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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科92巻2号

2020年02月発行

雑誌目次

特集 カラーアトラス 口腔・咽頭粘膜疾患—目で見て覚える鑑別ポイント

ページ範囲:P.109 - P.109

細菌・ウイルスによる口腔・咽頭粘膜病変

著者: 河野正充 ,   保富宗城

ページ範囲:P.110 - P.113

POINT

●急性咽頭炎・扁桃炎とは,「咽頭および扁桃の急性炎症性疾患を示し,急性炎症が咽頭全体にまで進展し,咽頭粘膜や後壁のリンパ瀘胞に炎症が起こっている状態」と定義される。

●原因菌としてはA群β溶血性連鎖球菌(GAS)が最も多い。

●GAS性咽頭・扁桃炎では,口蓋扁桃の発赤・腫脹,白苔の付着,軟口蓋の強い発赤や苺舌が特徴的所見である。

●急性炎症が口蓋扁桃を超えて周囲組織に波及した場合に扁桃周囲炎,さらに膿瘍を形成した場合に扁桃周囲膿瘍となる。

カンジダによる口腔粘膜病変

著者: 丹田奈緒子

ページ範囲:P.114 - P.117

POINT

●偽膜性カンジダ症と紅斑性カンジダ症が主な病型である。

●がん化学療法,放射線療法に伴い発症することが多い。

●中咽頭がん術後は口腔機能低下が発症要因となる。

●全身的,局所的な要因を考慮し,予知的に対応することが重要である。

小児の口腔・咽頭粘膜病変

著者: 仲野敦子

ページ範囲:P.118 - P.121

POINT

●小児の口腔・咽頭粘膜病変の多くはウイルス感染によるものである。

●発症から徐々に所見が変化すること,疾患に特徴的な所見ではない粘膜病変も多いこと,小児は所見を取りにくいことなどから,口腔内の所見のみでの診断が困難な疾患が多い。

●発熱などの他の症状や,周囲の感染症流行などを併せて診断を行う。

性感染症による口腔・咽頭粘膜病変

著者: 余田敬子

ページ範囲:P.122 - P.127

POINT

●梅毒一次病変の初期硬結と硬性下疳は,アズキ大から指頭大の暗赤色の腫瘤で,軟骨のようにコリコリと硬く無痛性である。

●梅毒二次病変の粘膜斑は,青みがかった白,または灰色の若干扁平に隆起した梅毒特有の病変で,辺縁は赤く,とくに口蓋垂を中心に蝶が羽を広げたような形態(butterfly appearance)が特徴的である。

●典型的な粘膜斑でなくても,一見扁桃炎のようにみえる白色病変が扁桃に限局せず,口蓋弓粘膜など扁桃周囲にも認める場合は,梅毒を鑑別診断に挙げるべきである。

●20〜50歳台の男性に,カンジダ,舌の白色病変,難治性の歯肉炎・歯周炎,非特異的潰瘍を認める場合は,HIV感染を疑う。

●10歳台後半〜20歳台の難治性上咽頭炎や急性に生じた咽頭扁桃のアデノイド様腫脹では,クラミジア感染症を鑑別に挙げるべきである。

膠原病による口腔・咽頭粘膜疾患

著者: 畠山博充

ページ範囲:P.128 - P.131

POINT

●Behçet病をはじめとして,膠原病およびその類縁疾患における口腔・咽頭粘膜病変の合併頻度は高い。

●粘膜病変は単発もしくは複数で,大きさ,形状,深達度などは症例ごとに多彩な臨床像を示し,口腔・咽頭粘膜病変の所見のみから診断を下すのは困難である。

●ステロイドやメトトレキサートといった薬剤による感染性・薬剤性病変もあり,十分な臨床情報の収集が求められる。

●診断・治療には主に内科,皮膚科,眼科といった専門医との連携が重要である。

天疱瘡,類天疱瘡による口腔・咽喉頭粘膜病変

著者: 松本伸晴 ,   矢部はる奈 ,   山上淳

ページ範囲:P.132 - P.135

POINT

●粘膜に症状がみられる自己免疫性水疱症として,尋常性天疱瘡,粘膜類天疱瘡が代表的な疾患である。

●尋常性天疱瘡,粘膜類天疱瘡の初発症状は,口腔粘膜のびらんであることが多い。

●天疱瘡・類天疱瘡の咽頭・喉頭粘膜病変として,喉頭蓋のびらん・浮腫・白苔が典型的である。

●難治性の粘膜びらんをみたときには,天疱瘡・類天疱瘡も念頭において診断のための検査を進めることが重要である。

Stevens-Johnson症候群および中毒性表皮壊死症による口腔・咽頭粘膜病変

著者: 濱菜摘 ,   阿部理一郎

ページ範囲:P.136 - P.139

POINT

●Stevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症は,表皮細胞および粘膜上皮細胞の広範な壊死により全身の紅斑・びらんをきたし,時に致死的となる疾患である。

●薬剤が原因であることが多いが,マイコプラズマやヘルペス感染による発症もみられる。

●口腔粘膜病変として,口唇や口腔粘膜の出血を伴う広範囲なびらんが特徴である。

●確定診断のために皮膚または粘膜生検による病理組織検査が必要である。

舌・口腔粘膜の悪性腫瘍

著者: 上條朋之

ページ範囲:P.140 - P.150

POINT

●舌・口腔の悪性腫瘍は扁平上皮癌が圧倒的に多い。潰瘍型,隆起型など肉眼所見はさまざまである。ヨード染色などが切除の際に有効な場合もある。

●非扁平上皮癌は多岐にわたり,良性・悪性の鑑別を含めて術前に確定診断がつかないことも多く,常に悪性を念頭に置いて切除を行うことが重要である。

●前癌病変には白板症・紅板症などがある。頻度は白板症のほうが高いが,癌化する確率は紅板症のほうが高い。

咽頭粘膜の悪性腫瘍

著者: 中山勇樹 ,   小川武則 ,   大越明 ,   中目亜矢子 ,   吉田拓矢 ,   小泉祥太郎 ,   香取幸夫

ページ範囲:P.152 - P.160

POINT

●narrow band imaging(NBI)を用いることで診断能が上がる。

●中咽頭側壁癌においては,口蓋扁桃圧迫による視診,触診などでも確認する。

●下咽頭癌の診断においては,valsalva法,modified Killian法1)を用いる。

●悪性腫瘍に類似する疾患もあり,生検にて診断確定を行う。

原著

甲状腺濾胞癌内に転移した肺腺癌の1例

著者: 繁治純 ,   木戸上知弘 ,   山本一宏 ,   山本侑毅

ページ範囲:P.163 - P.167

はじめに

 転移性甲状腺癌の頻度は甲状腺癌の1〜3%と低い1,2)。既存の腫瘍内への転移となるとさらに稀である。われわれの渉猟しえた範囲では,海外と併せても30例ほどしか報告されていない2〜8)。今回,肺腺癌の精査でPET/CT検査を行ったところ甲状腺右葉に腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診の結果,悪性腫瘍と診断したため摘出術を行い,甲状腺濾胞癌内に転移した肺腺癌と診断した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鼓膜から透見された赤色腫瘤の2例

著者: 山田光一郎 ,   三浦誠 ,   暁久美子 ,   本多啓吾 ,   池田浩己 ,   木村俊哉

ページ範囲:P.169 - P.174

はじめに

 鼓室内赤色腫瘤は,大きさによっては拍動性耳鳴や一側性難聴などの症状を呈し,日常診療において時に経験することがある。鑑別診断として,側頭骨グロムス腫瘍,頸静脈球高位,中耳内頸動脈走行異常,動脈瘤,コレステリン肉芽腫などが挙げられる。今回われわれは,鼓膜から透見された赤色腫瘤の2例を経験したので報告する。

当院での小児睡眠時無呼吸症候群に対する術後経過の検討(第2報)—身体に与える影響について

著者: 山本圭介 ,   三谷健二 ,   鎌倉綾 ,   岩橋利彦 ,   佐々木崇博 ,   堀田沙矢香 ,   野口夏衣 ,   河崎浩子 ,   金井悠 ,   秋田佳名子 ,   宣原佳奈

ページ範囲:P.175 - P.179

はじめに

 小児睡眠時無呼吸症候群(小児OSAS)の原因として口蓋扁桃肥大,アデノイド増殖症があるが,両側口蓋扁桃摘出術+アデノイド切除術(T&A)が奏効し,多くの症例で睡眠障害が改善することは知られている1)。また睡眠障害は,小児の発育発達にさまざまな形で影響しており,小児OSASにおいても,手術により身体発育が改善するといわれている。

 既報により,当院で行っているOSAS児へのT&Aにおいて,術前と術後1年での臨床症状の改善について検討し,過去の報告と同様に良好な結果であることを確認した2)。今回,臨床症状の長期的な改善が得られていることをふまえて,術前と術後3年間(1年ごと)の身長・体重を追跡し,術後の治療効果を明らかにしたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

化学放射線療法後に骨髄異形成症候群を発症し不幸な転帰を辿った進行中咽頭癌症例

著者: 加藤大星 ,   中溝宗永 ,   横島一彦 ,   稲井俊太 ,   酒主敦子 ,   坂井梓 ,   中石柾 ,   臼倉典宏 ,   大久保公裕

ページ範囲:P.181 - P.187

はじめに

 進行頭頸部癌に対する集学的療法として,一次治療に化学療法を行うことが一般的になって久しい。また,手術や放射線治療後の残存や再発に対する二次治療として化学療法を施行することも多くなっている。その結果として予後が改善し,長期生存例において晩期合併症の発生が増加すると予想される。

 晩期合併症の1つに,治療関連骨髄異形成症候群(therapy-related myelodysplastic syndrome:t-MDS)が知られている1)。しかし,頭頸部癌治療後に生じた症例の報告は少なく,その詳細についてのわれわれの認識は十分とはいえない。今回,中咽頭癌に対する化学放射線後,早期に骨髄異形成症候群(MDS)を発症した1例を経験したので報告する。

下位脳神経と交感神経の麻痺をきたし,Tornwaldt病の感染が原因として疑われた咽後膿瘍の1例

著者: 佐伯忠彦 ,   小川晃弘 ,   黒田一彬 ,   小山貴久

ページ範囲:P.189 - P.195

はじめに

 咽後膿瘍は咽後間隙に膿瘍が形成される疾患であるが,近年,抗菌薬の使用や脊椎カリエスが減少したことなどにより,発症が少なくなっている。通常は発熱や咽頭痛を伴い,中咽頭〜下咽頭後壁の腫脹を認めることが多いが,上咽頭に発生して神経麻痺症状をきたす例は稀である。

 今回われわれは,下位脳神経麻痺と交感神経麻痺をきたし,Tornwaldt病の感染が原因として疑われた上咽頭の咽後膿瘍例を経験したので報告する。

書評

これでわかる! 抗菌薬選択トレーニング—感受性検査を読み解けば処方が変わる

著者: 青木眞

ページ範囲:P.162 - P.162

 2016年5月に開催された先進国首脳会議,通称「伊勢志摩サミット」で薬剤耐性(AMR)の問題が取り上げられ,当時の塩崎恭久厚生労働大臣のイニシアチブの下さまざまな企画が立ち上げられた。国立国際医療研究センターにある国際感染症センターの活動も周知のとおりである。

 にもかかわらず,広域抗菌薬の代表とも言えるカルバペネム系抗菌薬の消費が,日本だけで世界の7割を占めるという状況から,(一部の意識の高い施設を除いて)大きく変わった印象が現場に少ない。もちろん,最大の原因は「感染症診療の原則とその文化」の広がりが均一でないことによる。しかし,さらにつきつめると,実は「抗菌薬感受性検査の読み方」が十分に教育できていないことも大きな理由の一つである。感受性検査の結果をS,I,Rに分類して単純に「Sを選ぶ」ことに疑問を抱かない問題と言ってもよい。一つひとつの症例で,ある抗菌薬が選ばれる背景には,感受性が「S」であること以外にも,微生物学的・臨床的・疫学的など多くの理由がある。その理解なしに,適切な抗菌薬の選択は不可能あるいは危険なのである。評者も,群馬大におられた佐竹幸子先生らとともにNPO法人EBICセミナーの一環として「抗菌薬感受性検査の読み方」シリーズを10年以上にわたり講義してきた。その講義は現在,日本感染症教育研究会(通称IDATEN)に引き継がれている。しかし,そのエッセンスを伝える書物は本書の発行まで皆無であった。

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目次

ページ範囲:P.105 - P.105

欧文目次

ページ範囲:P.107 - P.107

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.196 - P.196

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.200 - P.200

 睦月の候,皆様いかがお過ごしでしょうか。

 いよいよオリンピックイヤーとなりました。きっと,あっという間に開幕式を迎えるのでしょうね。ワクワクします。実はこのあとがき,2020年の元旦に書いています。年末は忘年会で,そしてこのお正月を経て来週は新年会,なんだかずっと飲食しているような気が。日本には美味しいお食事やお酒がたくさんあり過ぎて,この時期は注意しないと体調も体型も崩してしまいます。でも,こんなに豊富な食材に囲まれて暮らすことは幸せです。自分の味覚をいつまでも若く保ちたいものです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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