感音難聴,めまいともに認めなかった外傷性鼓膜穿孔に伴う外リンパ瘻症例
著者:
米谷公佑
,
篠原宏
,
中野光花
,
久保田俊輝
,
清水啓成
ページ範囲:P.751 - P.755
はじめに
外リンパ瘻は内耳リンパ腔と周囲臓器との間に瘻孔が生じ,内耳の生理機能が障害される疾患として定義される1)。外リンパ瘻の主症状はめまい,難聴であるが1),特異的な症状はなく,明確な誘因を認めない症例ではメニエール病や突発性難聴との鑑別がしばしば問題となる1,2)。cochlin-tomoprotein(CTP)検査が報告されるまでは,外リンパの漏出を顕微鏡下あるいは内視鏡下に直接観察する必要があり,その診断に苦慮していたが,2009年,Ikezonoら3)によって外リンパ中のタンパク質であるCTPが外リンパ瘻の生化学的診断マーカーとなることが報告された。CTP検査の感度,特異度はともに高く4,5),CTP検査を用いることで,より低侵襲,かつより正確に外リンパ瘻を診断することが可能となった。
これまで,難聴のみを自覚症状とする外リンパ瘻の症例は数多く報告されていたが6),CTP検査の普及に伴い,難聴のない,めまいのみの外リンパ瘻の症例も報告されるようになった7)。今回われわれは,伝音難聴しか認めず,骨導閾値の上昇やめまいがなかったにもかかわらず,CTPが高値を示した外傷性外リンパ瘻の症例を経験したので報告する。