icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻9号

2018年08月発行

雑誌目次

特集 知っておきたい顎顔面形成外科の知識

ページ範囲:P.693 - P.693

《外傷》

鼻骨骨折変形治癒に対する外科的アプローチ

著者: 宮脇剛司 ,   積山真也 ,   梅田剛 ,   森山壮 ,   石田勝大

ページ範囲:P.694 - P.701

POINT

●外鼻変形の治療には鼻の外表評価が重要である。

●鼻骨変形治癒の治療は,骨性外鼻と軟骨性外鼻に分けて検討する。

●軟骨性外鼻の修正では,位置異常のある軟骨を剝離して解剖学的な位置に縫合する。

●骨性外鼻の修正では,陥凹部への組織移植や突出部の削骨,削軟骨や骨切り術を行う。

●骨切り術は鼻の骨格強度を低下させる可能性があることを念頭に置く。

顔面骨骨折に対する外科的アプローチ

著者: 福場美千子 ,   小室裕造

ページ範囲:P.702 - P.708

POINT

●術後の瘢痕が最小限になるようなアプローチ法を選択する。

●顔面骨には梁構造(buttress)があり,buttressを再建するように整復固定を行う。

●整復材料にはチタンプレート,吸収性プレートがあり,症例によって使い分ける。

外眼筋損傷に対する再建手術

著者: 嘉鳥信忠

ページ範囲:P.710 - P.717

POINT

●わずかな脂肪脱出を伴うconnective tissue septaの牽引でも,複視を生じる。

●ESS術後に眼球運動時痛がある場合は,医原性眼窩損傷の可能性を常に留意する。

●受傷そのものの重症度より,修復術開始までの時間が短ければより予後がよいため,いたずらに経過観察することなく,即座に修復術を検討することが望まれる。

●医原性眼窩損傷はESSに習熟している医師こそ,起こしやすい。

《先天性形態異常》

口唇口蓋裂に対する外科的アプローチ

著者: 岡部圭介 ,   矢澤真樹

ページ範囲:P.718 - P.728

POINT

●口唇口蓋裂は最も頻度の高い先天性外表奇形の1つであり,変形に伴う整容的・機能的障害に対して,成長に合わせて段階的な手術治療が行われる。

●口唇裂手術の主な目的は整容の改善である。短縮した口唇を延長して左右対称で自然な外観を得るために種々の術式が考案されている。

●口蓋裂手術の主な目的は鼻咽腔閉鎖機能の獲得である。口蓋の長さを延長し,軟口蓋において左右に断裂した筋束を確実に再建することで機能予後が改善する。

●口唇口蓋裂の治療においては,形成外科をはじめ,歯科・口腔外科,耳鼻咽喉科,小児科など複数の診療部門がかかわる集学的治療が必須であり,患者の成長が完了するまで継続的に行われる。

外耳の先天性形態異常に対する外科的アプローチ

著者: 朝戸裕貴

ページ範囲:P.730 - P.735

POINT

●日常よくみられる外耳の軽度な形態異常として,副耳,耳瘻孔,耳垂裂,埋没耳などが挙げられる。

●軟骨の変形を伴う中等度の変形としては,立ち耳,Stahl耳,折れ耳,絞扼耳などが挙げられる。

●高度の変形としては小耳症が挙げられ,その多くは外耳道閉鎖を伴い高度の伝音難聴を呈する。

●小耳症の手術は肋軟骨移植術と耳介挙上術の二段階手術法が一般的で,症例によっては外耳道形成術の適応もある。

《顔面》

顔面のスキンケア—シミ,しわ,ホクロ,イボへの対応

著者: 島倉康人

ページ範囲:P.736 - P.743

POINT

●頭頸部において,メラニン色素の偏在や構造の不均一は治療の対象となる。

●シミは複数の疾患の総称で,同じ治療を行っても疾患により結果が大きく異なるため,しっかりした診断とそれに合った治療法の選択が重要である。

●しわの治療はその原因を判断し,しわの種類にあった治療を選択するのが患者満足度を上げる。

●ホクロや小腫瘤の治療は,診断とそれに合った治療法の選択が必要で,疾患によっては専門科に委ねることも考慮する。

顔面皮膚縫合のコツとトラブルシューティング

著者: 堀圭二朗 ,   櫻井裕之

ページ範囲:P.744 - P.750

POINT

●皮膚縫合を行う前に,デザイン,マーキング,切開,皮下剝離などの準備を行う。

●赤唇と白唇の境界,眼瞼縁や眉毛のずれは少しでも目立つので,細心の注意を払って合わせる。

●顔面皮膚縫合に適した器具と針糸を用意・選択する。

●顔面皮膚縫合においては層同士を正確に密着させ,創縁を少し外反させるが,盛り上げてはいけない。

眼瞼下垂に対する外科的アプローチ

著者: 植村法子 ,   岡崎睦

ページ範囲:P.751 - P.757

POINT

●眼瞼下垂になると生活の質が低下し,不定愁訴の原因となる。

●後天性眼瞼下垂では加齢やコンタクトレンズの装用による腱膜性眼瞼下垂が多く,眼瞼挙筋腱膜を修復する手術で改善する。

●弛緩した皮膚が瞳孔に被さる偽性下垂も多く,皮膚切除および重瞼形成術により改善する。

●病態がさまざまであり,重症例を見逃さないように診断し,患者の状態に合わせた術式選択が必要である。

顔面神経麻痺に対する再建術の適応とその実際

著者: 門田英輝 ,   福島淳一

ページ範囲:P.758 - P.764

POINT

●顔面神経麻痺の再建術は,麻痺の程度や部位,発症からの期間,患者の年齢や希望によりさまざまな選択肢がある。

●発症から半年〜2年以内であれば,咬筋神経への神経移行術が有用である。

●眉毛下垂に対する眉毛挙上術,下眼瞼外反変形に対するKuhnt-Szymanowski法は,眼瞼周囲の変形を改善する簡便な再建術である。

●口角麻痺には,muscle bow traction法やtemporalis tendon transposition法といった筋膜移植術,広背筋移植による動的再建術が有用である。

《顎》

顎関節疾患に対する外科的アプローチ

著者: 儀武啓幸

ページ範囲:P.765 - P.772

POINT

●顎関節疾患=顎関節症ではない。顎関節症とは顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節(雑)音,開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名であるが,顎関節に関連する疾患の総称ではない。

●顎関節に対する外科手術の適応症は限られているが,顎関節強直症,関節円板の穿孔や断裂,習慣性顎関節脱臼などや,顎関節の腫瘍性疾患または腫瘍類似疾患(滑膜軟骨腫症など)を対象に行われることが多い。

●顔面神経側頭枝は下顎頭外側付近を走行していることが多いことから,顎関節の手術においては注意が必要である。

●顔面神経の損傷を避けるため耳前部切開,または耳前・側頭切開が基本となる。審美性を考慮して耳前切開を応用する場合もある。

閉塞性睡眠時無呼吸症に対する上下顎前方移動術の応用—睡眠外科手術(外科的矯正治療の応用)

著者: 篠塚啓二 ,   外木守雄

ページ範囲:P.773 - P.782

POINT

●閉塞性睡眠時無呼吸障害(症):OSAの外科的治療戦略を検討していくうえでは,病因・病態学的な4因子である,①解剖学的上気道狭小化,②呼吸調節系の不安定性,③上気道代償性の低下,④低い覚醒閾値,を適切に評価し,また年齢なども考慮する必要がある。

●上下顎前方移動術(MMA)は,OSAの原因が顎顔面形態,特に小下顎症にある場合の根本的な治療となる可能性をもつ。

●MMAの施行にあたって,OSA患者はもともと睡眠障害があることに加え,肥満や循環器疾患などの全身的リスクを抱えていることが多いことなどから,周術期管理には注意を要する。

●日本人は頭蓋顎顔面の前後径が短いため,MMAを応用するには,顔貌の調和を考慮して施行すべきである。

原著

穿孔を伴わない口蓋小欠損創の口蓋粘骨膜弁による即時再建—口蓋粘表皮癌2症例

著者: 西平茂樹 ,   三原国昭 ,   中津若菜 ,   鍋島謙一 ,   西平宗功

ページ範囲:P.783 - P.788

はじめに

 軟硬口蓋の小唾液腺腫瘍摘出術では,鼻咽腔側に軟組織が保存できると二次的治癒(secondary intention)1)が期待できることから,欠損を修復せずに手術を終了することが一般的である。ほとんどの症例は合併症なく治癒するが,時に鼻咽腔口腔間瘻孔や鼻咽腔閉鎖不全などの合併症を生じることがあり,その後患者側・治療者側はともに新たな負担を強いられる2,3)。筆者らは,鼻咽腔側に軟組織を保存できた症例であっても,合併症の発生が懸念される場合には,口蓋局所の粘骨膜弁による即時再建を行っている。今回,上記を施行した2症例について考察を加えて報告する。

--------------------

目次

ページ範囲:P.689 - P.689

欧文目次

ページ範囲:P.691 - P.691

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.709 - P.709

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.792 - P.792

 夏本番,皆様いかがお過ごしでしょうか?

 日本の夏は暑い! ムシムシ,ジメジメ,ちょっと歩けば汗ダラダラ……。でも,2年後のちょうど今頃は東京オリンピックが開催されているのですね。屋内競技はいいとして,屋外競技に参加されるアスリートの方たち,炎天下での競技はさぞかし大変だと思います。自分はこの時期,エアコンがガンガンに効いた部屋で冷た〜いドリンクを飲みながらテレビでスポーツ観戦派です。何を見るかって? それはもう高校野球,夏の甲子園で決まりです! もはやわが家の子供たちよりも年下の選手たちが,仲間を信じて力を合わせ,いつでも全力疾走でグラウンド上を躍動して。猛練習を積み重ねてつかみ取った晴れの舞台では,勝っても涙,負けても涙。そのひたむきさや清々しい姿にいつも心を洗われます。多分,自分自身の普段の生活に一番欠けているところなのだろうと思います。今年もとっくに折り返し地点を過ぎていますが,年頭に立てた目標なぞ,まだほとんど達成できていない。よ〜し,ここからまた頑張るぞ。いざ,プレーボール!

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?