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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻4号

2018年04月発行

雑誌目次

特集 基本診察・処置・手術のABC

ページ範囲:P.301 - P.301

《耳領域》

外耳道と鼓膜の観察法

著者: 窪田俊憲 ,   欠畑誠治

ページ範囲:P.302 - P.304

Point

●外耳道の形態は加齢に伴い変化し,個人差も大きい。

●外耳道の彎曲などで顕微鏡下の鼓膜観察が困難な症例でも,内視鏡を用いることで観察が可能になる。

鼓室処置と耳管通気

著者: 増田正次

ページ範囲:P.306 - P.309

Point

●鼓室処置の際に合併症を生じる可能性のある危険部位を覚える。

●結核,悪性腫瘍,ANCA関連性中耳炎,好酸球性中耳炎を漫然とした鼓室処置で見過ごさない。

●上級医の指導のもと,大きな肉芽はなるべく鉗除し縮小させる。

●中耳・内耳に障害を起こす薬剤は鼓室処置の際に使用しない。

●耳管通気を行う前に,通気をしても危険な耳ではないか問診と耳内観察を行う。

●耳管通気の前に,毎回必ず耳管カテーテルから実際に空気を噴出させて空気圧とカテーテル内異物の有無を確認する。

●耳管通気は致死的合併症を生じる手技であることを認識する。

鼓膜麻酔法

著者: 林達哉

ページ範囲:P.310 - P.312

Point

●鼓膜麻酔法には,ツェンテール液を用いた方法と,イオントフォレーゼ(イオン浸透式)とがあり,それぞれの特徴を十分理解したうえで選択する。

●局所麻酔の基本的な原理の理解が,鼓膜麻酔の是非を検討するうえで役立つ。

●適切な治療の選択・実行のためにも,鼓膜麻酔の手間を惜しむべきではない。

鼓膜切開と鼓膜換気チューブ留置法

著者: 丸山裕美子

ページ範囲:P.313 - P.315

Point

●外耳道の彎曲や鼓膜の斜位を意識しながら,的確に鼓膜を診る。

●手術のメリット,デメリット,リスクなどについて十分に説明し,同意を得る。

●体位から局所まで,最善の術野が得られるよう心掛ける。

●鼓膜の強度や厚み,鼓膜換気チューブの硬さやしなり具合を体得する。

鼓膜穿孔閉鎖術と鼓膜形成術

著者: 湯浅有

ページ範囲:P.316 - P.320

Point

●本法を施行する際には顕微鏡下における耳鏡内操作に習熟する必要がある。このため,まず耳垢除去や外耳道異物除去,鼓膜切開,鼓膜換気チューブ挿入など,外耳道無麻酔下での処置を無疼痛で遅滞なくできるようにすることが肝要である。

●中心性の鼓膜穿孔を有する真珠腫中耳炎に注意する。

●不十分な穿孔辺縁切除,小さすぎる移植弁は術後再穿孔の一因となる。

●耳鏡内は術野,操作野とも狭い。このため中・大穿孔例,外耳道彎曲・狭窄例においては,鼓膜形成に際し大きな1枚の移植弁よりも小さな複数枚の移植弁を使用したほうが,処置部位を明視下に置きやすく操作もしやすい。

●本法の適応の1つに,術前パッチテストによる十分な利得が挙げられる。生理食塩水などで湿潤させたシート状の綿花を材料にすると,パッチ時の疼痛の訴えは少ない。また,パッチテストを問題なく行うことが可能であれば,本法を局所麻酔下で行える判断材料の1つになる。

《鼻領域》

鼻副鼻腔の観察法

著者: 春名眞一

ページ範囲:P.322 - P.325

Point

●前・後鼻内視鏡を使用することで,鼻副鼻腔の詳細な観察ができる。

●小児の狭小な鼻副鼻腔も,成人同様な所見を把握できる。

●詳細な内視鏡画像で病変の把握も可能である。

鼻副鼻腔の局所麻酔法—処置や手術のための局麻

著者: 野村和弘

ページ範囲:P.326 - P.329

Point

●優しい操作を心掛ける。

●局所麻酔自体による出血を減らす。

●表面麻酔後,局所注射による浸潤麻酔を行う。

●局所麻酔薬の極量に注意する。

●局所麻酔中毒の際には蘇生しつつ,助けを呼ぶ。

副鼻腔自然口開大処置と副鼻腔洗浄

著者: 松根彰志

ページ範囲:P.330 - P.334

Point

●内視鏡下鼻内副鼻腔手術以外で,副鼻腔換気の改善,ドレナージ,洗浄効果を期待する局所処置には,穿刺器具(Schmidt探膿針,サイノジェクトなど)や,経自然口洗浄管(Killian氏など)を用いた方法などがあり,これらは患側上顎洞に対して行う。

●2005年以降,特殊なバルーンカテーテルを用いて副鼻腔自然口を低侵襲に開大する,endoscopic balloon catheter sinusotomyと呼ばれる新しい治療法も世界的に用いられている。

●カテーテル器具の開発により,古典的な方法であるプレッツ置換法にかわる洗浄も可能となった。

●こうした手技を生かすためには,まず基本的な鼻粘膜の収縮と局所麻酔,分泌物の吸引といった鼻処置を十分に行う必要がある。

鼻出血への対応

著者: 飯村慈朗

ページ範囲:P.336 - P.339

Point

●鼻出血の治療の第一歩は,出血点を同定することである。

●盲目的なタンポン留置は侵襲が大きく,止血率もよくない。

●確実に止血するためには,電気凝固術で止血する。

●的確な止血処置でも止血されない場合には,さまざまな疾患を考慮し検査を進める。

●再出血を繰り返す場合は,同じ処置を繰り返さず手術的治療を検討する。

下鼻甲介手術

著者: 濱田聡子 ,   朝子幹也

ページ範囲:P.340 - P.343

Point

●鼻の生理的機能を損なわない手術を心掛ける。

●CO2レーザーは下鼻甲介粘膜表面を炭化させず,数回に分けて照射する。

●花粉症に対しては,季節前にレーザー照射をする。

●粘膜下下鼻甲介骨切除は骨膜下に剝離する。

●鼻閉の強い症例は,下甲介骨後端上部の骨を丁寧に切除する。

鼻骨骨折への対応

著者: 高林宏輔

ページ範囲:P.344 - P.346

Point

●鼻骨骨折は顔面骨骨折治療の第一歩である。

●解剖を理解した麻酔をすることで,可能な限り除痛を目指す。

●超音波を使用することでリアルタイムに整復の評価が可能となる。

●術後のトラブルを避けるため,インフォームドコンセントは念入りに行う。

《咽喉頭・頭頸部領域》

咽頭・喉頭の観察法

著者: 戎本浩史 ,   大上研二

ページ範囲:P.347 - P.349

Point

●内視鏡を十分に活用する。

●観察法を工夫して,より詳細に観察する。

●古典的な観察法にも習熟する。

咽頭・喉頭病変の麻酔と生検

著者: 室野重之

ページ範囲:P.350 - P.352

Point

●咽頭・喉頭病変に対する生検では,まず局所麻酔下にチャンネル付き経鼻内視鏡を用いて行いたい。

●リドカインによる表面麻酔が重要であるが,過量投与やアレルギー,アスピリン喘息に注意が必要である。

●生検に際しては,操作者と助手の息を合わせ,内視鏡と鉗子を上手く操作して適切な採取に努める。

●いったん反射が起こると過緊張のため継続が困難となることも少なくなく,はじめのタッチが重要である。

頸部病変の超音波検査

著者: 森田成彦 ,   大月直樹

ページ範囲:P.354 - P.359

Point

●甲状腺疾患の診断では,超音波検査が有用である。結節性病変はCT,PETや頸動脈エコーなどで偶発的に発見される場合も多く,鑑別診断には超音波検査が重要となる。

●唾液腺腫瘍の診断では,典型的な悪性所見を呈するものは推定ができるが,低悪性度腫瘍の良悪の鑑別は困難である。

●頸部リンパ腫腫大の鑑別診断は多彩であり,超音波検査により,悪性度に関する情報を得ることが重要である。

頸部病変の細胞診

著者: 成田憲彦

ページ範囲:P.360 - P.363

Point

●穿刺吸引細胞診は,頭頸部腫瘤・腫瘍に対してエコーガイド下で安全に施行できる標準的な検査の1つである。

●安全ではあるが,易出血性など施行前のリスク評価は必要である。

●頻度は低いものの,FNAの合併症について念頭に置くべきである。

●液状化細胞診および免疫細胞染色が頭頸部領域にも普及し,成績が改善されている。

頸部リンパ節生検

著者: 折田頼尚

ページ範囲:P.364 - P.366

Point

●さまざまな理由で頸部リンパ節腫脹が起きることを理解し,可能な限り不必要なリンパ節生検は行わない努力をする。

●頸部リンパ節生検施行にあたっては,術前の超音波検査にて安全性と診断確定の両面から考慮し最適のリンパ節を選ぶ。

●特に助手は,術野の中心がずれないよう,常に留意しながら術野を展開することが望ましい。

●標本を鑷子や鉗子で強く把持するなどの組織を挫滅させる行為は極力控える。

●生検の目的を十分理解し,適切な方法で摘出標本を保存する。

気管切開術

著者: 鹿野真人

ページ範囲:P.368 - P.371

Point

●同じ気管切開術はひとつとしてない。手術に立ち会う機会を逃さない。

●術前のリスク診断が合併症,事故を防ぐ。

●輪状軟骨は重要なランドマークである。

●緊急時の対応をシミュレーションしておく。

原著

長期生存を得られた乳癌が副鼻腔転移した1症例

著者: 松本珠美 ,   矢野陽子 ,   小山新一郎 ,   中村善久 ,   鈴木元彦 ,   村上信五

ページ範囲:P.373 - P.377

はじめに

 鼻副鼻腔に発生する悪性腫瘍は頭頸部癌の約10%を占めるといわれ,そのほとんどが原発であり,転移性悪性腫瘍は稀である。

 今回われわれは乳癌治療後7年経過したのちに鼻副鼻腔転移を生じ,治療が奏効し長期生存を得ている稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

一般総合病院における小児めまい患者の診断・治療

著者: 五島史行 ,   若林毅 ,   佐山章子 ,   永井遼斗 ,   南修司郎

ページ範囲:P.379 - P.384

はじめに

 めまいはさまざまな原因で生じるが,心理社会的影響が大きい心身症が多く含まれている。以前に総合病院耳鼻咽喉科にて検討したところ,外来めまい患者の42.9%が心身症であった1)。成人においてめまいは一般的なものであるが,小児のめまいを目にする機会はあまり多くない。海外の報告では成人および小児において,なんらかの原因で起こるめまいの有病率は23%および0.4%,前庭性のめまいは5%および0.05%と報告されており,小児のめまいの頻度は成人に比しておよそ100分の1程度と考えられる2)。頻度が少ないだけに,診断にも苦慮することが多い。さらに小児では,診断に必要な複数の臨床検査を行うことが困難である。また,患児にかかる負担を考えると,可能な限り不必要な検査を避けることが好ましい。

 正確な診断のためには世代ごとにどのような症例が多く,どのような予後かを知ることは重要である。成人のめまいで最も頻度が高い良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)は小児ではほとんどみられず,良性発作性めまい症(benign paroxysmal vertigo:BPV),前庭性片頭痛は小児で高頻度にみられる疾患である3-8)。この2疾患については,国際頭痛分類より診断基準が提案されている。近年小児のめまいにおいては5歳以上と,5歳未満で疾患の頻度が大きく異なることが報告9)されている。本研究では,一般病院の耳鼻咽喉科における,小児めまいの臨床統計と治療の実際を明らかにすることを目的とした。また,年齢による疾患の頻度の違いについても検討を加えた。

頭頸部扁平上皮癌患者における栄養評価指標と予後の関連

著者: 竹中幸則 ,   北村貴裕 ,   青木健剛 ,   浜口寛子 ,   竹村和哉 ,   野澤眞祐 ,   山本佳史 ,   宇野敦彦

ページ範囲:P.385 - P.389

はじめに

 頭頸部扁平上皮癌患者は,高齢発症,併存症,腫瘍による嚥下障害のため,低栄養状態にあることが多い1)。低栄養は治療中断や合併症の増加と関連するため,適切に栄養状態を評価し,栄養療法を施行する必要がある2)。栄養状態を評価する指標としては,body mass index(BMI),末梢血中リンパ球数,血清アルブミン濃度,血中ヘモグロビン濃度が用いられることが多い3,4)。これらの栄養指標は,頭頸部扁平上皮癌患者の予後と相関することが知られている5,6)。しかし,これらのうち,どの項目が最もよく予後と相関するかについては,いまだ明らかにされていない。今回われわれは,根治的放射線療法を受けた頭頸部扁平上皮癌患者を対象に,栄養評価指標と生命予後との関係を検討したので報告する。

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目次

ページ範囲:P.297 - P.297

欧文目次

ページ範囲:P.299 - P.299

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.392 - P.392

 スケート陣や女子カーリングチームの大活躍が話題となった平昌オリンピックが閉会して,国民栄誉賞が話題となっています。1977年,当時の内閣総理大臣・福田赳夫氏が,本塁打世界記録を達成した王 貞治選手を称えるために創設したのが国民栄誉賞のはじまりでした。その目的は「広く国民に敬愛され,社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて,その栄誉を讃えること」であり,表彰の対象は「内閣総理大臣が本表彰の目的に照らして表彰することを適当と認めるもの」「これまで功績を積み重ねてきた上に,さらに歴史を塗り替える,突き抜けるような功績をあげたもの」とされています。やや曖昧な感じで選考は大変難しいという印象です。長嶋茂雄・松井秀喜両選手やFIFA女子ワールドカップ日本女子代表の受賞,オリンピックアスリートではマラソンの高橋尚子選手,レスリングの吉田沙保里選手や伊調 馨選手の受賞が記憶に新しいところです。今年2月には将棋囲碁界から羽生善治氏と井山裕太氏が表彰されました。羽生善治氏は中学生でプロ入り,将棋大賞の新人賞を受賞すると,17歳で天王戦優勝,19歳で竜王位に就きました。1996年に,将棋界で初の7冠独占,2017年に初の永世7冠に輝いています。井山裕太氏も中学1年でプロ入り。史上最年少記録となる16歳で優勝し,20歳で名人となっています。2016年,囲碁界史上初の7冠達成を果たすと,2017年には2度目の7冠独占を達成しました。まさに,国民栄誉賞に価する活躍ということがいえます。今回の平昌オリンピックや2年後の東京オリンピックのアスリートで国民栄誉賞受賞者がでるのか今から楽しみです。

 さて,今月の特集は「基本診察・処置・手術のABC」です。耳科領域,鼻科領域,咽喉頭・頭頸部領域のまさに基本手技がまとめられています。耳鼻咽喉科医として専門研修を始められる新人だけではなく,すべての耳鼻咽喉科医に読んでいただきたい内容です。また,3編の原著論文も力作揃いです。2018年度のスタートですので,新たな気持ちでお読みいただければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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