原著
声門上癌に対する化学放射線治療後,晩期に喉頭蓋と咽頭後壁との癒着を生じた1例
著者:
野島知人
,
三枝英人
,
五島可奈子
,
門園修
,
野中学
ページ範囲:P.648 - P.654
はじめに
頭頸部腫瘍に対する放射線治療後の晩期合併症には,組織の線維化と瘢痕狭窄(食道や下咽頭,鼻咽腔の狭窄など)や壊死(喉頭壊死,下顎骨壊死など),甲状腺機能低下,白内障,末梢神経(舌下神経や聴神経の障害など)や中枢神経系の障害(側頭葉壊死,脊髄障害),放射線誘発癌や肉腫などが知られている1)。これらのうち,放射線誘発癌や肉腫以外は,放射線感受性の高い小血管の内皮細胞が障害されることで血管内膜の線維化,硝子化が起こり,徐々に血管内腔の狭小化,血流不全へと進展し,組織の萎縮や線維化,壊死,神経障害が二次的に発症,進行すると考えられている2,3)。これらの晩期障害は,放射線治療単独よりも化学療法を併用する化学放射線治療の場合のほうが,より強く発現することが予測される。したがって,化学放射線治療後から数年以上経過した晩期に,離れて存在していた組織どうしが癒着を形成し,機能障害を呈することは稀であると考えられる。
今回私たちは,声門上癌に対する化学放射線治療後晩期に喉頭蓋と咽頭後壁の強い癒着を認め,嚥下障害,呼吸困難感を呈した1例を経験したため報告する。