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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科91巻13号

2019年12月発行

雑誌目次

特集 舌がん・口腔がん治療の最前線〔特別付録web動画〕

ページ範囲:P.1093 - P.1093

《診断》

診断の進め方—新しいTNM分類では,何をどのように明らかにする必要があるのか

著者: 四宮弘隆 ,   丹生健一

ページ範囲:P.1094 - P.1097

POINT

●新たに加わったdepth of invasion(DOI)の概念を理解する。

●病期診断のために腫瘍の深達度を測る検査法がより重要となる。

●各検査の感度,特異度を念頭に置きながら検査を進める。

画像診断

著者: 馬場亮 ,   尾尻博也

ページ範囲:P.1098 - P.1102

POINT

●画像におけるdepth of invasion(DOI)の評価方法は定まってはいない。

●CTやMRIで計測されたDOIは病理学的DOIより大きい傾向にあり,画像上の計測から2〜3mmを差し引くことで病理学的DOIが推定される。

●茎突舌筋・舌骨舌筋浸潤のMRI所見があれば,病理学的DOIが4mm以上の可能性が高い。

●MRIで検出不能であれば病理学的DOIが4mm未満の可能性が高い。

超音波検査—腫瘍の厚みはどのくらい診断できるのか

著者: 古川まどか

ページ範囲:P.1104 - P.1109

POINT

●触診と同様の感覚で,口腔内で直接病巣部に探触子を当てて計測することが可能で,舌がん・口腔がんの厚みやDOIを測定するのに超音波診断は非常に有用である。

●舌可動部は,特殊な探触子は不要で,体表用リニア探触子を直接当てて計測できる。

●頰粘膜,歯肉の頰側,口腔底なども,通常の体表用リニア探触子で皮膚側より観察,計測が可能である。

●口腔内の奥や狭い部位ではホッケースティック型探触子のほか,術中用マイクロコンベックス型探触子を用いて直接病変部を計測することで,正確な厚みやDOIを測定できる。

●Bモード画像のみでも詳細な計測が可能であるが,カラードプラやエラストグラフィを併用することで,より詳細な腫瘍の形状や性状を客観的に評価し記録できる。

《治療》

前癌病変の取り扱い—経過観察と切除をどのように判断するか

著者: 安里亮

ページ範囲:P.1110 - P.1115

POINT

●口腔前癌病変は白板症・紅板症である。

●紅板症は癌化率が高いため手術を行う。

●白板症の手術決定の判断には,主に生検が有用ではあるが,局所所見・患者背景などと併せて総合的に考える。

●経過観察は長期間行い,病変画像を残しておくことが重要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

原発巣の切除—低侵襲に,確実に切除するための戦略とは

著者: 向川卓志

ページ範囲:P.1116 - P.1120

POINT

●手術前に必ず切除ラインを設定し,それを完結させるためのシミュレーションを行う。

●無理なく完全切除ができ,かつ低侵襲である皮膚切開やアプローチ法を,症例に応じて適切に選択する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

頸部郭清—早期がんへの予防的頸部郭清は必要? 治療的郭清の範囲と方法は?

著者: 別府慎太郎 ,   花井信広

ページ範囲:P.1122 - P.1127

POINT

●N0早期癌に対する予防的郭清の必要性が検討されている。

●N1以上の場合の郭清範囲はレベルⅠ〜Ⅴが原則である。N1の場合,Ⅰ〜Ⅳも容認される。

●副神経温存の工夫として“no touch-3 triangles法”がある。

●静脈角の処理の工夫として“3 holes-2 bite法”がある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

舌の再建—嚥下機能を維持するための多彩な皮弁の使いこなし方

著者: 田中顕太郎

ページ範囲:P.1128 - P.1132

POINT

●舌切除の範囲により,再建手術のコンセプトが異なる。

●舌半側切除例では残存する舌機能を最大限に引き出すことをめざし,残舌の動きを妨げない再建をする。

●舌(亜)全摘出例では容量の大きい組織を移植し,隆起型の舌形態を再建する。

●舌喉頭全摘出例では,口腔内から食道にかけてスロープ状に落ちていく形態を再建する。

●吻合血管の確保が難しい症例では,大胸筋皮弁などの有茎皮弁で再建することを考慮する。

●再建に対する考え方を理解し,目的に適した皮弁が何かを症例ごとに検討する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

下顎骨の再建—咬合を含む再建の精度を上げる方法

著者: 橋川和信

ページ範囲:P.1134 - P.1138

POINT

●下顎骨区域切除が術後QOLに及ぼす影響は大きい。可能な限り骨欠損を即時再建することが望ましい。

●CAT分類は,本邦で考案された下顎骨区域切除後の欠損分類法である。単純明快で使いやすく,術後結果との相関性が高い。

●下顎骨の再建材料にはさまざまなものがある。いずれも長所と短所があるが,最も生理的な再建が可能なのは骨弁である。

●精度の高い下顎再建を行うのに,必ずしも特別な機器類は必要でない。多くの施設で利用可能な方法を適切に組み合わせることが重要である。

●下顎再建に際しては,腫瘍切除を担当する頭頸部外科だけではなく,歯科・口腔外科とも十分な連携をとることが大切である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

小線源療法—手技の実際はどのようなもの? 適応と治療成績は?

著者: 村上秀明

ページ範囲:P.1139 - P.1145

POINT

●小線源療法は口腔癌の根治的治療の1つで,早期舌癌での局所制御率は80〜90%である。

●低線量率組織内照射法は,侵襲が少ないものの,遮蔽病室が必須である。

●遠隔操作後装塡型の高線量率組織内照射法は,小手術が必要であるが,遮蔽病室の必要性や術者の被曝はない。

●表在性の腫瘍には,モールド法が有効である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

超選択的動注化学療法—手技の実際はどのようなもの? 最新の治療成績は?

著者: 小林徹郎 ,   松塚崇

ページ範囲:P.1146 - P.1150

POINT

●超選択的動注化学療法(動注)は,全身投与の際より高濃度の抗がん剤を直接がん組織に投与することで,より高い治療効果が期待されるが,その危険性も高くなる。

●当科では口腔癌に対し根治手術を主とした集学的治療を行っており,局所進行症例に対する局所再発予防を目的に1999年からシスプラチン(CDDP)動注を術前治療として行ってきた。

●動注はセルジンガー法で,1回あたり100〜125mg/bodyのCDDPを腫瘍縮小目的に舌動脈,局所再発予防目的に顔面動脈へ原則として3回投与している。

●当科では,口腔癌に対するCDDP動注は補助療法と位置付けており,術後合併症は非併用群と変わりがなく,術後の予後改善に寄与するため,術前治療として成立する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

口腔がんにおける化学放射線療法,術後補助療法,進行例・再発例の治療成績

著者: 山崎知子

ページ範囲:P.1151 - P.1154

POINT

●手術可能な口腔がんの標準療法は,根治切除(+再建)である。

●リンパ節節外浸潤,原発巣の切除断端陽性で,全身状態良好例には,補助化学放射線療法としてシスプラチン同時併用化学放射線療法を施行する。

●口腔がんにおける術前化学療法,および化学放射線療法の生存率への上乗せに関するエビデンスは乏しい。

●再発・遠隔転移を有する口腔がんに全身化学療法は有用である。

《支持療法》

嚥下障害への対応戦略—術前評価から誤嚥防止手術まで

著者: 古川竜也 ,   丹生健一

ページ範囲:P.1155 - P.1163

POINT

●口腔癌の術後嚥下障害の重症度は切除範囲によって大きく異なるため,解剖に応じた対応が必要になる。

●当科では手術前から言語聴覚士や認定看護師が介入するサポート体制をとっている。

●術中の嚥下機能改善手術,術後の嚥下リハビリテーションを重点的に実施している。

●嚥下内視鏡検査に加えて,嚥下造影検査,嚥下圧測定検査での嚥下評価を実施している。

●重症嚥下障害で肺炎予防や経口摂取獲得を希望する患者には,誤嚥防止術を実施している。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年12月)。

知っておきたい口腔ケア

著者: 百合草健圭志

ページ範囲:P.1164 - P.1168

POINT

●頭頸部がん患者の歯科連携は,治療開始前のスクリーニングとクリーニングから始まる。

●治療前から口腔ケア/歯科連携を行うことは,潜在的な歯性感染源に対応できる。

●治療中の口腔ケア/歯科連携は,患者の療養生活の質を維持する一助になる。

●頭頸部がん患者の口腔有害事象は,治療中だけでなく,治療後およびサバイバーになっても続くため,長期的な歯科的フォローアップが必要である。

知っておきたい歯科補綴

著者: 上野尚雄

ページ範囲:P.1170 - P.1174

POINT

●頭頸部がん治療における歯科の役割,歯科のスペシャリティとして,治療支援や口腔機能改善(咀嚼や嚥下,会話など)のためのさまざまな「モノづくり」(口腔内装置の作成)がある。

●歯科補綴装置により,がん治療によって損なわれた口腔機能の維持・改善のみならず,がん治療の安全性や質を担保し,治療の円滑な進行・完遂を支援することができる。

●頭頸部がん治療の歯科補綴は,歯科での保険適用もあり,普及・均てん化が期待される。

書評

内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術—CT読影と基本手技 第2版[手術動画・3DCT画像データDVD-ROM付]

著者: 戸田正博

ページ範囲:P.1133 - P.1133

 最近の時代背景として,医療の役割・機能分化が進み,より高度な専門的知識,技術が求められています。専門医,技術認定などの制度化も進み,若手医師は技術習得に目を向けがちですが,困難な手術の成功には,正確な診断(画像解析)と手術解剖の深い理解に基づく論理的思考が重要です。また,頭蓋底疾患は耳鼻咽喉科,形成外科,脳神経外科など複数の診療科が協力することにより,治療成績を大きく向上させてきた歴史があります。最近では,耳鼻咽喉科と脳神経外科の合同で行われる経鼻内視鏡頭蓋底手術は,画期的な低侵襲手術として,これまで到達不可能であった部位にもアプローチ可能となり,治療概念を大きく変えました。一昔前までは極めて治療困難であった疾患も,最近では合併症なく根治性の高い治療が行われるようになってきました。医療の役割・機能分化が進む中で,困難な疾患に対して,診療科の枠を越えて治療に取り組むチーム医療こそ,今後求められる医療の形ではないかと思っています。

 さて本書ですが,内視鏡下鼻内手術に関して「初心者でも行えるわかりやすいプランニングと安全かつシンプルな手術テクニック」を基本概念として作成されています。さらに応用編として,経鼻内視鏡頭蓋底手術に関しても同じ概念で解説されています。耳鼻咽喉科が基本習得する鼻・副鼻腔解剖および手術もわれわれ脳神経外科では特殊な分野で,これまで系統立って学ぶことができる手術書はなかったため,本書がとても良い指南書になっています。本書を読んで興味深いと思ったことは,それぞれ意図することは同じでも違った表現で記載されていることであり,何気ない気付きがあることです。手術を理解,習得していく過程は個々で異なり,それぞれの段階でこの教科書を開いて確認することにより新たな気付きがあり,深い理解へつながるのではないかと思います。

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目次

ページ範囲:P.1089 - P.1089

欧文目次

ページ範囲:P.1091 - P.1091

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1176 - P.1176

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.1180 - P.1180

 台風19号が広範な地域に想定外の大規模災害をもたらしました。被害に遭われました読者の皆様・ご家族に心よりお見舞い申し上げます。このような状況下,開催に賛否がありましたが,ラグビー・ワールドカップ・プール戦最終試合では,強豪スコットランド相手に日本代表は大健闘。悲願の8強進出を果たしました。残念ながら準々決勝では優勝した南アフリカに敗れましたが,相手が強すぎただけ。「品位」「情熱」「結束」「規律」「尊重」というラグビーの価値観を共有し,さまざまな国の出身者が「日の丸」を背負って「One Team」として闘う姿は,少子高齢化に悩むわが国の将来に大きな希望を与えてくれたように思います。

 さて,今月の特集は「舌がん・口腔がん治療の最前線」です。昨年,頭頸部がん取扱い規約が改訂されて,舌がん・口腔がんのTNM分類に新たに「浸潤の深さ (depth of invasion:DOI)」が取り入れられ,DOIを念頭に置いた診断や治療が求められるようになりました。そこで,本特集では,MRIや超音波などの画像診断から,原発巣の切除や頸部郭清,舌や下顎の再建などの外科的治療,小線源療法や(化学)放射線療法,超選択的動注化学療法や導入化学療法などの薬物療法,嚥下障害への対応や口腔ケア,補綴などの支持療法まで,舌がん・口腔がんの診療について最新の情報をエキスパートの皆様に解説していただきました。日常,頭頸部がんを取り扱っている頭頸部がん専門医は勿論のこと,耳鼻咽喉科一般診療に携わっている耳鼻咽喉科専門医や専攻医の皆様にも是非ご一読いただきたいと思います。

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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