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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科91巻9号

2019年08月発行

雑誌目次

特集 内視鏡下鼻副鼻腔手術—エキスパートに学ぶスタンダードな手術手技(特別付録web動画)

ページ範囲:P.709 - P.709

手術支援機器の選択と使い方

著者: 中丸裕爾

ページ範囲:P.710 - P.714

POINT

●手術支援機器は手術時間短縮や内視鏡手術の適応疾患拡大に大きな役割を果たしているが,手術支援機器の登場にもかかわらず,重篤な合併症は減少していない。

●マイクロデブリッダーは吸引と切除ができる器具で,ポリープや病的粘膜切除に便利な器具である。しかし,眼窩内組織,硬膜なども迅速に切除されるため,使用法には十分な注意が必要である。

●ブレードの先を直視しながら切除する,ブレードの先端で切除する,できるだけブレードを回転させる時間を少なくする,などの基本事項を遵守する。

●近年,ドリルも回転数の高い機種が開発され手術時間の短縮に寄与しているが,その分,間違った部位を削ると合併症も重大化する。

●削開している部位を視野に入れながら操作できるよう内視鏡とドリルの位置を調節すること,バーの赤道付近で削開すること,可能な限り弱い力でバーを骨に当てることなどが注意点である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

内視鏡下の術野マネジメント—出血を減らし,オリエンテーションを適切にするためのコツ

著者: 大櫛哲史

ページ範囲:P.716 - P.723

POINT

●出血コントロールを中心とした内視鏡下での術野マネジメントについて述べる。

●内視鏡下鼻副鼻腔手術の際の浸潤麻酔では,傍骨膜麻酔が有効であることが多いと考えている。

●浸潤麻酔は数回に分割し,その部位を手術する際に一番効果が高いよう手術プランニングに沿って計算して行う。

●鼻堤部や第三基板底部の浸潤麻酔についてのポイントも述べる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

篩骨洞手術—基板の開放,篩骨蜂巣の完全な除去

著者: 吉川衛

ページ範囲:P.724 - P.728

POINT

●篩骨洞は,眼窩や頭蓋が隣接し,迷路のような構造をしているため,画像検査により解剖学的な特徴を必ず術前に確認しておく。

●解剖学的な安全領域と危険領域を認識しながら手術操作を行う。

●病的粘膜は鉗除するが,粘骨膜は残して骨を露出しないよう丁寧に手術操作を行う。

●病態の再燃を予防するためには,篩骨蜂巣を完全に除去し,篩骨洞を単一の空洞にする単洞化が必要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

上顎洞手術—ESSとEMMMによる上顎洞へのアプローチ

著者: 前田陽平 ,   端山昌樹

ページ範囲:P.729 - P.732

POINT

●CT読影が重要である。

●上顎洞開放には鉤状突起の切除が重要である。

●endoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)では,鼻涙管と下鼻甲介をしっかりスウィングすることが良好な視野につながる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

前頭洞手術—前頭洞へのアプローチと洞内病変の除去,単洞化手術

著者: 田中秀峰

ページ範囲:P.733 - P.736

POINT

●前頭洞排泄路と前頭陥凹の解剖を立体的に理解する。

●鈎状突起の切除をクリアカットに行い,鼻堤蜂巣を確認する。

●前篩骨動脈の位置を確認する。

●前頭洞単洞化では,嗅裂粘膜を前方から骨膜下に剝離し,嗅糸を確認する。

●frontal beakの骨は外側まで削除する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

蝶形骨洞手術—蝶形骨洞へのアプローチと洞内病変の除去

著者: 都築建三

ページ範囲:P.737 - P.745

POINT

●術前の画像検査で,病変の進展範囲,骨破壊の有無,Onodi蜂巣の有無,視神経・内頸動脈の位置を確認する。

●蝶形骨洞の開放は,嗅裂部からの自然口経由と後部篩骨洞経由で行う。

●自然口と篩骨洞の両方向から蝶形骨洞を大きく開放したのちに病変を除去する。下外側壁の操作では,蝶口蓋動脈の分枝である中隔後鼻枝に注意する。

●好酸球性副鼻腔炎では,蝶形骨洞を含めて汎副鼻腔を広く開放する(Ⅳ型)。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

嗅裂病変の処置と術後ケア

著者: 森恵莉

ページ範囲:P.746 - P.753

POINT

●嗅覚障害に対する内視鏡下鼻副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)は有効であるが,嗅裂に注目した処置方法については確立していない。

●嗅裂病変の処置のゴールは「確定診断」と「よりよい嗅覚改善」である。

●ヒト嗅上皮の分布領域が解明されていないため,病変をどこまで切除してよいのか,どのような処置法がベストなのかはまだ不明である。過剰切除は医原性嗅覚障害のリスクとなる。

●嗅裂病変処置のポイントは,①篩骨洞内の蜂巣と基板を十分に処理してスペースを確保してから処置すること,②粘膜flattering予防をすること,③先に嗅裂下部の処置を行ってから最後に嗅裂上部の処置を行うこと,④内視鏡の手元を少し下げて中鼻甲介の付け根から嗅裂上部を捉えること,⑤仕上げは截除鉗子を用いて粘膜損傷や骨露出を予防すること,⑥癒着予防のステロイドを使用することである。

●気導性嗅覚障害のみであれば軽快しやすいが,なかには神経性もしくは中枢性嗅覚障害が含まれ,改善しない場合がある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

内視鏡下鼻中隔手術—Killian法とhemitransfixion法

著者: 飯村慈朗

ページ範囲:P.754 - P.759

POINT

●Killian法での鼻中隔矯正術では,前彎や上彎,外鼻の矯正は困難である。

●鼻中隔矯正術による外鼻変形を起こさないためには,L-strutやkeystone areaの温存が重要である。

●前彎の矯正が必要かどうかは,鼻内所見から,Killian切開部より前方の彎曲が残存しても問題がないかを視診・触診で判断する。

●前彎の高度彎曲・脱臼症例に対するhemitransfixion法では,前鼻棘から軟骨を離断し,軟骨の長さ・高さ調節をする。

●残すべき軟骨が彎曲している症例や脆弱(亀裂が入っている場合など)な症例には,batten graftを当て補強・直線化する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

下鼻甲介手術+後鼻神経切断術

著者: 髙田真紗美 ,   朝子幹也

ページ範囲:P.760 - P.764

POINT

●下鼻甲介手術+後鼻神経切断術の術式は時代とともに変容し,現在でも下鼻甲介,後鼻神経の扱いは施設によってさまざまである。

●粘膜下下鼻甲介骨切除術では,粘膜表面の生理的防御機能を温存し,鼻腔形態を改善することが可能である。

●粘膜下下鼻甲介骨切除術と同一視野で後鼻神経末梢枝を同定し,選択的に切断する選択的後鼻神経切断術は,鼻漏を改善でき合併症の少ない手術である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

副鼻腔囊胞の手術—囊胞へのアプローチ,閉鎖しないためのコツ

著者: 横井秀格

ページ範囲:P.766 - P.772

POINT

●閉鎖しないためのコツとして,まず確実かつ可及的に大きく囊胞壁を開放する。

●症例によっては,ナビゲーションシステムを用いることが有用である。

●術後の経過観察は重要であり,長期通院させて経過観察する。

●開放壁周囲の骨の露出を防ぐためにflapを作成することも有用である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

良性腫瘍の手術—乳頭腫を中心に

著者: 御厨剛史

ページ範囲:P.774 - P.779

POINT

●術前診断(進展範囲,基部の位置)の精度を向上させる。

●明瞭な視野を得るために出血を最小限に抑える工夫を行う。

●en blocに摘出するプランニングと操作を行うことが,内視鏡下腫瘍手術の技術向上に役立つ。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

副損傷の回避と起きてしまった場合の対応

著者: 柳清

ページ範囲:P.780 - P.784

POINT

●内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)の際の副損傷として血管,眼窩,頭蓋の損傷がある。

●副損傷をゼロにはできないが,起こさないための回避方法と,起きたときの対応について解説する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月)。

原著

ポリグリコール酸(PGA)シートを使用した鼓膜形成術の治療経験

著者: 木下慎吾 ,   西嶌渡

ページ範囲:P.785 - P.790

はじめに

 ポリグリコール酸(PGA)は,吸収性縫合糸をはじめとして医療分野で幅広く使用され,安全性が高い1)。シート状の吸収性縫合部補強材として開発されたものが,PGAシートである2)

 山中ら3,4)は,PGAシートを使用した鼓膜形成術は有効であると報告した。これらの報告に基づき,当院でも2017年4月からPGAシートを使用した鼓膜形成術を開始した。湯浅ら5)が報告した接着法に基づき,移植片の固定の際にPGAシート使用している。

 これまで当院は,移植片の固定にはフィブリン糊を使用するか,フィブリン糊を使用しない場合は鼓室内にゼルフォーム®を充塡し,土台を作って対応していた。フィブリン糊は献血から得られた血液製剤であるため,感染のリスクの説明と承諾書も必要である。鼓室内にゼルフォーム®を充塡する方法では,土台としてやや弱く,移植片が落ち込むことが多かった。PGAシートを使用する方法は承諾書も不要であり,鼓室内に脱落することもなく,支持材料として有用であると考えられたので報告する。

涙囊鼻腔吻合術鼻内法(E-DCR)を施行した涙囊結石の1例

著者: 羽成敬広 ,   西田直哉 ,   羽藤直人

ページ範囲:P.791 - P.794

はじめに

 涙石症は涙道閉塞の原因の1つであり,涙小管・総涙小管・涙囊・鼻涙管のいずれの部位にも認められる。その形成メカニズムはいまだ不明な点が多いが,50歳以下の女性,喫煙者に多く,涙囊から鼻涙管の涙石症では真菌感染が多いとされる。今回われわれは,涙囊結石再発症例に対して涙囊鼻腔吻合術鼻内法(endonasal dacryocystrhinostomy:E-DCR)を施行した1例を,若干の文献的考察を加えて報告する。

書評

頭頸部のCT・MRI 第3版

著者: 本間明宏

ページ範囲:P.773 - P.773

 本書は,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の「画像診断」はもちろん,「解剖」,「機能」,「疾患概念」などの豊富な内容を網羅した良書である。基本的なことから,診療に必要な専門的なことまで詳細に書かれており,医学生,初期研修医,そして専門医を目指す後期研修医,すでにベテランの域に達した専門医,つまり,耳鼻咽喉科・頭頸部外科に関わるすべての者に役に立つ本である。初版は2002年に本邦における頭頸部画像診断に関する最初の本格的な教科書として発行された。第2版は7年前の2012年に発行され,非常にわかりやすく充実した内容だったが,第3版はカラーになり,さらに内容もグレードアップしている。

 編者の尾尻博也教授(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)と酒井修教授(ボストン大学医学部放射線科)は,誰もが知る頭頸部画像診断が専門の放射線診断医である。尾尻教授は,個人的にも親しくさせていただいているが,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の解剖・疾患について驚くほど精通しており,「画像のみの情報で診断し,臨床医がほしい情報を提供するためには解剖や疾患についても深い理解が必要」という氏の誠実な姿勢が,この本に結実している。また,執筆者も日本の耳鼻咽喉科・頭頸部外科の画像診断では広く知られた放射線診断医ばかりであり,執筆者一覧を見ただけでも内容の濃い本であることが想像されるが,実際そのとおりの仕上がりとなっている。

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目次

ページ範囲:P.705 - P.705

欧文目次

ページ範囲:P.707 - P.707

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.796 - P.796

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.800 - P.800

 盛暑の候,皆様いかがお過ごしでしょうか? 今月号の特集は「内視鏡下鼻副鼻腔手術—エキスパートに学ぶスタンダードな手術手技」です。私が編集委員を仰せつかって早2年,いつかはESSに関する企画を,できれば動画付きで…と考えておりました。満を持しての発刊です。お忙しいなかご執筆頂いた先生方には御礼申し上げます。この4月でピリオドを打った「平成」は内視鏡手術の時代であったと思います。平成元年卒の私が最初に目にしたESSは,ブラウン管テレビと大きなCCDカメラで行われていました。間もなくしてCCDカメラがコンパクトになり,内視鏡も鮮明で明るくなり,特にこの10年はハイビジョンカメラから3Dや4Kへと画質も飛躍的に向上しました。それに並行して手術ナビゲーションやさまざまな手術器具,さらにはロボットも開発され,内視鏡手術は患者さんにとってどんどん低侵襲で安全なものになってきました。

 ESSの適応は,炎症から良性腫瘍,また最近では頭蓋底疾患や悪性腫瘍に広がっています。いずれはESSにロボットや遠隔手術が導入されるのでしょう。これからもさらに発展していくと期待できます。しかし一方で,ESSには眼窩損傷や頭蓋損傷といった重篤な手術時副損傷のリスクがつきまといます。ヒヤリ・ハット症例も含めれば,本邦における副損傷の発生頻度は看過できない状況にあると考えています。ESSの術者には,徹底的な病変の除去による疾患の治癒,および副損傷を避ける安全な手術操作,の2つが求められます。これらは,ともすれば相反する事柄にもなりますが,両立させなければなりません。そのためのキーワードは,「スタンダード」だと思います。スタンダードな術式を習得してはじめてアドバンスがあります。平成から令和に時代が移っても,スタンダードの重要性は不変です。本特集がより根治的かつ安全なESS実践の手助けとなれば幸いです。また本号には2本の原著論文も掲載されています。いずれも興味深い内容です。ぜひご一読いただければと思います。それでは,時節柄どうぞご自愛くださいませ。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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