文献詳細
文献概要
原著
キチン膜を用いた鼓膜穿孔閉鎖術の検討
著者: 羽馬宏一1
所属機関: 1熊本市立熊本市民病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.263 - P.267
文献購入ページに移動はじめに
鼓膜穿孔閉鎖術は,耳周囲に皮膚切開を必要とする鼓室・鼓膜形成術と比べ,慢性鼓膜穿孔に対する低侵襲で安価な治療である。その有用性は高く,近年では自己血清1-3),濃厚血小板血漿4),basic fibroblast growth factor(bFGF)製剤5-7)を使用する方法などのさまざまな報告が散見されるが,治療の特殊性から市中病院での導入はやや困難と思われる。これらに対してキチン膜はきわめて安価であるが,これまでの報告では,これを単独で用いた方法は鼓膜閉鎖率が低いと認識されている2,8,9)。本方法を特殊な製剤を用いずに行ったため,その結果について報告する。
鼓膜穿孔閉鎖術は,耳周囲に皮膚切開を必要とする鼓室・鼓膜形成術と比べ,慢性鼓膜穿孔に対する低侵襲で安価な治療である。その有用性は高く,近年では自己血清1-3),濃厚血小板血漿4),basic fibroblast growth factor(bFGF)製剤5-7)を使用する方法などのさまざまな報告が散見されるが,治療の特殊性から市中病院での導入はやや困難と思われる。これらに対してキチン膜はきわめて安価であるが,これまでの報告では,これを単独で用いた方法は鼓膜閉鎖率が低いと認識されている2,8,9)。本方法を特殊な製剤を用いずに行ったため,その結果について報告する。
参考文献
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