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原著
フレイルを合併した難治性めまい患者におけるめまいリハビリテーションと漢方併用療法の効果
著者: 新井基洋1
所属機関: 1横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科
ページ範囲:P.89 - P.98
文献購入ページに移動はじめに
めまい患者は精神的不安を認め1,2),自宅安静となり,サルコペニアを合併するなど難治化することがある3)。最近はサルコペニアを中核症状にもつフレイルという概念が注目されている。これは,要介護の手前の虚弱状態を表す症候群で,①体重減少,②疲労感,③歩行速度低下,④活動性低下,⑤筋力低下の5症状(以下,5症状)のうち3症状以上を有する場合にフレイルと診断4)する。
そこで今回,慢性難治性めまい(以下,難治性めまい)患者のフレイル合併率が高値であることを明らかにし,難治性めまいの治療にフレイル治療も併せて行う必要性について検討した。最近の研究5〜7)から,漢方薬の人参養栄湯はフレイルやサルコペニアにも効果が期待されている。これをめまいリハビリテーション(以下,めまいリハ)と併用し,患者を(イ)フレイルと非フレイル,(ロ)65歳未満と65歳以上で分けて比較した後ろ向き研究(横浜市立みなと赤十字病院医療倫理委員会 承認番号2017-33)の結果を報告する。
めまい患者は精神的不安を認め1,2),自宅安静となり,サルコペニアを合併するなど難治化することがある3)。最近はサルコペニアを中核症状にもつフレイルという概念が注目されている。これは,要介護の手前の虚弱状態を表す症候群で,①体重減少,②疲労感,③歩行速度低下,④活動性低下,⑤筋力低下の5症状(以下,5症状)のうち3症状以上を有する場合にフレイルと診断4)する。
そこで今回,慢性難治性めまい(以下,難治性めまい)患者のフレイル合併率が高値であることを明らかにし,難治性めまいの治療にフレイル治療も併せて行う必要性について検討した。最近の研究5〜7)から,漢方薬の人参養栄湯はフレイルやサルコペニアにも効果が期待されている。これをめまいリハビリテーション(以下,めまいリハ)と併用し,患者を(イ)フレイルと非フレイル,(ロ)65歳未満と65歳以上で分けて比較した後ろ向き研究(横浜市立みなと赤十字病院医療倫理委員会 承認番号2017-33)の結果を報告する。
参考文献
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