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文献概要
原著
当科における顔面神経減荷術後の聴力損失の検討
著者: 松見文晶1 清水雅子1
所属機関: 1公益財団法人星総合病院耳鼻いんこう科
ページ範囲:P.277 - P.282
文献購入ページに移動はじめに
顔面神経減荷術は重症のBell麻痺やHunt症候群,外傷性顔面神経麻痺などで考慮される治療法である。本邦の『顔面神経麻痺診療の手引 2011年版』では,顔面神経減荷術は推奨度Grade C1であり1),海外のBell麻痺のガイドラインでも質の高いエビデンスに欠けることから推奨しないとされている2)。治療の特性上,質の高いエビデンスを構築するのは容易でなく,これらの意見をもって減荷術自体が即否定されるものではないと考えるが,元来聴力正常者に施行することも多く,麻痺の改善効果も確実とは断言できないため,聴力損失をはじめとする後遺症を最低限にする努力が求められる。
当科で施行した顔面神経減荷術例に対し,術前・術後の聴力変化について検討を行ったので報告する。
顔面神経減荷術は重症のBell麻痺やHunt症候群,外傷性顔面神経麻痺などで考慮される治療法である。本邦の『顔面神経麻痺診療の手引 2011年版』では,顔面神経減荷術は推奨度Grade C1であり1),海外のBell麻痺のガイドラインでも質の高いエビデンスに欠けることから推奨しないとされている2)。治療の特性上,質の高いエビデンスを構築するのは容易でなく,これらの意見をもって減荷術自体が即否定されるものではないと考えるが,元来聴力正常者に施行することも多く,麻痺の改善効果も確実とは断言できないため,聴力損失をはじめとする後遺症を最低限にする努力が求められる。
当科で施行した顔面神経減荷術例に対し,術前・術後の聴力変化について検討を行ったので報告する。
参考文献
1)竹田泰三:顔面神経減荷術.顔面神経麻痺診療の手引—Bell麻痺とHunt症候群 2011年版.日本顔面神経研究会(編),金原出版,東京,2011,pp75-77
2)Baugh RF, et al:Clinical practice guideline:Bell's Palsy executive summary. Otolaryngol Head Neck Surg 149:656-663, 2013
3)山本悦生・他:経乳突的顔面神経減荷術後の聴覚障害.耳鼻臨床78:1929-1934,1985
4)森 京子・他:顔面神経減荷術の聴力に対する影響.Facial Nerv Res 33:126-128,2013
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10)末田尚之・他:経乳突的顔面神経減荷術の術式変更に伴う術後難聴の評価.Facial Nerv Res 33:129-131,2013
11)上田祥久・他:顔面神経減荷術(経乳突法)の術後聴力—耳小骨連鎖再建における一工夫.Otol Jpn 24:635,2014
12)Pulec JL:Total facial nerve decompression:technique to avoid complications. Ear Nose Throat J 75:410-415, 1996
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