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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科92巻11号

2020年10月発行

雑誌目次

特集 Voiceを診る—音声障害を知ろう!〔特別付録Web動画〕

ページ範囲:P.867 - P.867

《総論》

音声障害とは何か—定義・分類・疫学について

著者: 梅野博仁

ページ範囲:P.868 - P.872

POINT

●音声障害とは,音質,声の高さ,声の大きさ,発声努力などの変化により,コミュニケーションを損なう,あるいは声のQOLが低下することである。

●「音声障害診療ガイドライン2018年版」による音声障害分類表の大分類では,音声障害をきたす基礎疾患をもとに9つに分類された。

●ガイドライン分類は,喉頭所見をもとにした,器質性音声障害と機能性音声障害の分類ではない。

●音声障害は,年齢・性別,社会生活習慣,飲酒・喫煙歴,種々の既往症などが影響し,職業では教師に多い。

●音声障害の治療目的で受診する患者の原因疾患は,声帯麻痺,声帯ポリープ,声帯結節,声帯溝症などが多い。

空気力学的検査とその評価・診断

著者: 印藤加奈子

ページ範囲:P.873 - P.877

POINT

●空気力学的検査は,発声持続時間,発声時呼気流率,声の高さと強さをおのおの,もしくは同時に測定することで,発声動態を総合的に評価できる。

●空気力学的検査は,性別や年齢,測定条件や呼気能力によって差が認められ解釈に注意を要するが,疾患の経過や音声治療による変化を客観的に示すことができ有用である。

音響分析とその評価・診断

著者: 上羽瑠美

ページ範囲:P.878 - P.884

POINT

●声の質の評価方法には,聴覚に基づく主観的な評価方法と,音響分析により音質の異常を客観的および数量的に評価する方法がある。

●音響分析は,音声信号を解析して音声障害の定量的評価を行い,嗄声の程度などを数値化して示すことができるため,音声障害の病態や治療効果判定に有用な客観的評価法である。

●音響分析では,音声信号のさまざまな要素について解析ソフトウェアで分析し,各種音響パラメータを数値やパターンとして表示することができる。

《音声障害の診断・治療・リハビリテーション》

声帯ポリープ,ポリープ様声帯

著者: 平野滋

ページ範囲:P.885 - P.889

POINT

●声帯ポリープは声帯膜様部にできる良性隆起性病変であり,通常は血腫として発生する。声の濫用・誤用が成因であり,その形状は有茎性から広基性までさまざまで,色調も赤色調から白色調まで多彩である。病理学的には炎症性変化,肉芽形成,浮腫などが混在している。

●ポリープ様声帯は声帯全長が浮腫をきたして腫脹するもので,ラインケ浮腫とも呼ばれる。喫煙による慢性炎症が一番の成因で,内容物は水様性から器質性までさまざまである。

●いずれの疾患もラリンゴマイクロサージャリーによる病変切除が根本治療である。声帯ポリープにおいては,マイクロフラップ法を用いてポリープ内容物を除去し,上皮,粘膜固有層浅層の組織は極力温存することが望まれる。ポリープ様声帯では声帯全長に近い上皮切開が必要とされることが多いが,マイクロフラップ法により内容物を除去し粘膜を整える。いずれにしても健常組織を極力温存することが術後瘢痕の回避と粘膜再生に重要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月)。

声帯結節,声帯囊胞

著者: 楠山敏行

ページ範囲:P.890 - P.895

POINT

●音声障害をきたす疾患のうち声帯結節および声帯囊胞について概説した。

●声帯結節の治療法の選択においては病悩期間の問診が重要である。

●声帯囊胞の症例における注目すべきポイントとしては,声の職業性,音声酷使の有無,組織型による臨床像の相違が挙げられる。

●音声障害では患者の希望を重視し,合併症に留意し,声帯病変が症状に反映されているかを正確に把握したうえで治療に臨むことが肝要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月)。

腫瘍性病変による音声障害

著者: 岩元翔吾 ,   岩田義弘 ,   楯谷一郎

ページ範囲:P.896 - P.900

POINT

●音声障害を訴える患者の腫瘍性病変の診断には,喉頭内視鏡検査と喉頭ストロボスコープが有用である。

●画像強調技術により,通常光で認識できない微細な病変も診断が可能となった。

●喉頭ストロボスコープは微細な癌病変を疑うときに有用である。

●喉頭早期癌,喉頭白板症の治療に際しては,治療後の音声機能を念頭に置きつつ治療方針を決定する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月)。

痙攣性発声障害

著者: 讃岐徹治

ページ範囲:P.901 - P.906

POINT

●痙攣性発声障害の診断基準および重症度分類について解説する。

●本邦で実施可能な治療,主にA型ボツリヌス毒素の声帯内注入術,甲状披裂筋切除術と甲状軟骨形成術2型を解説する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月)。

機能性発声障害

著者: 小川真

ページ範囲:P.908 - P.914

POINT

●機能性発声(音声)障害は,「音声に異常を認めるにもかかわらず,声帯に原因となる器質的異常を認めないもの」と定義される。

●機能性発声障害の診断・評価においては,声帯粘膜の病変探しよりもむしろ,声帯内転の程度,声門形状,嗄声の特徴,病因としての先行エピソードに注目する必要がある。

●本稿では,機能性発声障害に関して,特に病態・発声時喉頭所見・病因との間の関連性に重点を置いて解説する。

●機能性発声障害の治療については,声の衛生指導とカウンセリングでの注意点・限界について,また音声訓練手技であるハミングを用いて呼気努力を調節する種々の訓練法の作用機序と具体的な使用方法について解説する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月)。

声帯麻痺

著者: 片田彰博

ページ範囲:P.916 - P.921

POINT

●喉頭内視鏡検査では音声付きの動画を記録するように心がける。

●声帯麻痺の原因を検索し,頸胸部の器質的疾患を見逃さないようにする。

●客観的な指標で音声障害の評価を行う。

●音声障害の程度や特徴に応じて,適切な治療法を選択する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月)。

加齢性の音声障害

著者: 齋藤康一郎

ページ範囲:P.922 - P.927

POINT

●加齢に伴う音声障害は,患者のQOLや精神衛生状態を悪化させて社会活動性を下げる。

●声の変化は患者によりさまざまである。

●ノドだけでなく全身を診る。

●問診と喉頭ストロボスコピーを併用し,別の疾患を除外して診断する。

●治療の有効性を知り,低侵襲な治療から積極的に介入する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年10月)。

Review Article

新型コロナウイルス感染症と嗅覚障害

著者: 三輪高喜

ページ範囲:P.928 - P.936

Summary

●明らかな原因なく急性に発症した嗅覚障害,味覚障害では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を疑う。

●COVID-19による嗅覚障害は脱失または高度であるが,多くは速やかに改善する。

●嗅覚障害の発生機序として,嗅粘膜の支持細胞への感染が示唆される。

●with corona,after coronaの時代に向けて耳鼻咽喉科診療の変化と対応が求められる。

原著

外切開・下咽頭部分切除術に内視鏡手術を併用した下咽頭癌の1例

著者: 吉田重和 ,   佐藤宏樹 ,   岡本伊作 ,   勝部泰彰 ,   冨岡亮太 ,   清水顕 ,   塚原清彰

ページ範囲:P.937 - P.942

はじめに

 下咽頭癌に対する喉頭温存手術として,外切開による下咽頭部分切除術や,endoscopic laryngopharyngeal surgery(ELPS)などの経口的切除が行われている。外切開・下咽頭部分切除術は,腫瘍深部の切除を行うことができるが,切除の際に咽頭外から咽頭腔に進入するため,詳細な切除ラインを設定することが困難な場合がある。一方でELPSなどの経口的内視鏡手術は,narrow band imaging(NBI)などの画像強調内視鏡や拡大内視鏡を用いて,腫瘍の粘膜面の詳細な切除ラインを決定することができるが,深部浸潤のある腫瘍の切除への適応は限られる。今回われわれは,下咽頭癌放射線治療後局所再発の救済手術として外切開による下咽頭部分切除術にELPSを併用した1例を経験したので報告する。

上顎洞に発生したspindle cell sarcomaを手術治療した1例

著者: 伊藤達哉 ,   岡本伊作 ,   塚原清彰 ,   佐藤宏樹 ,   岡田拓朗

ページ範囲:P.943 - P.947

はじめに

 頭頸部領域で肉腫は非常な稀な疾患である。上顎悪性腫瘍のうち,非上皮性のものは10%程度であり,頭頸部が原発である肉腫は成人の肉腫のなかで約5〜15%である1)。肉腫は治療プロトコールが確立しておらず,横紋筋肉腫などの一部の組織型を除き,化学療法・放射線療法は感受性が悪いため,外科的切除が治療の基本となる。しかし,頭頸部領域では広範な一塊切除は困難なことが多く,頭蓋底浸潤により切除が不可能である場合も少なくないため,慎重に治療方針を検討する必要がある。今回われわれは,上顎洞に発生したspindle cell sarcomaの症例を経験したので報告する。

一側の咀嚼筋に発症した限局性筋炎症例

著者: 戸田光紀 ,   武田純治

ページ範囲:P.949 - P.952

はじめに

 炎症性筋疾患では多発性筋炎や皮膚筋炎が代表的であるが,特殊なものとして限局性筋炎がある。限局性筋炎は,身体の一側の骨格筋に限局的な腫脹と疼痛を示す筋の特発性炎症性疾患で,下肢に限局的な疼痛や腫脹を示すことが多く,頭頸部での発症は稀とされている。今回われわれは,一側の咀嚼筋に発生した限局性筋炎の症例を経験したので報告する。

書評

Dr. セザキング直伝! 最強の医学英語学習メソッド[Web動画付]

著者: 押味貴之

ページ範囲:P.948 - P.948

 英語の対策本は数多くあり,その中には本書のように「最強」をうたっているものも少なくない。そのため「最強」といううたい文句に眉をひそめる方も多いことだろう。しかし本書は「最強」の英語強者によってではなく,「最弱」の英語弱者であった著者によって丁寧に書かれた医学英語学習の解説本である。そしてその丁寧さのレベルはこれまでに出版された医学英語関連の書籍では間違いなく「最強」といえる。

 著者は医師として働きながら米国医師国家試験(USMLE)のコンサルタントとしてこれまでに1000人以上の医学生・医師の指導に従事し,数多くのUSMLE合格者を生み出してきたUSMLE受験対策の専門家である。こう聞くと「最強」の英語強者を想像すると思うが,著者は学生時代,英語が「トラウマレベルで苦手」な英語弱者であった。本書はそんな「最弱」であった著者が,USMLEの試験を高得点で合格するまでの体験とあまたの指導経験から得られた医学英語学習方法を,文字通り「最強」レベルで丁寧に解説している。

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目次

ページ範囲:P.863 - P.863

欧文目次

ページ範囲:P.865 - P.865

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.954 - P.954

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.958 - P.958

 令和2年の第121回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会は10月6〜7日に岡山市で,西﨑和則名誉教授(岡山大学)主催のもと開催することになっています。従来,5月13〜16日に開催を予定していましたが,新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大で他の学会や集会が軒並み中止,延期となる状況のため,約半年の延期となり,さらに岡山市での現地開催とWEB開催のハイブリッド形式で実施することになりました。

 明治25年にドイツより帰朝した金杉英五郎が「東京耳鼻咽喉科会」を結成し,これが日本耳鼻咽喉科学会の創立とされています。その後は毎年,総会・学術講演会が開催されていました。第二次世界大戦中には,昭和15年第44回宿題報告「支那事変に於ける耳鼻咽喉科領域並に一般顔面戦傷に就て」(陸軍軍医学校 齋藤勤)や,昭和17年第46回宿題報告「航空医学特に航空と耳鼻咽喉」(海軍軍医学校 吉田太助)の講演があったように,学会も当時の世相を反映するものでした。昭和20年,21年は第二次世界大戦末期および終戦直後という状況で初めて総会・学術講演会の開催が中止されました。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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