icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻5号

2018年04月発行

文献概要

増刊号 患者・家族への説明ガイド—正しく伝え,納得を引き出し,判断を促すために Ⅰ.耳と聞こえのこと 医師・医療者から説明しておきたいこと

耳鳴の音響療法を行う前に

著者: 森浩一1

所属機関: 1国立障害者リハビリテーションセンター病院

ページ範囲:P.58 - P.59

文献購入ページに移動
説明のPOINT

・耳鳴が「治らない」と患者に言うことは医学的に正確ではなく,また,絶望感を抱かせることがあるので避ける。

・原因を含めて,医学的説明を尽くす。耳鳴自体は心理面以外に他の疾患の原因にはならず,難聴などの結果であることと,耳鳴の大きさとつらさは相関しないこと,つらさを取る治療はあることを説明する。

・①原病の治療,②耳鳴の治療,③つらさへの治療を区別して説明する。

・上記②③としては,薬物療法,音響療法,心理療法が主なものである。

・抗不安薬は耳鳴の音量を下げる効果もある。しかし依存を生じやすいので,原則として長時間作用性のものを,3か月以内で処方する。抑うつがあれば,抗うつ薬も考慮する。他の治療薬は有効率が低い。

・薬物療法中は耳鳴の変化をチェックしがちなため,耳鳴への注意を減らすことができず,音響療法,心理療法の治療の妨げになりやすい。これを説明し,患者に選択させる。

・音響療法は即効性があり,継続すると馴れができ,耳鳴に気がつきにくくなり,つらさも減る。不眠についても有効性が高い。なお,聴覚過敏があればその音響療法を先に行う。

・心理療法としては,耳鳴から注意が逸れればつらくなくなるので,耳鳴を気にしないですむよう環境を工夫し,身体活動を促す(散歩・家事・体操・朗読・歌唱など)。聾症例もこれで対応する。認知行動療法3)(マインドフルネス4)など)の併用で耳鳴から積極的に注意を逸らし,考えの切り替えができる。

・不眠については,睡眠時間ではなく,昼間眠くならなければ睡眠不足でないことを説明する。薬物療法は高齢者では副作用や依存症が多いので,できるだけ音響療法と認知行動療法を優先する。

参考文献

1)Tinnitus Research Initiative(TRI)Tinnitus Clinic Network:Tinnitus Flowchart for Patient Management. 2009. http://www.tinnitusresearch.org/index.php/for-clinicians/diagnostic-flowchart
2)AAO-HNSF:Clinical Practice Guideline:Tinnitus. 2014. http://www.entnet.org/content/clinical-practice-guideline-tinnitus
3)Pichora-Fuller MK, et al:Evaluation and treatment of tinnitus:Comparative effectiveness, Report No.:13-EHC110-EF, Agency for Healthcare Research and Quality(US);2013
4)熊野宏昭:はじめてのマインドフルネス.NHK出版,東京,2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?