耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻5号

2018年04月発行

増刊号 患者・家族への説明ガイド—正しく伝え，納得を引き出し，判断を促すために

Ⅰ．耳と聞こえのこと 医師・医療者から説明しておきたいこと

鼓膜形成術を行う前に

著者： 田中康広¹

所属機関： ¹獨協医科大学埼玉医療センター耳鼻咽喉科

ページ範囲：P.70 - P.71

文献概要

説明のPOINT

・鼓膜形成術は穿孔した鼓膜を閉鎖させ，新しい鼓膜を再生させる手術療法である。

・穿孔を閉鎖させる手術ではあるが，手術を行っても再度穿孔を生じる可能性がある。

・鼓膜形成術には接着法と耳後部を切開する従来からの鼓膜形成術（耳後切開法）が存在し，それぞれの長所・短所を考慮して，より適切な術式を選択する。

・耳後部切開によるアプローチを行った場合には，一過性の耳介知覚鈍麻や味覚障害を生じる可能性があることを必ず手術前に説明しておく必要がある。

・頻度は高くないものの，術後感染や出血，鼓膜の再穿孔，鼓膜炎などの他の合併症についても説明しておく。

参考文献

1）Paparella MM, et al：Sensorineural hearing loss in chronic otitis media and mastoiditis. Trans Ame Acad Opthtalmol Otolarygol 74：118-115, 1970

2）Hakuba N, et al：Preoperative factors affecting tympanic membrane regeneration therapy using an atelocollagen and basic fibroblast growth factor. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 141：60-66, 2015

3）原　真理子・他：小児慢性穿孔性中耳炎手術施行症例の臨床的検討．Otology Japan 23：85-91

4）竹村考史・他：当科における鼓膜形成術の治療成績．耳咽喉頭頸81：639-642，2007