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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科91巻9号

2019年08月発行

原著

ポリグリコール酸(PGA)シートを使用した鼓膜形成術の治療経験

著者: 木下慎吾1 西嶌渡1

所属機関: 1上尾中央総合病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.785 - P.790

文献概要

はじめに

 ポリグリコール酸(PGA)は,吸収性縫合糸をはじめとして医療分野で幅広く使用され,安全性が高い1)。シート状の吸収性縫合部補強材として開発されたものが,PGAシートである2)

 山中ら3,4)は,PGAシートを使用した鼓膜形成術は有効であると報告した。これらの報告に基づき,当院でも2017年4月からPGAシートを使用した鼓膜形成術を開始した。湯浅ら5)が報告した接着法に基づき,移植片の固定の際にPGAシート使用している。

 これまで当院は,移植片の固定にはフィブリン糊を使用するか,フィブリン糊を使用しない場合は鼓室内にゼルフォーム®を充塡し,土台を作って対応していた。フィブリン糊は献血から得られた血液製剤であるため,感染のリスクの説明と承諾書も必要である。鼓室内にゼルフォーム®を充塡する方法では,土台としてやや弱く,移植片が落ち込むことが多かった。PGAシートを使用する方法は承諾書も不要であり,鼓室内に脱落することもなく,支持材料として有用であると考えられたので報告する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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