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原著
眼球理学療法が有効であった複視・動揺視を伴う両側内側縦束症候群の1例
著者: 三枝英人1 門園修1 前田恭世1 田邉愛弓1 山本圭介1 伊藤裕之1 山本昌彦1
所属機関: 1東京女子医科大学八千代医療センター耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.251 - P.256
文献購入ページに移動橋や中脳などの上位脳幹の背側には眼球運動に関与する神経核と運動中枢,それらを連絡する神経路が複数密集して存在する。このため,同部の障害により異常眼球運動や外眼筋麻痺を呈し,難治性のめまいやふらつきとともに動揺視,複視などの症状が発症しうる。
複視については,一部の患者においてプリズム矯正や,麻痺側と拮抗する外眼筋へのボトックス注射などの治療法1)が有効な場合があるものの,異常眼球運動を伴う動揺視がある場合や,左右の眼位が異なるなどの場合には,総じて治療困難であることが多い。動揺視が強いために,最終的には片眼を遮蔽するしか対処方法のないこともある。これに対して川平ら2-4)は,前庭眼反射と随意注視に伴う眼球運動とを同時に誘発させ,これを反復することで外眼筋麻痺を改善させる,「迷路性眼球反射促通法」と称する眼球理学療法の有効性を報告している。
今回,われわれは橋出血後に発症した両側内側縦束症候群(medial longitudinal fasciculus syndrome:以下,MLF症候群)を伴う重度の動揺視,複視のため,両眼を開眼した状態でいることが難しく,慢性期に至っても座位保持さえ困難であった患者に対して,「迷路性眼球反射促通法」を応用した眼球理学療法を行ったところ,両眼開眼,座位保持が可能となり,テレビを見る,簡単な文字が読めるなどのQOLの改善が得られたので,報告する。
なお,図中の写真の撮影と本報告への掲載については,本人および家族の同意を得てある。
参考文献
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