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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科92巻3号

2020年03月発行

雑誌目次

特集 頸部エコーを使いこなす—描出のコツと所見の読み方〔特別付録web動画〕

ページ範囲:P.205 - P.205

頸部超音波検査の基本的実施法

著者: 齋藤大輔 ,   志賀清人

ページ範囲:P.206 - P.210

POINT

●超音波検査では,病変部位のみならず,頸部全体を系統的に観察する必要がある。

●Bモード画像とカラードプラ画像を使いこなすことで,小さな病変の診断も可能である。

《対象別:描出のコツと所見の読み方》

甲状腺の良性疾患—疾患の理解と所見の読み方

著者: 太田寿

ページ範囲:P.212 - P.225

POINT

●甲状腺の超音波検査は画像診断の第一選択である。超音波でびまん性甲状腺腫か結節性甲状腺腫をみつける。

●びまん性甲状腺腫の場合は大きさを計測し,炎症所見の存在をみつける。結節性甲状腺腫の場合は良性・悪性を推定する。

●濾胞性腫瘍は良性・悪性が超音波では鑑別しがたいので,濾胞癌を見逃さないように努力する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月)。

甲状腺の腫瘍性疾患

著者: 福原隆宏

ページ範囲:P.226 - P.231

POINT

●甲状腺腫瘍は横断像と縦断像の2方向で描出する。

●基本の観察はBモードで行い,日本乳腺甲状腺超音波医学会より出ている『甲状腺超音波診断ガイドブック』に沿って,丁寧に所見をとる。

●甲状腺乳頭癌は特徴的な所見を呈することが多い。一方,濾胞腺腫と濾胞癌の区別は困難である。境界部の不整や内部の不均質さに注意して観察する。

●超音波は静止画ではなく,動画で診断する。そのため動画の記録は,所見の見直しに役に立つ。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月)。

副甲状腺

著者: 下田光 ,   大月直樹

ページ範囲:P.232 - P.237

POINT

●まずは臨床解剖を理解し,甲状腺や血管などの副甲状腺の周辺臓器もみながら同定する。

●超音波画像所見のみでの疾患の特定は困難であるため,臨床情報も考慮して診断していく。

●超音波検査のみで描出できない場合はMRIや核医学検査など,他のモダリティーも利用する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月)。

唾液腺

著者: 東野正明 ,   河田了

ページ範囲:P.238 - P.242

POINT

●唾液腺組織とその周囲組織との位置関係を把握する。

●びまん性に腫脹する炎症性疾患と限局性の像を呈する腫瘍性疾患に大別される。

●耳下腺腫瘍においては局所診断と良悪性診断が重要である。

リンパ節

著者: 佐藤雄一郎

ページ範囲:P.244 - P.251

POINT

●超音波診断装置の進歩により,頭頸部領域においてもリアルタイムかつ低侵襲に質の高い画像を得られるようになった。しかし,このような高品質画像が精密な診断に繋がることで初めて,超音波診断を日常診療に導入する意義があると考える。

●超音波診断による頭頸部癌リンパ節転移診断基準の確立を目的にした多施設共同研究が進んでおり,詳細な研究結果が期待されている。

●頭頸部癌診療に超音波診断学を応用するためには,各医療従事者が,頭頸部領域の解剖,リンパ節の構造,リンパ節転移が成立するまでの過程,適切な超音波装置の扱いを知る必要がある。

●今後の超音波診断学の質と安全のためには,基本手技の標準化,診断基準の確立と用語の整理,効果的な教育システムによる定着までを行い,絶えずplan(計画)→do(実行)→check(評価)→act(改善)というPDCAサイクルを回すことで理想を目指すことが必要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月)。

その他の頸部腫瘤—正中頸囊胞,側頸囊胞,下咽頭梨状窩瘻

著者: 松塚崇

ページ範囲:P.252 - P.256

POINT

●正中頸囊胞は甲状舌管の遺残であり,超音波検査により,内部低エコーの囊胞を舌骨から甲状腺峡部までの頸部正中に認めることが多い。

●側頸囊胞は超音波検査により,顎下腺の下,かつ総頸動脈や内頸静脈の前で,胸鎖乳突筋と接する位置に認められる第2鰓裂由来の囊胞が多い。

●下咽頭梨状窩瘻では,超音波検査で甲状腺上極から頭尾軸方向に連続した管状構造を認めることがある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月)。

耳鼻咽喉科医のための頸動脈エコー

著者: 白石吉彦

ページ範囲:P.257 - P.261

POINT

●総頸動脈〜頸動脈洞〜内頸動脈の描出の仕方を解説する。

●内中膜厚(IMT)が1.5mm以上であればフォローを要する。

●血流流速から狭窄を推計することが可能であり,血流計測の方法を解説する。

●中枢性めまいが疑われる患者では椎骨動脈の血流を確認しておきたい。椎骨動脈の描出方法を解説する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月)。

舌がんの深達度

著者: 大野十央 ,   朝蔭孝宏

ページ範囲:P.262 - P.265

POINT

●超音波検査を用いた舌がんの進達度について説明した。

●あらたなTNM分類では舌がんの進達度が診断基準に導入された。

●超音波検査は小病変の描出に優れている。

●検査を行う症例を適切に選択することで正確な診断が可能である。

《エコーを使った侵襲的手技》

超音波ガイド下穿刺吸引細胞診

著者: 下出祐造 ,   石坂智 ,   岡野恵一郎 ,   小林義明 ,   能田拓也 ,   辻裕之

ページ範囲:P.266 - P.273

POINT

●穿刺吸引細胞診(FNAC)は穿刺方法と吸引方法の組み合わせで行われる。

●超音波ガイド下FNACは非常に有用であるが,侵襲のある検査である。

●適切な細胞採取と適切な標本作製が求められる。

●検査の適応や手技,合併症を正しく理解することが重要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月)。

経皮的エタノール注入療法

著者: 中野賢英 ,   福成信博

ページ範囲:P.274 - P.280

POINT

●甲状腺,副甲状腺疾患に対するエタノール注入療法は,安全で効果の高い治療法である。

●エタノール注入による超音波画像の変化や組織の変化を理解し,処置を行う。

●エタノールの漏出による疼痛や神経障害などの合併症,およびその対処法を理解する。

原著

28年間留置されていた気管Tチューブ例

著者: 直井勇人 ,   橘智靖 ,   小松原靖聡 ,   黒田一範

ページ範囲:P.281 - P.284

はじめに

 気管Tチューブ(以下,Tチューブ)は,1965年にMontgomery1)により報告されて以降,主に気管狭窄に対するステント治療として広く使用されている。Tチューブは閉塞や感染などの合併症を考慮して,定期的に交換が行われることが一般的である。今回われわれは,28年間同一のTチューブが留置されていた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

鼻内術後管理を目的とした生理食塩水点鼻スプレーの有用性の検討

著者: 渡邊毅 ,   吉見龍二 ,   中尾信裕 ,   大木幹文

ページ範囲:P.285 - P.291

はじめに

 鼻内鼻副鼻腔手術後には鼻腔内に多量の痂皮が付着するため,この痂皮を脱落させる目的で食塩水を用いた鼻洗浄(俗にいう,鼻うがい)は一般的によく行われている1)。しかし,多忙である,出張が多く器具が持参できない,鼻洗浄の刺激が強く施行を拒否する(苦手である),年齢の問題で施行できない(小児や高齢のため),などの理由で鼻洗浄がうまく施行できない症例も少なからず散見される1)。そこで,長崎大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科(以下,当科)における鼻内手術後の患者で,定期的な鼻洗浄が困難な20症例において,市販の生理食塩水点鼻スプレー(ドライノーズ®スプレー:日本臓器製薬,図1)を用いた術後鼻処置法を試み,一般的なエネマシリンジ(図1)を用いた鼻洗浄の代用としての有用性について検討を行った。なお,この研究は長崎大学病院臨床研究センターの2015年度第10回臨床研究倫理委員会において,16020833番で申請が受理されている臨床研究である。

書評

顔面骨への手術アプローチ

著者: 飯村慈朗

ページ範囲:P.243 - P.243

 『Surgical Approaches to the Facial Skeleton』は,1995年の初版刊行以来,米国で頭蓋顎顔面外科を修める医師にとって教科書的な本となっている。本書は,その第3版(Wolters Kluwer,2018)の日本語版である。本書の特徴は,解剖学に加え技術的要素を詳細に解説し,手術アプローチ法に特化している点である。きれいな良い手術は的確なアプローチから成り立つものであり,一つのアプローチ法しか知らないと対処できる部位は狭められ無理をした手術となってしまう。例えば耳鼻咽喉科医である私は,眼窩底骨折へのアプローチは内視鏡による経鼻内法もしくは経上顎洞法が主であった。しかし本書第2部に記載されている経眼窩法を行うと,驚くほど眼窩底骨折前方の処置が簡単であった。眼窩底後方の骨折に対しては内視鏡下経鼻内法のほうが処置しやすいが,前方に対しては経眼窩法のほうが格段に容易である。病変部位によってアプローチ法を変えることの重要性が実感できる。

 顔面骨格の手術においては,切開する際に顔の審美性,表情筋とその神経支配,感覚神経の走行を考慮しなければならない。そのため病変部位に対するアプローチ法は,引き出しが多いほうが良い。その点,本書はそれぞれの長所と短所を列挙し,ある特定のアプローチ法を推奨しているわけではない。各アプローチ法の長所と短所を理解した上で選択できれば,対処できる部位の幅が広がり,治癒率の向上につながる。そのため本書を頭蓋顎顔面領域の手術に携わる全ての外科医にお薦めする。本書を読めば,顔面骨格のあらゆる箇所に自信を持ってアプローチできるようになり,外科医としてランクアップするであろう。

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目次

ページ範囲:P.201 - P.201

欧文目次

ページ範囲:P.203 - P.203

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.292 - P.292

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.296 - P.296

 1月30・31日の2日間,沖縄で第30回日本頭頸部外科学会総会・学術講演会が開催されました。沖縄の魅力に誘われて,一般演題数は日耳鼻総会・学術講演会に迫る430題。生憎の寒波でしたが,その分,多くの参加者が会場に留まり30周年に相応しい活気に満ちた学会となりました。耳科学・鼻科学・口腔咽頭科学・喉頭科学に加え,境界領域の顎顔面・頸部・頭蓋底を包括する頭頸部外科学の確立を目指して1990年に設立された本学会は,2009年度から頭頸部がん専門医制度事業,2019年からロボット支援手術の指針・教育プログラム作成,講習会事業を開始し,多くの会員の支持を得て会員数も年々増加し,30年間に大きな飛躍を遂げました。やっぱり皆な手術が大好きなんですね。本学会の益々の発展を祈念いたします。

 さて,今月号の特集は超音波検査です。超音波検査は従来から甲状腺や唾液腺の診療に用いられてきましたが,食わず嫌いでここまで距離を置いてきてしまった読者も多いのではないでしょうか? 斯く言う私もその1人でしたが,最近,非常に鮮明な画像が得られるようになり,宗旨替えして自分のブースに置いてリアルタイムで診療に使うようになりました。ということで,本号では「頸部エコーを使いこなす」と銘打って,まず入門編として,今さら聞けない基本的な使い方から,甲状腺疾患・唾液腺疾患・頸部リンパ節・頸部良性疾患について描出のコツと所見の読み方を,応用編として頸動脈エコーや舌がんの深達度測定,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診,経皮的エタノール注入療法について,それぞれ第一線でご活躍中のエキスパートに解説していただきました。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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