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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻10号

2021年09月発行

雑誌目次

特集 知っておきたい 効果的なリハビリテーション〔特別付録Web動画〕

ページ範囲:P.775 - P.775

《耳領域》

聴覚障害のリハビリテーション

著者: 三瀬和代 ,   白馬伸洋

ページ範囲:P.776 - P.780

POINT

●加齢性難聴に対する補聴器診療での聴覚リハビリテーションについて概説した。

●難聴高齢者が抱える周波数・時間分解能の低下は補聴器のみで補うことは難しく,補聴器の装用効果には個人差があり,また不適切な聴取習慣や中枢の認知処理能の低下を伴っていることもある。

●聴覚リハビリテーションでは,補聴器の調整のみならず言語聴取能とコミュニケーションの改善を図ることが求められる。

●当科で行われている残存聴覚機能を最大限に活用するための,聴覚-認知機能の統合訓練を意図した溝口方式聴覚リハビリテーションの実際,具体的手法とその効果について提示した。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年9月)。

耳鳴の音響療法

著者: 坂田俊文

ページ範囲:P.781 - P.785

POINT

●音響療法は,耳鳴の原因や程度を問わず導入可能な治療手段である。

●音響療法の目的は,耳鳴ではなく日常生活に注意を向けさせることにある

●音響療法は,教育的カウンセリングなしには成立しない。

●補聴器や複合補聴器のフィッティングは,通常の聴覚補償と同じである。

●精神的苦痛が強い場合は,精神科・心療内科の治療と並行して実施する。

●患者の偏向した認知を改めるため,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)あるいはそれに準じた治療を併用することがある。

前庭リハビリテーション/平衡訓練

著者: 山中敏彰

ページ範囲:P.786 - P.794

POINT

●前庭リハビリテーション/平衡訓練は,前庭系の機能障害により低下した動作能力を改善,回復,維持し,さらに生活機能の向上をめざした,平衡機能を再獲得するための治療的介入である。

●平衡適応(adaptation)の促進,平衡覚の代用(substitution),慣れ現象(habituation)の獲得,といった治療コンセプトに基づいて治療が行われる。

●前庭代償不全の状態にある一側/両側前庭障害や,体位変換,視環境変化など特定の刺激で誘発されるめまいなど,慢性のめまい疾患が対象となる。

●実践的トレーニングは,前庭/視性-眼球運動機能(VOR系)トレーニング,姿勢・歩行制御機能(VSR系)トレーニング,および馴化(体位変換)トレーニングから構成される。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年9月)。

顔面神経麻痺のリハビリテーション

著者: 萩森伸一 ,   仲野春樹 ,   東貴弘

ページ範囲:P.796 - P.802

POINT

●顔面神経麻痺後にいったん生じた後遺症(病的共同運動,顔面拘縮)は治りづらく,これらの予防のため,electroneurography(ENoG)値が40〜50%以下の例では急性期からリハビリテーションを開始する。

●急性期では強力・粗大随意運動を避け,表情筋伸張マッサージ,上眼瞼挙筋を用いる開瞼運動,温熱療法を行う。

●回復期では上記に加え,ミラーバイオフィードバック療法や触覚フィードバック療法で病的共同運動の出現・増悪防止に努める。

●生活期においては完成した後遺症の軽減に,ボツリヌス毒素注射を併用するリハビリテーションが有効である。

《鼻領域》

鼻咽腔閉鎖不全のリハビリテーション—検査,治療についても含めて

著者: 矢富正徳 ,   田村知子 ,   塚原清彰

ページ範囲:P.803 - P.809

POINT

●鼻咽腔閉鎖機能不全(VPI)により開鼻声や呼気鼻漏出による子音の歪みが生じる。

●口蓋裂はVPIをきたす代表的な疾患で,就学までに正しい言語を獲得させることが重要である。

●VPIのリハビリには鼻咽腔機能賦活化訓練,補綴型発音補助装置による治療,re-push back手術や咽頭弁形成術などの外科手術,構音訓練がある。

嗅覚障害のリハビリテーション

著者: 志賀英明 ,   三輪高喜

ページ範囲:P.810 - P.813

POINT

●「olfactory training」と呼称される,4つの嗅素液に浸した綿花が入った瓶を1日2回嗅ぐ方法が欧州を中心として普及している。

●本邦では嗅覚障害に対するリハビリテーションを「嗅覚刺激療法」と呼ぶ。

●感冒後嗅覚障害,外傷性嗅覚障害のほか,パーキンソン病に伴う嗅覚障害への効果も示唆されている。

●日本人になじみのあるにおいによる方法の有効性を明らかとする臨床試験が開始された。

《頭頸部領域》

音声障害のリハビリテーション

著者: 長谷川智宏 ,   渡邊雄介

ページ範囲:P.814 - P.819

POINT

●音声障害のリハビリテーションを行う際には,まず音声障害を正しく評価する必要がある。

●音声リハビリテーションとは狭義の音声治療を指すことが多く,声の衛生指導と音声訓練に分けられる。

●音声訓練として,チューブ発声法,vocal function exerciseが挙げられる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年9月)。

言語障害のリハビリテーション

著者: 岩城忍 ,   丹生健一

ページ範囲:P.820 - P.823

POINT

●小児の機能性構音障害に関する診断と構音訓練について解説する。

●まず,構音器官の形態や機能の異常,発達の遅れや聴覚障害の有無を確認する。

●機能性構音障害に多くみられるkと∫の単音の構音訓練方法について紹介する。

●鑑別診断や構音の完成年齢を念頭に,構音訓練を効果的に計画する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年9月)。

嚥下障害のリハビリテーション

著者: 兼岡麻子

ページ範囲:P.824 - P.828

POINT

●嚥下障害のリハビリテーションは,評価に基づき多職種が共同して行う。

●嚥下を支える認知機能,身体機能,呼吸機能,口腔機能,栄養状態などの改善を図る。

●重度嚥下障害では,食物を用いない基礎訓練(間接訓練)から開始する。誤嚥や咽頭残留の軽減を図る方法を用いて,摂食訓練(直接訓練)を行う。

●頭頸部癌の手術治療に伴う嚥下障害では,代償法を用いた直接訓練を中心に行う。化学放射線療法に伴う嚥下障害に対しては,予防的なリハビリテーション(間接訓練)が推奨されている。

頸部郭清術後のリハビリテーション

著者: 伏屋洋志 ,   辻哲也

ページ範囲:P.829 - P.835

POINT

●頸部郭清術後は副神経の損傷によりshoulder syndromeが生じる可能性がある。

●shoulder syndromeは肩甲骨,肩関節の運動障害に頸部から肩周囲の痛み・しびれを伴い,患者のQOLを損なう。

●効果的なリハビリテーション治療には,shoulder syndromeに関わる解剖学的知識が不可欠である。

●リハビリテーション治療の目標は,肩関節の不動や過用,誤用の予防と痛み・しびれのコントロール,さらには麻痺筋の促通,肩関節の代償動作の指導などである。

喉頭摘出後のリハビリテーション

著者: 神山亮介

ページ範囲:P.837 - P.840

POINT

●代用音声は,患者の発声への意欲,身体的・社会的背景をふまえて選択する。

●術前に喉頭摘出後の失声,嗅覚・肺機能低下,ボディイメージの変化について具体的に説明し,リハビリの選択肢を明示しておく。

●喉頭摘出者用の人工鼻が特定保険医療材料として保険適用となった(2020年9月)。

Review Article

好酸球性中耳炎—四半世紀の軌跡

著者: 飯野ゆき子

ページ範囲:P.842 - P.855

Summary

●診断は貯留液から好酸球を証明し,診断基準小項目のうち2項目を満たすこと。

●治療の目標は耳漏の停止,貯留液の消失,骨導閾値を保つこと。

●骨導閾値上昇の危険因子は高度の粘膜病変と細菌感染であり,これらをコントロールする必要がある。

●長期管理療法の基本はトリアムシノロンの鼓室内投与で,高度病変耳や急性増悪時は集約的治療が有効である。コントロール不良例には生物学的製剤の投与も考慮する。

●各症例の重症度や治療効果の判定には重症度スコアリングが有用である。

●コントロール良好な鼓膜穿孔耳には鼓膜形成術が予後の点からも有効である。

原著

涙囊鼻腔吻合術鼻内法を施行したCornelia de Lange症候群に伴う先天性鼻涙管閉塞症の小児例

著者: 松見文晶 ,   斎藤友紀子 ,   佐久間琴子 ,   三ッ井瑞季

ページ範囲:P.856 - P.860

はじめに

 先天性鼻涙管閉塞症(congenital nasolacrimal duct obstruction:CNLDO)は新生児の6〜20%にみられる頻度の高い疾患であり1),多くは保存療法あるいはブジーで治癒するが,なかには治療に難渋する場合もある。Cornelia de Lange症候群(CdLS)は奇形症候群の1つで,眼科的異常(融合した眉毛,長くカールした睫毛など)をはじめとする特異的顔貌を呈し,涙道疾患の合併も稀でない2)。今回,CdLSに伴う,骨性鼻涙管の異常が疑われたCNLDOに対し,涙囊鼻腔吻合術鼻内法(endoscopic dacryocystorhinostomy:EnDCR)を施行した小児例を経験したので報告する。

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目次

ページ範囲:P.771 - P.771

欧文目次

ページ範囲:P.773 - P.773

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.795 - P.795

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.864 - P.864

 1964年のとある日曜日,当時4歳の私は父親に連れられて郊外の陸上競技場に行きました。コンクリート剝き出しの観客席がとても冷たかったことしか覚えていませんが,今から思えば東京オリンピックのサッカー準々決勝,チェコスロバキア対日本戦(駒沢競技場)でした。あれから57年,今日は東京オリンピック2020の開会式です。大会の象徴となる新国立競技場の整備計画白紙撤回,エンブレムの盗作疑惑,史上初の1年延期,会長や開閉会式関係者の相次ぐ辞任・解任,緊急事態宣言下での無観客開催と,異例づくしの大会となりました。「グダグダ」との批判もありますが,自由に物が言え,威信をかけた国家的事業に世論が影響を与えることができるこの国,満更,悪くはないと思っています。今回はテレビ観戦となりますが,人生二度目の自国開催五輪を少し足が弱ってきた父とともに迎えられることを悦び,日本国民の1人としてオリンピック・パラリンピックが無事終了することを心より祈ります。

 さて,今月号の特集は耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域のリハビリテーションです。人工内耳や顔面神経麻痺,音声障害・嚥下障害の(リ)ハビリテーションについては本誌でもたびたび取り上げてきましたが,最近では補聴器装用者や嗅覚障害に対するリハビリテーションの有用性も注目されるようになってきました。そこで,本特集では,耳・鼻・頭頸部各領域の代表的なリハビリテーションを取り上げ,第一線で活躍されているエキスパートの皆様に動画を交えて解説していただいています。普段,「リハビリは人任せ」という読者の皆様もぜひご通読いただき,最新のリハビリテーションの情報を身につけてください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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