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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科91巻1号

2019年01月発行

雑誌目次

特集 役に立つ! アレルギー診療の最新情報

ページ範囲:P.5 - P.5

アレルギー性鼻炎に対する局所治療—コツと注意点

著者: 遠藤朝則

ページ範囲:P.6 - P.12

POINT

●局所治療は対症療法であるため,症例の成り立ちに応じて行われる。

●アレルギー炎症の場で炎症をコントロールすることを目的とした治療である。

●通年性アレルギー性鼻炎と花粉症では,季節変動の違いにより治療法も異なる。

●実際には総合的な判断で,免疫療法も含めて,合目的的に選択することがQOL向上につながる。

アレルギー性鼻炎治療における内服薬選択—コツと注意点

著者: 寺田哲也

ページ範囲:P.14 - P.17

POINT

●くしゃみ,鼻水はヒスタミンを介した即時相反応である。

●鼻閉はCysLTや好酸球が関与する2相性の反応である。

●アレルギー性鼻炎の病型を理解し,病型に基づいた治療薬の選択をする。

●鼻閉型のアレルギー性鼻炎患者に,漫然と抗ヒスタミン薬の投与をしない。

下鼻甲介手術と後鼻神経切断術—コツと注意点

著者: 野口直哉 ,   太田伸男

ページ範囲:P.18 - P.24

POINT

●アレルギー性鼻炎の重症例では手術療法が選択されることがある。

●下鼻甲介手術は主として鼻閉の改善を,後鼻神経切断術は鼻過敏症状の改善を目的とした手術である。

●下鼻甲介手術と後鼻神経切断術を組み合わせることで優れた臨床効果が期待できる。

●鼻腔機能を失うような過度の手術は避けなければならない。

舌下免疫療法の現状と今後の展望

著者: 岡野光博

ページ範囲:P.26 - P.32

POINT

●現状ではダニによるアレルギー性鼻炎とスギ花粉症に適応がある。

●長期的な寛解効果を期待するのであれば3年間以上の治療が望ましい。

●5歳以上の小児にも治療が可能となった。

●今後の課題として,2種舌下免疫療法(dual SLIT)やヒノキ花粉による舌下免疫療法の開発などがある。

妊婦に対するアレルギー性鼻炎治療

著者: 米倉修二

ページ範囲:P.34 - P.39

POINT

●妊婦に対する治療内容が制限される状況下において,抗原回避を含めた環境整備は必須である。

●薬物使用に関しては,妊娠4か月までは催奇形性の可能性があるため,原則的に使用は避けることが望ましい。

●妊娠5か月以降は胎児毒性による機能的発育が問題となるが,症状が強い場合には局所治療を中心に検討する。

●妊婦に対してアレルゲン療法を新規に開始することは避けるべきである。

アトピー性皮膚炎に対する外用療法の最前線

著者: 木庭幸子 ,   奥山隆平

ページ範囲:P.40 - P.46

POINT

●アトピー性皮膚炎の病態は,Th2免疫応答の活性化と角層バリア機能異常が相互に作用しながら複雑に形成される。

●皮疹の重症度に合わせた外用薬の選択は,すべての湿疹・皮膚炎に対する外用療法の基本である。

●外用療法では,十分な外用量の指標として「finger tip unit」が有用である。

●寛解状態から再燃させないために有用な外用療法として,プロアクティブ療法が推奨される。

●スキンケアは,バリア機能が低下しているアトピー性皮膚炎患者には非常に重要で,とりわけ寛解後の維持療法として必須である。また,近年はアトピー疾患全般の発症予防においても注目されている。

喘息に対する分子標的薬治療の位置づけと今後の展望

著者: 長瀬洋之

ページ範囲:P.47 - P.53

POINT

●重症喘息に対する分子標的薬の選択肢が増えており,抗IgE抗体,抗IL-5抗体と抗IL-5受容体α抗体が承認されている。

●IL-4とIL-13の双方を阻害する抗IL-4受容体α抗体の臨床応用は近く,抗TSLP抗体についても第Ⅲ相試験が進行中である。

●分子標的薬の選択に有用なバイオマーカーは未確立であるが,抗IL-5療法は,血中好酸球数が多いほど効果が高い。

●課題は,好中球性喘息に対する分子標的薬が未確立であることと,長期予後や喘息の自然史を修飾できるかに関する知見が十分でないことにある。

口腔アレルギー症候群の現状と診療の実際

著者: 猪又直子

ページ範囲:P.54 - P.61

POINT

●口腔アレルギー症候群(OAS)の多くは,花粉との交差反応で生じる花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)である。

●代表的なPFASは,カバノキ科花粉感作による,リンゴやモモなどのバラ科果物アレルギー例である。

●PFASの原因アレルゲンは熱不耐性のため,新鮮な食品で誘発されやすく,加熱調理品は摂取できることが多い。

●カバノキ科花粉感作による豆乳アレルギーや,ヨモギ花粉感作によるスパイスアレルギーはアナフィラキシーに進展しやすい。

ペットアレルギーの現状と診療の実際

著者: 堀口高彦

ページ範囲:P.62 - P.67

POINT

●アレルギー疾患の問診の際には,ペット飼育状況の聞き取りが重要である。

●ペットアレルゲンは,粒子が非常に細かいため,アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎にとどまらず喘息発症の因子としても重要である。

●治療は原因抗原の回避であるが不可能なことが多く,可能な限りの対策を指導する。

●ペットアレルゲン除去の臨床的効果が出るまでには長時間を要する。

アレルギー診療における屋内抗原の除去と回避

著者: 嶋田貴志

ページ範囲:P.69 - P.74

POINT

●アレルギー性疾患の原因となるアレルゲンは,スギ花粉とダニが最も多いが,スギ花粉は屋外からの侵入,ダニは屋内での増殖によるものである。

●日本の屋内塵中のダニアレルゲン量は世界的にみた場合非常に多く,その検出率も高い。

●アレルゲンの除去は可能な限り水洗い(洗濯)が有効であり,不可能な場合は掃除機掛けが有効である。

●アレルゲンによる汚染具合を把握し,曝露の機会と量を減らすことが重要である。

●室内環境はダニアレルゲンに汚染されていることを患者にも理解させ,治療だけでなく,予防にも心掛ける意識をもたせることが重要である。

原著

頸部外切開により摘出した巨大な口腔底奇形腫様囊胞の1例

著者: 藤原肇 ,   橋本大 ,   甲藤麻衣 ,   佐伯忠彦

ページ範囲:P.75 - P.79

はじめに

 類皮囊胞は身体各部に発生するが,頭頸部領域におけるその発生頻度は6.9%,口腔付近に発生する頻度は1.6%と比較的稀である1)

 類皮囊胞は,病理組織学的に(狭義の)類皮囊胞,類表皮囊胞,奇形腫様囊胞の3種類に分類され,なかでも奇形腫様囊胞は非常に稀である。

 今回われわれは,口腔底に生じた巨大囊胞性病変を頸部外切開により摘出し,奇形腫様囊胞と診断した1例を経験した。本症例の画像所見や病理組織所見,手術方法について文献的考察をつけ報告する。

頸部に発生したCastleman病の1例

著者: 黒田一彬 ,   小川晃弘 ,   佐伯忠彦 ,   宮原聡子 ,   春名威範

ページ範囲:P.80 - P.85

はじめに

 Castleman病は,比較的稀な原因不明のリンパ増殖性疾患であり,縦隔や肺門に好発するが頸部にも発生がみられる1)

 今回われわれは,当初悪性リンパ腫や甲状腺癌とその頸部リンパ節転移を疑ったが,病理組織学的検査にて頸部腫瘤はCastleman病と診断された1例を経験したので報告する。

喉頭蓋囊胞の内視鏡所見を呈した喉頭悪性リンパ腫症例

著者: 松浦貴文 ,   金川英寿 ,   田中邦剛 ,   津田潤子 ,   橋本誠 ,   菅原一真 ,   山下裕司

ページ範囲:P.87 - P.91

はじめに

 頭頸部領域は悪性リンパ腫の好発部位であるが,喉頭に発生する悪性リンパ腫は非常に稀といわれている1-3)。今回われわれは,内視鏡検査で喉頭蓋囊胞様の所見を呈した喉頭悪性リンパ腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

書評

耳鼻咽喉・頭頸部手術アトラス[上巻]第2版

著者: 中島格

ページ範囲:P.25 - P.25

 本書は1999年に刊行された『耳鼻咽喉・頭頸部手術アトラス 上巻』の改訂第2版である。耳鼻咽喉科分野の手術書としての草分けは61年に本邦で初めて刊行され,多くの耳鼻咽喉医に読まれた『耳鼻咽喉科手術書』があり,77年には手術の図を豊富に取り入れた『耳鼻咽喉手術アトラス』が刊行された。私も同アトラスを繰り返し読み込んで手術室に入り,育った一人である。その後医療機器の発展や医療技術の飛躍的向上,さらには患者のquality of lifeに沿った治療概念が重視されるようになり,内容を一新した『耳鼻咽喉・頭頸部手術アトラス』が企画され,初版として99年に上巻「耳科,鼻科と関連領域」,2000年に下巻「口腔・咽喉頭,頭頸部」が発刊された。医学部で耳鼻咽喉科学講座の指導者になっていた私は,初版では執筆者として参加し,診療や手術の指導をする立場で携わることができた。それまでの手術書とは異なり,術式や手技の実際をイラスト化し,専門家によって臨場感あふれる図説になったことで,初心者は初めての手術のシミュレーションとして,熟練医は術前に術式を確認する書として,多くの耳鼻咽喉・頭頸部外科医から支持を得たことを執筆者の一人として誇りに思っている。

 改訂第2版の本書は,監修者の森山寛氏が述べているように,低侵襲性の手術手技や治療概念の変化に沿い,それらを実現するための検査・手術機器の飛躍的な発展に沿って大胆に改訂されている。特に初版刊行時にはほとんど普及していなかった新しい手術概念のもとに,斬新な手術術式が加わっていることに注目している。耳科領域の内視鏡手術や,内視鏡下鼻内頭蓋底手術など,患者にとって侵襲の少ない機能的手術の進歩は目を見張るものがある。それらを可能にした手術支援機器の発達が述べられ,それらを学んで発展させた若手の指導医による執筆は新鮮で説得力がある。

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目次

ページ範囲:P.1 - P.1

欧文目次

ページ範囲:P.3 - P.3

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.92 - P.92

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.96 - P.96

 インフルエンザの季節になりました。今年もそれぞれ2系統のA型,B型,計4種類のインフルエンザの流行の可能性があり,注意が喚起されています。また,今年は風疹の大流行が話題となっています。国立感染症研究所の発表によれば,2018年に入ってからの感染者数が2000人以上になり,すでに昨年の20倍以上になっています。感染力はインフルエンザの比ではないほど強いとされ,今後も感染者が増加することが危惧されています。風疹は耳鼻咽喉科にとっても関連の深いウイルスで,特に妊婦が感染すると高度難聴を呈する先天性風疹症候群を持った子どもが生まれる可能性が高くなります。米国疾病対策センターは日本の風疹流行を「レベル2」にランク付けしました。3段階の警告レベルのうち,2番目のレベルで,これはエボラ出血熱やジカ熱と同じ警告レベルです。予防接種や過去の感染歴がない妊婦は日本に渡航しないようにという自粛勧告も出されました。日本では危機意識があまり高くはない印象がありますが,米国政府はかなり深刻な状況とみているようです。米国でも1964〜1965年に風疹が大流行したことを契機にワクチン接種が徹底され,2005年に風疹の根絶宣言が出され,2015年にはアメリカ大陸からも排除されました。2018年,オートラリアでも風疹の根絶が発表されています。WHOによりますと,世界194か国中152か国が風疹の予防接種を国の制度に取り入れており,症例数は2000年から2016年にかけて97%減少しています。また,WHOは2020年までに世界レベルでの風疹の根絶を目標に掲げていますが,日本のワクチン行政にとりましてもムンプスワクチン同様,その対応は喫緊の課題といえます。

 さて,今月の特集は「役に立つ!アレルギー診療の最新情報」です。ますます増加するアレルギー疾患ですので,診療のコツや最新の対処法について全ての耳鼻咽喉科医に読んでいただきたいと思います。また,3編の原著論文も興味ある症例報告です。春の花粉症の季節も直近ですし,平成31年のスタートですので,新たな気持ちでお読みいただければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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