

腫瘍性低リン血症性骨軟化症を伴ったsinonasal glomangiopericytomaの1例

著者: 寺西裕一 ,   大石賢弥 ,   横田知衣子 ,   後藤孝和 ,   山本祐輝 ,   井口広義

ページ範囲:P.189 - P.195

はじめに

 腫瘍性低リン血症性骨軟化症は,腫瘍産生因子(fibroblast growth factor-23:FGF-23)により腎においてリンの再吸収障害ならびにビタミンD活性化障害が起こることで惹起される腫瘍随伴症候群の1つである。原因腫瘍は中胚葉由来で良性がほとんどであるが,増殖速度が遅く局在診断が困難なことも多い。

 Hemangiopericytomaは血管外皮細胞からなる稀な間葉系腫瘍であり,頭頸部領域では鼻副鼻腔が好発部位とされている。鼻副鼻腔のhemangiopericytoma(sinonasal-type haemangiopericytoma)は2017年のWHO分類ではsinonasal glomangiopericytomaとして分類されている1)

 今回,われわれはsinonasal glomangiopericytomaが原因と考えられた腫瘍性低リン血症性骨軟化症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.109 - P.109

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.196 - P.196

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.200 - P.200

 晩冬の候,皆様いかがお過ごしでしょうか? この時期,日はまだ短くて寒いし風邪は流行るし雪も降るし,決して快適な季節ではありません。自分は学生時代にスキー部に所属していたので,冬季はかなりの日数をスキー場で雪に囲まれて過ごしていました。長い合宿生活&練習を経ていざ大会へ。成績はまったくふるいませんでしたが,それでも今となっては,汗も涙も鼻水も転倒したときの痛みも,すべていい思い出です。そんな意味で,今でも夏よりも冬のほうが好きです。あと,この時期は受験シーズンでもあります。受験生をお持ちのご家庭では,試験日の天候が本当に気になります。どうか,天候が荒れることなく無事に春を迎えることができますよう,お祈りしております。

 今月号の特集は「耳鳴診療のNew Trend」と「知っておきたい眼科疾患の知識」の2本立てです。耳鳴に関しては,病態から診断・検査,さらには保存療法・手術療法まで最新の知見を広くカバーした内容で,明日からの診療に役立つこと間違いなしです。また,境界領域である眼科疾患に関しては,われわれが普段診療している耳鼻咽喉科疾患とかかわることが多い疾患をピックアップして,眼科エキスパートの先生方にご執筆いただきました。他科領域疾患の診断や治療を学ぶ機会は意外と少ないと思います。お忙しい中ご寄稿下さった先生方に厚く御礼申し上げます。自分もこの機会にしっかり拝読し,勉強させていただきます。その他,比較的珍しい疾患の症例報告を加え,盛りだくさんの内容です。ご愛読いただければ幸いです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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