icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科92巻13号

2020年12月発行

書評

NHKスペシャル 人体Ⅱ 遺伝子 フリーアクセス

著者: 石野史敏1

所属機関: 1東医歯大難治疾患研究所・エピジェネティクス分野

ページ範囲:P.1134 - P.1134

文献概要

 2003年にヒトゲノム計画は完了し,全ゲノム配列が明らかになった。しかし,計画が最終目標に掲げていた「ヒトゲノムの機能を完全に読み解く」ことはまだできていない。予想よりもはるかに少ない2万の遺伝子しかなく,それが占める部分はゲノム全体のたった2%ほどしかない。ヒトゲノムの残り98%は一見,訳のわからない無意味なDNAで占められているが,世界中が競って集めた疾患SNPデータのその多くがここにマップされた。

 NHKスペシャル『シリーズ「人体」Ⅱ 遺伝子』には,このヒトゲノムの98%部分に潜んでいる機能に関する研究の最前線が取り上げられている。第1集では,この未知の部分にあるたった1つのDNA塩基の変異(SNP)がヒトの表現型に影響を与える例がいくつか紹介されている。これは,さまざまな環境に適応してきたヒトの進化における自然選択の歴史を物語っている。最先端の分子生物学は,これにどのような説明を与えるのか? SNPが遺伝子発現メカニズムに与える影響を,CGの力も借りてわかりやすく紹介している。ここからわかるのは,疾患にかかわる1つひとつの遺伝子変異やSNPがヒトの表現型に与える影響を,丁寧に深く掘り下げていく地道な研究者の努力が心踊る発見につながっていくのであり,その成果の積み重ねが,最終的に「ヒトゲノムの機能を完全に読み解く」ことにつながることである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら