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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科92巻6号

2020年05月発行

文献概要

書評

顔面骨への手術アプローチ

著者: 楠本健司1

所属機関: 1関西医大・形成外科学

ページ範囲:P.457 - P.457

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 本書は,Edward EllisⅢとMichael F. Zideによる名著『Surgical Approaches to the Facial Skeleton』第3版(Wolters Kluwer, 2018)の日本語訳本である。頭蓋顎顔面領域の骨格へのアプローチは,骨折治療,変形症などでの骨切り,腫瘍切除後の再建,顔面輪郭形成など多様な病態での治療で必要になる。現在,多くの施設で治療前に3次元CTをはじめ,多種の画像データを容易に取得し参照できる。これらを基に骨格再建法を想定し計画できるものの,目的とする骨格部位に到達するには,切開線を設定して切開・剝離を進め,皮膚面から軟部組織を経過しなければならない。手術を安全に,合併症なく,計画どおりに完遂するには,該当の骨格部分を3次元的に把握するだけでなく,皺の方向,神経,血管,筋や唾液腺などについての局所解剖を十分に把握し,目的部位へのアプローチにて適切な処理と展開を行うことが良い手術を達成する鍵になる。

 本書では,実際の手術写真の提示にとどまらず,知っておくべき場面の多くの付図や解剖体写真に要点の適切な解説が加えられている。2次元画像での提示であるものの,連続付図が並び,手術解剖の説明に次いで手術のステップごとの解説がなされており,解説付きの動画のごとくの流れで手術アプローチを理解できる。さらに特筆すべきは,これらの写真や付図と解説から術中にいかなる器具をどのように扱うか,鉤はどのように引くか,牽引糸をどこに掛けて引っ張るか,挿管チューブはどこに設定すると手術しやすいかなど,手術の実際を多分に学ぶことができる。付図や解説からメスの入れ方から剪刀や剝離子の正しい進め方までもが把握することができる。配慮された構成は,初学者のみならず,専門医資格取得前後の医師やより良い手術を探求する医師にとっても得るものが多い。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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