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原著
頭頸部癌放射線治療後における在院日数の検討
著者: 青木由宇12 遠藤一平1 辻亮13 近藤悟1 杉本寿史1 脇坂尚宏1 室野重之1 吉崎智一1
所属機関: 1金沢大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 2黒部市民病院耳鼻いんこう科 3富山市民病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.583 - P.587
文献購入ページに移動頭頸部癌に対する治療は,嚥下機能や発声機能などを担う部位への治療となるため,治療法の選択については治療奏効率かつADL(activity of daily living)の維持についての考慮が必要である。
VA試験1)やRTOG91-11試験2)の結果を踏まえ,進行頭頸部癌症例に対してはシスプラチン(cisplatin:CDDP)を併用した化学放射線療法が外科治療と並んで標準治療の1つとなっている。さらに,2012年の分子標的薬であるセツキシマブの登場により頭頸部癌に対する治療法の選択肢が増した。セツキシマブは上皮成長因子受容体(epithelial growth factor receptor:EGFR)に結合してEGFRのはたらきを阻害するモノクローナル抗体で,頭頸部における新規の治療法として本邦でも普及してきた。近年,その治療効果や有害事象も報告されつつある3-5)。
Bonner試験では,喉頭癌のStage Ⅲ/Ⅳの症例に対して放射線照射単独群に比べ放射線照射とセツキシマブ併用群のほうが有意に局所制御期間や全生存期間を延長させた3)。
多様化する頭頸部癌治療に関してその治療成績や副作用が報告されつつある一方で,治療後のADLやQOL(quality of life)に関する報告はいまだ少ないのが現状である。皮膚粘膜炎など一過性の副作用から回復までの期間や,嗄声や嚥下機能などの症状が遷延したときのADLなど,さまざまな評価が必要であると考えられる。従来の治療選択肢の長期的なADLを比較した研究では,頭頸部癌患者における化学放射線療法群(concurrent chemoradiotherapy:CCRT)と手術群での,嚥下機能をはじめとした治療後のQOLについて質問紙法を用いて解析したところ,CCRT後のQOLは決して高くないことが報告されている6)。
頭頸部癌症例において放射線治療終了後は血液毒性,粘膜炎,摂食障害などの有害事象のためADLが改善するまで一定の入院期間を要する。今回われわれは頭頸部癌治療におけるADL改善までの期間の解析の1つとして,各種有害事象の遷延化で必要となる治療終了後の在院期間を各種治療法の侵襲度の指標として用いて検討した。
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