icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科91巻11号

2019年10月発行

雑誌目次

特集 進化する経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)—エキスパートに学ぶスタンダードな手術手技〔特別付録web動画〕

TEESの合併症とその対策

著者: 西池季隆

ページ範囲:P.966 - P.970

POINT

●スコープが正常組織に当たって損傷を起こしたり,熱損傷を起こしたりする危険性がある。

●術中止血には酸化セルロースと脳外科用X線造影材入りスポンジが有用である。バイポーラも効果的である。

●内耳瘻孔から真珠腫剝離操作を行う際には,他の部分の剝離を優先し,最後に瘻孔操作を行ったほうがよい。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

《TEESのスタンダードな手術手技》

鼓膜チューブ留置術と鼓膜形成術

著者: 佐々木亮

ページ範囲:P.920 - P.925

POINT

●内視鏡下鼓膜チューブ留置術は,小児例では外耳道径が比較的狭いが,外耳道長が短く,かつ彎曲が少ないため施行しやすい。

●外耳道の彎曲が強い症例では内視鏡下鼓膜形成術のよい適応であると考えられる。

●鼓膜チューブ留置術,鼓膜形成術のいずれも,これから内視鏡下耳科手術を行っていく際の第一歩の手術と思われる。

●当院では鼓膜弛緩症(atelectatic ear)や癒着性中耳炎にはsubannular tube挿入術を施行している。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

慢性中耳炎に対する鼓室形成術

著者: 堀龍介

ページ範囲:P.926 - P.933

POINT

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)の利点を享受するだけでなく,欠点をよく理解してその克服をすることが重要である。

●慢性中耳炎に対してTEESが適応となるのは,鼓膜,鼓室(上・中・前・後鼓室)に病変が存在する場合である。

●片手操作となるTEESでは,鼓膜形成においてunderlay法を選択するべきである。

●接着法を選択する場合,moist wound healing理論に基づいて術式改良をした接着法の成績は良好である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

癒着性中耳炎に対する鼓室形成術

著者: 山内大輔 ,   本藏陽平

ページ範囲:P.934 - P.939

POINT

●癒着性中耳炎は内陥した鼓膜が鼓室粘膜に線維性に癒着しており,内視鏡を近接させて繊細に剝離操作をすることで,粘膜を温存することが肝要である。

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)は鼓室洞などの処理において有利であるが,鼓室洞が深い場合には限界がある。

●術後含気化させるために,軟骨による鼓膜再建や補強,鼓膜換気チューブ留置を考慮するが,片手操作での再建に習熟することが求められる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術

著者: 水足邦雄

ページ範囲:P.940 - P.943

POINT

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(transcanal endoscopic ear surgery:TEES)による真珠腫の手術では,広角の視野,高い拡大率を活かした経外耳道アプローチによる繊細で死角のない手術が行える。

●これらの特性を十分に活用するために,確実に明視下で剝離操作を行うこと,残すべき上皮を確実に温存すること,といった従来の顕微鏡手術と同様の手技を習得することが望ましい。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

中耳奇形に対する鼓室形成術

著者: 坂口博史

ページ範囲:P.944 - P.949

POINT

●中耳奇形に対する鼓室形成術はTEESの最もよい適応の1つである。

●拡大した明るい視野で中耳を観察できることが最大の利点である。

●必要な際に両手操作に移行できるよう,顕微鏡も準備して手術に臨む。

錐体尖病変に対する手術

著者: 堤剛

ページ範囲:P.950 - P.954

POINT

●錐体尖病変の開放に際し,TEESによる手技は大きなブレークスルーをもたらす。

●迷路(蝸牛)下のアプローチがTEESのよい適応となる。

●完全摘出を目的とする場合,現時点ではTEESの適用は難しい。

●術中ナビゲーションは必ずしも必要ではない。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

耳硬化症などに対するアブミ骨手術

著者: 高橋昌寛 ,   小島博己

ページ範囲:P.955 - P.959

POINT

●アブミ骨手術は内視鏡下耳科手術のよい適応である。

●内視鏡下アブミ骨手術と顕微鏡下手術とでは手術成績,手術時間に有意な差はない。

●アブミ骨へのアクセスが早く,少ない削開範囲で良好な視野が確保できる。

●片手操作になることや立体視ができないことなどの短所もあるため,十分な経験のある術者が行うべきである。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

外リンパ瘻閉鎖術

著者: 藤岡正人

ページ範囲:P.960 - P.964

POINT

●低侵襲であり,かつ明るく拡大した視野でリンパ液の漏出の有無や部位を判断できることから,外リンパ瘻に対する試験的鼓室開放術はTEESのよい適応である。

●いかにして最小限の出血で,両内耳窓(正円窓,卵円窓)を十分に明視下に置いた視野を作るかが手術のポイントとなる。

●最も注意すべき副損傷は鼓索神経損傷であり,外耳道後壁〜鼓膜輪のレイヤー解剖の理解と,術前CT画像の読影による神経走行の確認が肝要である。

●慎重に操作をする限り,本手術による骨導閾値の上昇や気骨導差増大などは稀であり,内耳窓経由での薬剤投与法への応用が期待される。

Review Article

鼻呼吸と睡眠障害

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.972 - P.979

Summary

●最近の研究では,鼻閉は睡眠障害や睡眠呼吸障害と重要な関わりがあるとするものが多い。

●そのため鼻腔通気度を客観的に評価することは,睡眠障害の診療にとって大切である。

●睡眠呼吸障害の治療として鼻閉を解除することは,睡眠障害自体を軽減するだけでなく,閉塞性睡眠時無呼吸に対する経鼻的持続陽圧呼吸(nCPAP)治療のうえでも不可欠である。

●鼻閉と睡眠呼吸障害のより明確な関係を示すためには,さらに詳細な研究が必要である。

原著

原発不明頸部リンパ節転移癌16例の臨床統計

著者: 大久保淳一 ,   竹内頌子 ,   若杉哲郎 ,   河口倫太郎 ,   髙橋梓 ,   長谷川翔一 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.981 - P.985

はじめに

 原発不明頸部リンパ節転移癌とは,病理学的に癌が証明された頸部リンパ節が存在し,種々の検索にもかかわらず原発巣が見出せない病態である1,2)。従来は予後不良な疾患であったが,近年の集学的治療の発展により生存率は向上してきている。今回われわれは,当科を受診した原発不明頸部リンパ節転移癌症例の治療成績を報告する。

書評

内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術—CT読影と基本手技 第2版[手術動画・3DCT画像データDVD-ROM付]

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.987 - P.987

 内視鏡下鼻副鼻腔手術のバイブル『内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術—CT読影と基本手技』が5年ぶりに改訂され,待望の第2版が発売された。ご存知のように本書は京大耳鼻咽喉科・頭頸部外科で行ってきた手術解剖実習をベースとしている。本書の特徴は,まず,付録のDVD-ROMに収められた3DCT画像を用いて,基本的な内視鏡下副鼻腔手術に必要な解剖のポイントを解説し,三次元的な構造を把握して安全な手術計画を立てる能力を身につけさせておき,鼻副鼻腔の構造に基づいて安全確実に行える「目から鱗」の手術手技が,経験豊富なインストラクターによりステップ・バイ・ステップでわかりやすく解説していることにある。2014年に刊行された初版は,これから内視鏡手術を始める専攻医はもちろんのこと,頭蓋底手術を行うエキスパートにとっても必読のバイブルとなった。

 初版から5年,本書で学んだ知識と技術を生かしてoutside-inアプローチやendoscopic medical maxillectomyなどの新たな手術手技が全国で行われるようになり,鼻副鼻腔腫瘍や頭蓋底腫瘍に対して内視鏡下経鼻アプローチを選択する施設も多くなってきた。これらの状況を反映し,第2版では,拡大前頭洞手術や視神経管開放術,有茎鼻粘膜弁による頭蓋底再建などの項目が新たに増設され,頭蓋底手術に関連する内容が充実した。さらに,手術テクニックの解説用に2時間を超える多数の手術動画が付録DVD-ROMに収録されるなど,大きな進化を遂げている。まだお持ちでない方はもちろんのこと,すでに初版をお持ちの方も,第2版を購入されることをお薦めする。

--------------------

目次

ページ範囲:P.897 - P.897

欧文目次

ページ範囲:P.899 - P.899

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.988 - P.988

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.992 - P.992

 外科系各領域で低侵襲手術が急速に普及しています。実は,低侵襲手術に不可欠な内視鏡を初めて外科手術に導入したのは耳鼻咽喉科・頭頸部外科で,1985年にMesserklingerが鼻の穴を利用するkeyhole surgeryである内視鏡下副鼻腔手術を報告したのが初めです。Mouretが腹部内視鏡下手術を行う2年も前のことで,その後,1990年代になってから多くの外科手術が内視鏡下の低侵襲手術になってきています。

 内視鏡下副鼻腔手術は,従来の裸眼での副鼻腔手術の概念を覆す画期的な変革であったことに異論はないと思います。一方,耳科手術には1950年代にいち早く顕微鏡が導入され発展してきたこともあり,内視鏡の導入は限定的でした。しかし,耳科手術用の内視鏡や周辺手術機器の開発によって,内視鏡下耳科手術もこの約10年間にあっという間に普及してきました。これがTEESと呼ばれる経外耳道的内視鏡下耳科手術です。今年,米国ボストンで第3回World Congress on Endoscopic Ear Surgeryが開催され,日本からも多くの耳科医が参加しました。2年後には欠畑誠治教授(山形大学)が会長となり,京都で第4回のWorld Congressが開催される予定となっています。TEESがさらに大きく開花する契機になることは間違いありません。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?