頭頸部悪性黒色腫に対してニボルマブを使用した症例の検討
著者:
皆木正人
,
井口郁雄
,
綾田展明
,
江草憲太郎
,
福増一郎
,
森田慎也
,
假谷伸
ページ範囲:P.379 - P.386
はじめに
悪性黒色腫はメラノサイト由来の悪性腫瘍であり,皮膚以外では眼瞼,鼻副鼻腔,消化管,腟,外陰部などの粘膜からも発生する。悪性黒色腫全体に占める粘膜発生例の割合は,欧米では1〜2%であるのに対して,本邦では約10%と多く,これは本邦では皮膚原発症例が欧米より少ないため,相対的に粘膜原発症例の頻度が高くなるためとされている1,2)。また,頭頸部領域は粘膜悪性黒色腫の好発部位とされており,頭頸部領域での原発部位としては鼻副鼻腔(57〜89%),口腔(5〜41%)の順に多いと報告されている3)。
ヒトprogrammed cell death-1(PD-1)に対する完全ヒト型IgG4モノクローナル抗体であるニボルマブは,本邦において2014年7月に悪性黒色腫の治療薬として承認された。また,抗PD-1抗体薬を含む免疫チェックポイント阻害薬だけでなく,BRAF(serine/threonine protein kinase)阻害薬やMEK(mitogen-activated protein kinase)阻害薬などの分子標的治療薬の有効性が報告され,根治切除不能な悪性黒色腫に対する治療戦略が急速に変化している4,5)。
分子標的治療薬は,従来の殺細胞性抗腫瘍薬とは作用機序が全く異なるため,分子標的治療薬特有の免疫関連有害事象に留意する必要性がある。今回,われわれは,当院にてニボルマブを使用した悪性黒色腫症例について後方視的検討を行ったので,特に頭頸部領域の症例を中心に免疫関連有害事象も含めて報告する。
なお,本検討は,ヘルシンキ宣言,および,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針にのっとり,広島市民病院(当院)の倫理委員会にて審査のうえ,承認を受けた(承認番号:30-6)。