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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻6号

2018年05月発行

雑誌目次

特集 目からウロコ 内視鏡時代の臨床解剖

ページ範囲:P.397 - P.397

《耳領域》

鼓室形成術における中耳解剖

著者: 伊藤吏 ,   欠畑誠治

ページ範囲:P.398 - P.404

POINT

●耳内視鏡はこれまで顕微鏡下耳科手術の補助的な役割として用いられてきたが,ビデオシステムの高精細化により,外耳道から内視鏡を挿入してすべての操作を内視鏡下に行う経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)が普及してきている。

●TEESでは直視鏡と斜視鏡を併用することにより,顕微鏡では観察が難しい前鼓室や後鼓室,鼓室峡部も拡大視が可能であることを,鼓室形成術Ⅰ型の症例にて示す。

●TEESによる真珠腫症例の手術では,鼓膜張筋ヒダの同定,穿破,前方換気ルートの確保が重要である。

●従来の顕微鏡下での手術解剖とは異なる,内視鏡による中耳解剖を十分に理解したうえでTEESを行えば,死角の少ない安全で低侵襲な鼓室形成術を行うことができる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

内耳道・小脳橋角部の手術

著者: 大石直樹 ,   西山崇経 ,   藤岡正人

ページ範囲:P.406 - P.410

POINT

●内視鏡下の内耳道・小脳橋角部へのアプローチとして,後方からのアプローチであるpresigmoid retrolabyrinthine approach(後迷路法)および前方からのアプローチであるtranscanal transpromontorial approachを紹介した。

●presigmoid retrolabyrinthine approachは機能温存を目的とする経側頭骨的アプローチであり,後半規管後方から小脳橋角部へ到達する。内視鏡を併用することで,内耳道内の操作が可能となる。

●transcanal transpromontorial approachは本邦での臨床応用例はいまだ報告されていないが,完全内視鏡下に経外耳道的に岬角を削開し,さらに蝸牛前庭削開を行い内耳道に到達する。

●今後より安全かつ確実な内視鏡下の手技を確立させることが,内視鏡的内耳道・小脳橋角部手術の可能性をさらに広げることにつながると期待される。

《鼻領域》

鼻中隔手術における臨床解剖—外鼻から蝶形骨洞自然口まで

著者: 飯村慈朗

ページ範囲:P.412 - P.419

POINT

●鼻中隔矯正術において軟骨および骨の過剰切除は,外鼻形態を保つための強度が落ち,外鼻変形を起こす可能性がある。L-strutやkeystone areaの温存が重要とされる。

●難度の高い鼻中隔弯曲症では鋤骨突起や蝶形骨稜,鋤骨翼上端などが位置情報を理解するためのメルクマールとなる。

●高度な前弯や外鼻変形を伴った症例などでは,鼻腔形態の矯正を考えると外鼻と鼻中隔を立体的な1つの構造物と考え矯正するべきである。

●蝶形骨稜と鋤骨翼の接合部は菱形をした骨隆起として認められ,蝶形骨洞自然口を検索する際のメルクマールとなる。しかし上甲介の付着部位が外側に位置する症例では,蝶形骨洞自然口は外側に位置する。

篩骨洞・蝶形骨洞の手術

著者: 田中秀峰

ページ範囲:P.420 - P.423

POINT

●鈎状突起垂直部の切除を確実に行う。

●篩骨胞は自然孔からプルバックで開放する。

●中鼻甲介基板(第3基板)は,捲板から基板へ移行する部分で最も前方に突出して見える部分で穿破する。

●中鼻道側から上鼻甲介前端を確認する。

●蝶形骨洞自然孔を見つけて開放すると,より安全である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

前頭洞・前頭窩の手術

著者: 野村和弘

ページ範囲:P.425 - P.429

POINT

●術前に3方向CTで前頭洞排泄ルートを確認する。

●直視鏡で操作可能な部位は直視鏡で行う。

●壁の穿破はできる限り行わない。

●限界壁(前方:厚い骨,後方:頭蓋底,外側:眼窩,内側:中鼻甲介の延長線)を念頭に置き,その内部での操作を行う。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

上顎洞の手術

著者: 竹内裕美

ページ範囲:P.430 - P.434

POINT

●解剖学的指標となる下・中鼻甲介,鈎状突起,篩骨胞,第3基板の立ち上がりを確認する。

●鈎状突起の切除の程度が,のちの第2,3基板の眼窩内側壁の処理を左右する。

●篩骨胞を開放することで,第3基板を明視できる。

●上顎洞自然口の開放とは半月裂孔を中心に,第1,2基板(UP,EB),膜様部(鼻泉門)を切除し,上顎洞裂孔を可及的に大きく開放することである。

内視鏡下経鼻頭蓋底手術

著者: 石井雄道

ページ範囲:P.436 - P.443

POINT

●硬膜切開の前に海綿間静脈洞(intercavernous sinus)を確実に止血する。

●硬膜切開は,視神経に沿った補助切開を加えた十字切開とする。

●ランドマークとなる視神経と内頸動脈を早期に捉え,上下垂体動脈を辿ることで下垂体茎に到達できる。

●閉鎖は硬膜層で髄液流出を確実に止め,硬性再建を行う。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

《咽喉頭・頭頸部領域》

内視鏡下経鼻アプローチにおける上咽頭の手術解剖

著者: 中川隆之

ページ範囲:P.444 - P.449

POINT

●アデノイド切除が上咽頭手術の基本手技となる。

●内視鏡下経鼻頭蓋底手術としての上咽頭手術の対象疾患は,脊索腫,軟骨肉腫,コレステリン肉芽腫,上咽頭癌である。

●内視鏡下経鼻頭蓋底手術の一貫として上咽頭領域へ操作範囲を拡大する際には,斜台,錐体骨へのアプローチがkeyとなる。

●上咽頭手術のランドマークとなる耳管,蝶形骨翼状突起,翼突管の解剖を理解する。

中咽頭の手術

著者: 清水顕

ページ範囲:P.450 - P.454

POINT

●適応決定のため,内視鏡診断を熟知する。

●側壁切除でははじめに下顎翼突縫線下に内側翼突筋を同定する。

●安全域確保のため,茎突舌筋・茎突咽頭筋の合併切除をする。

●確実な止血のため,inside outでの血管走行を見直す。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

下咽頭の手術

著者: 岸本曜 ,   楯谷一郎

ページ範囲:P.456 - P.462

POINT

●下咽頭の手術にはその立体的構造の把握が不可欠である。

●経口的鏡視下に行う下咽頭手術においては,術野の展開が手術の成否を左右する。

●手術のコンセプトを理解したうえで,可能な限り周囲の構造物を温存することにより術後機能が保たれ,低侵襲手術が実現される。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

喉頭の手術

著者: 冨藤雅之

ページ範囲:P.463 - P.469

POINT

●経口的喉頭手術においては,内視鏡の得意とする部位と顕微鏡の得意とする部位を知る必要がある。

●声帯の手術においては,顕微鏡のほうが操作はしやすく,声帯の層構造に応じた切開が望まれる。

●声門上部では舌骨,甲状軟骨,輪状軟骨の内腔から見た位置関係を把握し,神経,血管の走行を知る必要がある。神経血管束は舌骨甲状間膜,梨状陥凹前方の粘膜下にて同定しやすい。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

副咽頭間隙の手術

著者: 藤原和典

ページ範囲:P.470 - P.476

POINT

●口内法の適応は限られるが,低侵襲かつ機能温存が可能な有用な術式である。

●術野の近傍には頸動脈などの重要血管が走行しているが,術中超音波検査を行うことで評価できる。

●咽頭後リンパ節近傍に存在する上頸神経節をリンパ節と間違わないよう注意する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

Video-assisted neck surgery(VANS法)の要点と解剖

著者: 長岡竜太 ,   岡村律子

ページ範囲:P.477 - P.481

POINT

●皮弁形成時には,胸鎖乳突筋の鎖骨枝と胸骨枝の間に入ると,内頸静脈や総頸動脈損傷の危険につながるので注意する。

●上喉頭神経外枝の損傷を防ぐため,甲状腺上極の処理の際は,上甲状腺動脈を本幹で切離するのではなく,甲状腺表面を少しずつ切離するようにする。

●反回神経周囲の操作では,アクティブブレードを神経から極力遠ざけて使用し,同部位の持続的操作を避け,生理食塩水での冷却を行う。

●十分に止血を確認し,特に皮弁からの出血に注意を要する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年5月まで)。

原著

膵転移をきたした甲状腺乳頭癌の1例

著者: 川田倫之 ,   岡田隆平 ,   鈴木政美 ,   寺内祐理 ,   高橋亮介

ページ範囲:P.483 - P.488

はじめに

 甲状腺乳頭癌は予後良好な癌種の1つであり,10年生存率は90%を超えている。甲状腺乳頭癌の転移として最も頻度が高い部位は,頸部リンパ節である。一方,約5%程度の患者は遠隔転移をきたすといわれており,その転移部位は肺と骨に多い1)。甲状腺乳頭癌は癌種のなかでは緩徐な発育・進展をすることが多く,遠隔転移を有する甲状腺乳頭癌患者の5年および10年生存率は65%と45%と報告されており1),遠隔転移が生じた場合でも,条件によっては転移巣の外科的切除によって根治や予後の改善を目指すことも可能である。

 今回われわれは,膵転移をきたした甲状腺乳頭癌の1例を経験した。遠隔転移は骨と膵臓に存在していたが,膵転移に対して外科的切除を施行した。その臨床経過と甲状腺癌の膵転移について文献的考察を加えて,ここに報告する。

喉頭全摘を施行した喉頭軟骨腫の1例

著者: 井伊里恵子 ,   境修平 ,   瀬成田雅光

ページ範囲:P.489 - P.492

はじめに

 軟骨腫は,喉頭原発腫瘍のなかで稀な疾患である。喉頭軟骨腫は輪状軟骨,甲状軟骨,披裂軟骨に発生し,発生部位により臨床症状が異なる。また,喉頭軟骨腫は生検による病理診断が難しく1),低悪性度の喉頭軟骨肉腫との鑑別が困難であり2),診断と治療に難渋することが多い。治療は,外科的切除が一般的で,放射線治療や化学療法は無効とされる3)。今回われわれは,輪状軟骨原発の軟骨腫例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

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目次

ページ範囲:P.393 - P.393

欧文目次

ページ範囲:P.395 - P.395

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.482 - P.482

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.496 - P.496

 木々の緑も青々と肌に心地よい季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?

 時間が経つのは本当に早いです。今年も年頭に大きな目標を立てて気合を入れ,平昌五輪でたくさんの感動をもらって励まされ,よーし自分も頑張るぞ!と気持ちだけはいつも盛り上がるものの,結局何もできないまま。うーん,まずい,明日はやろう。「あすなろ」ではなく「あすやろ」です。ちなみに「あすなろ」は漢字で書くと「明日檜」や「翌檜」。ヒノキ科の小さな樹木でまっすぐに伸びることから,明日は檜のようになろうという意味があるようです。とにかく意欲だけはなくさないように,です。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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