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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科92巻8号

2020年07月発行

文献概要

原著

声門上癌に対する化学放射線治療後,晩期に喉頭蓋と咽頭後壁との癒着を生じた1例

著者: 野島知人1 三枝英人12 五島可奈子1 門園修2 野中学1

所属機関: 1東京女子医科大学病院耳鼻咽喉科 2東京女子医科大学八千代医療センター耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.648 - P.654

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はじめに

 頭頸部腫瘍に対する放射線治療後の晩期合併症には,組織の線維化と瘢痕狭窄(食道や下咽頭,鼻咽腔の狭窄など)や壊死(喉頭壊死,下顎骨壊死など),甲状腺機能低下,白内障,末梢神経(舌下神経や聴神経の障害など)や中枢神経系の障害(側頭葉壊死,脊髄障害),放射線誘発癌や肉腫などが知られている1)。これらのうち,放射線誘発癌や肉腫以外は,放射線感受性の高い小血管の内皮細胞が障害されることで血管内膜の線維化,硝子化が起こり,徐々に血管内腔の狭小化,血流不全へと進展し,組織の萎縮や線維化,壊死,神経障害が二次的に発症,進行すると考えられている2,3)。これらの晩期障害は,放射線治療単独よりも化学療法を併用する化学放射線治療の場合のほうが,より強く発現することが予測される。したがって,化学放射線治療後から数年以上経過した晩期に,離れて存在していた組織どうしが癒着を形成し,機能障害を呈することは稀であると考えられる。

 今回私たちは,声門上癌に対する化学放射線治療後晩期に喉頭蓋と咽頭後壁の強い癒着を認め,嚥下障害,呼吸困難感を呈した1例を経験したため報告する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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