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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科92巻12号

2020年11月発行

雑誌目次

特集 漢方医学入門—耳鼻咽喉科で漢方薬を使いこなす

ページ範囲:P.963 - P.963

耳鼻咽喉科日常診療における漢方治療

著者: 白井明子 ,   小川恵子

ページ範囲:P.964 - P.970

Point

●漢方治療においては四診(望診・聞診・問診・切診)が重要である。

●脈診・舌診・腹診により,適切な方剤選択が可能となる。

●所見を理解するうえで,陰陽・表裏・虚実・寒熱・気血水・五臓が重要な基本概念となる。

●腹診は方剤選択に直結する利点があるため,表1の関連動画も参考に実施を勧めたい。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月)。

漢方薬のエビデンス構築

著者: 小川郁

ページ範囲:P.972 - P.975

Point

●evidence-based medicine(EBM)が重視される現在,漢方薬のエビデンス研究が喫緊の課題となっている。

●「漢方治療エビデンスレポート」はバージョンアップが繰り返されており,質の高いランダム化比較試験が報告されはじめていることがわかる。また「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン」の発表により,漢方薬の記載を含む質の高い診療ガイドラインは増えてきているものの,まだ少ないことがわかる。

●今後,可能な範囲で漢方薬の再評価を行うこと,またエビデンスにも立脚した漢方診療ガイドラインを制定することが望まれる。

ビギナーのための漢方薬の選び方と使い方—富山大学耳鼻咽喉科における処方の経験

著者: 阿部秀晴 ,   將積日出夫

ページ範囲:P.976 - P.979

Point

●西洋医学的対応で不十分な場合に漢方薬を併用する。

●証の認識に自信がもてない場合には,耳鼻咽喉科領域の病名・症状を基準にし,捉えた証を加味して処方してみるのが入門としてはよい。

●日常臨床で実践しながら,投与した結果をフィードバックし,証を診断する目を養う姿勢が重要である。

小児に対する漢方治療のコツ

著者: 金子達

ページ範囲:P.980 - P.983

Point

●小児に対する漢方治療:症状・疾患から漢方を選択する。

  1.感染症,アレルギー疾患の直接治療(洋薬との併用可)

   ①インフルエンザ:麻黄湯,②感冒:葛根湯(加川芎辛夷),③アレルギー性鼻炎:小青竜湯・越婢加朮湯,④咳嗽:麦門冬湯・五虎湯

  2.機能性難聴,不眠:抑肝散,消化器症状があれば抑肝散加陳皮半夏,不眠があれば甘麦大棗湯を用いる

  3.難治性炎症性疾患(再発性中耳炎,小児副鼻腔炎):小建中湯,黄蓍建中湯,十全大補湯

  4.咳嗽:乾性は麦門冬湯,五虎湯

  5.滲出性中耳炎,低音障害型感音難聴,頭痛:五苓散,柴苓湯

  6.めまい,頭痛:五苓散,胃腸障害があれば半夏白朮天麻湯,頭痛のない内耳性めまいや起立性低血圧には苓桂朮甘湯

●小児に対しての漢方薬の飲ませ方:親の漢方理解が最も重要である。飲ませ方のコツを,子どもの性格や方剤に合わせて考える。

《私の推奨—代表的な漢方薬の使い方》

苓桂朮甘湯と五苓散,柴苓湯をメニエール病に用いる

著者: 鈴木康弘 ,   堤剛

ページ範囲:P.984 - P.987

Point

●メニエール病を代表とするめまいは,東洋医学的には水毒あるいは水滞に基づく疾患とされている。

●めまいの治療に用いるのは利水剤が主である。

●利水剤の代表は,茯苓と蒼朮である。

●広い意味でのめまいに用いる漢方薬は多数あるが,数種類を使い分けられるとよい。

小青竜湯と越婢加朮湯をアレルギー性鼻炎に用いる

著者: 齋藤晶 ,   宮川昌久 ,   磯部秀之

ページ範囲:P.988 - P.991

Point

●鼻アレルギーには麻黄が含まれる漢方薬が投与されることが多い。

●体力や冷えの有無に注意して処方を選択する。

●小青竜湯は万人向き,越婢加朮湯は体力があって症状が強い人向きの漢方薬である。

●効果が乏しい,または副作用があるときは薬剤の変更や併用を考慮する。

葛根湯と辛夷清肺湯を副鼻腔炎に用いる

著者: 加藤志保

ページ範囲:P.992 - P.995

Point

●副鼻腔炎の治療に漢方薬を併用することで治療の幅が広がり,抗菌薬の乱用を防止する一助にもなる。

●急性副鼻腔炎には葛根湯加桔梗石膏を用いることで排膿が促進される。

●鼻閉が強いときは葛根湯の代わりに葛根湯加川芎辛夷を用いる。

●慢性副鼻腔炎には辛夷清肺湯がファーストチョイスとなりうる。

半夏厚朴湯,六君子湯,麦門冬湯などを咽喉頭異常感症に用いる

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.996 - P.999

Point

●咽喉頭異常感症の患者は癌恐怖を背景にもつことが多いので,まず原因の確実な検索が重要である。

●原因が明確でない真性咽喉頭異常感症には,半夏厚朴湯,柴朴湯が有効性を示すことがある。

●胃食道逆流による咽喉頭異常感には,六君子湯,半夏瀉心湯が有効性を示すことがある。

●喉頭アレルギーによる咽喉頭異常感には,麦門冬湯,麻黄附子細辛湯が有効性を示すことがある。

小柴胡湯加桔梗石膏を活用する—葛根湯,麻黄湯から一歩前へ

著者: 今中政支

ページ範囲:P.1000 - P.1003

Point

●小柴胡湯加桔梗石膏の保険適応病名は扁桃炎・扁桃周囲炎のみであるが,咽頭痛を主とする上気道炎に早期から使用してよい(辛涼解表法)。

●急性症状に用いる際は,腹候の胸脇苦満などの慢性期の特徴的な証にかかわらず処方できる。

●小柴胡湯加桔梗石膏は日本の経験方であり,小柴胡湯に桔梗・石膏を加えたもので,抗炎症作用が増強されている。小柴胡湯の保険適応病名には諸種の急性熱性病,肺炎,気管支炎,気管支喘息,感冒,リンパ節炎とあり,小柴胡湯加桔梗石膏の実際の適用範囲は広い。

●小柴胡湯加桔梗石膏は葛根湯と併用することで,江戸時代の名医が創作した柴葛解肌湯に近い処方となり,頭痛や関節痛の残存した咽頭炎の患者やインフルエンザの患者にも有用である。

半夏瀉心湯と黄連湯を頭頸部癌への化学放射線療法による粘膜障害に用いる

著者: グンデゥズメーメット ,   保富宗城

ページ範囲:P.1004 - P.1009

Point

●口腔内有害事象の重症度分類について説明する。

●化学放射線治療後の口内炎に対しては,適切な評価と漢方薬治療を行う。

●口内炎治療に使用する半夏瀉心湯と黄連湯の機能・機序,応用方法を理解する。

補剤をがん支持療法に用いる

著者: 籾山香保 ,   山下拓

ページ範囲:P.1010 - P.1013

Point

●2015年に策定された「がん対策加速化プラン」では,漢方薬を用いた支持療法の推進が明記された。

●頭頸部がんに対する漢方治療は,あくまで補完的な支持療法であり直接の抗腫瘍効果を期待するものではない。

●漢方薬は,西洋薬では十分な対応が難しい食欲不振,疲労や倦怠感などへの効果を有する。

●補剤はQOLを向上させ,心身の状態を整えることにより,主軸となる治療を滞りなく進ませるために重要な役割を担う。

抑肝散と加味帰脾湯を不安神経症(不安障害)に用いる

著者: 清水謙祐

ページ範囲:P.1014 - P.1018

Point

●抑肝散は,体力中等度,易怒性,不安のある患者に用いると効果がみられる。

●加味帰脾湯は,体質虚弱,貧血気味,更年期障害,不安のある患者に用いるとよい。

●不安神経症は従来診断であり,現在の診断基準では,不安障害の大部分,および身体表現性障害とうつ病の一部を含む疾患群である。

●抑肝散を使用した症例(78歳,男性。不安神経症+軽度認知障害+アルコール依存症+両側性感音難聴+耳性めまい)と,加味帰脾湯を使用した症例(35歳,女性。不安神経症+片頭痛関連めまい)の呈示を行った。

原著

手術により嚥下改善を認めたForestier病の1例

著者: 藤井正文 ,   晝間清 ,   肥塚泉

ページ範囲:P.1019 - P.1023

はじめに

 Forestier病(強直性脊椎骨増殖症)とは,1950年にForestierら1)が報告したことでよく知られている疾患である。耳鼻咽喉科領域では頸椎前面の骨増殖による咽喉頭異常感,嚥下障害,嗄声や呼吸困難2,3)などの原因となることが報告されている。今回われわれは,本疾患による長年の嚥下障害を主訴とした1例に対して外科的治療を行い,嚥下機能が著明に改善したので,手術の要点と若干の文献的考察を加えて報告する。

鼻中隔に発生したsolitary fibrous tumorの1例

著者: 古閑友馬 ,   北村拓朗 ,   伊藤有紀 ,   髙橋梓 ,   大久保淳一 ,   若杉哲郎 ,   大淵豊明 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.1025 - P.1029

はじめに

 孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)は,胸膜に好発する間葉系腫瘍である。胸膜外においては腹腔,後腹膜,骨盤腔,四肢などさまざまな部位から発生し1,2),頭頸部領域では鼻副鼻腔,頸部,顔面皮下,口腔などからの発生が報告されている3)。今回われわれは,鼻中隔に発生したSFTの1例を経験したので報告する。

重症睡眠時無呼吸症候群を伴った成人ソトス症候群の1例

著者: 浦口健介 ,   牧原靖一郎 ,   内藤智之 ,   松本淳也 ,   津村宗近 ,   假谷伸

ページ範囲:P.1031 - P.1036

はじめに

 ソトス症候群は,大頭を伴う特徴的顔貌,過成長,大きな手足,知的障害を伴う常染色体優性遺伝性疾患である。ソトス症候群にはさまざまな症状があるが,耳鼻咽喉科に関わる症状として反復性中耳炎,聴覚障害,睡眠時無呼吸症候群などが報告されており1,2),耳鼻咽喉科の定期的なフォローが必要と考えられるが,耳鼻咽喉科からの症例報告は少なく注意が必要である3)。今回,成人のソトス症候群に重症睡眠時無呼吸症候群を呈した症例を経験したので報告する。

重篤なhungry bone syndromeを呈した副甲状腺腫術後低カルシウム血症の1例

著者: 平賀幸弘 ,   坂本要 ,   岡本篤司 ,   霜村真一

ページ範囲:P.1037 - P.1042

はじめに

 副甲状腺機能亢進症に対する副甲状腺腫瘍摘出術後に起こる合併症として,低カルシウム(calcium:Ca)血症が遷延するhungry bone syndrome(HBS)が挙げられている。副甲状腺機能亢進症では,過剰に産生された副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)が骨に直接作用してCaの遊離を促進し,腎臓に作用してCaの再吸収を強く刺激し,さらに消化管からのCa吸収を著明に亢進させている。摘出術後にはPTH値の突然で急速な低下・正常化が起こるため,骨形成の増加やCaの再吸収の正常化が遷延し,その結果起こる症状をHBSと呼ぶ1〜3)

 今回われわれは,術前に骨症状や著明に高値な血清intact PTH(i-PTH)値を示した60歳台の女性において,左上副甲状腺腺腫の摘出術を行った。術後に急速かつ高度に遷延した低Ca血症が発生し,HBSを呈した1症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

低ガンマグロブリン血症下に涙囊鼻腔吻合術鼻内法を施行した多発血管炎性肉芽腫の1例

著者: 松見文晶 ,   斎藤友紀子 ,   三ッ井瑞季

ページ範囲:P.1043 - P.1048

はじめに

 多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)は,上気道病変,肺の壊死性肉芽腫性病変,腎臓の壊死性糸球体腎炎,全身の中・小動脈の壊死性血管炎を特徴とし,PR3-ANCAが高率に陽性となる自己免疫学的機序が疑われている原因不明の疾患である。GPAにおいて涙道病変は約7%で認められ1),外科的治療を要することがあるが治療成績はあまりよくないとされており2),通常の涙道閉塞症に対する手術治療とは異なる注意,対応が求められる。今回われわれは,稀な若年発症のGPAにより遅発性に鼻涙管閉塞症を生じた症例に対し,GPAの治療による低ガンマグロブリン血症を合併したなかで涙囊鼻腔吻合術鼻内法(endoscopic dacryocystorhinostomy:En-DCR)を施行し,良好な経過を得た経験をしたので,文献的考察を加え報告する。

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目次

ページ範囲:P.959 - P.959

欧文目次

ページ範囲:P.961 - P.961

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1050 - P.1050

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.1054 - P.1054

 鮮やかな紅葉の候,皆様いかがお過ごしでしょうか?

 小生,ここ数か月『半沢直樹』にすっかりはまっていました。凄いドラマでした。人によって見方はさまざまだと思いますが,自分は役者さん達の目力に惹かれつつ元気をもらっていたのかなと。元気が欲しい。コロナ自粛生活が長引いているせいか,最近どうも気力とかアクティビティとかが下がっている気がしています。なぜだか疲れが溜まり倦怠感があり,お腹がはって関節が痛く,まあいわゆる不定愁訴というものでしょうか。自分も『半沢直樹』のようにエネルギッシュだったらと憧れてはみるものの,こんな調子では到底無理ですね。何か良い薬はないものでしょうか……。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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