icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻11号

2021年10月発行

雑誌目次

特集 手術道具・材料はこう使う!—プロに学ぶ基本とコツ〔特別付録Web動画〕

ページ範囲:P.869 - P.869

《耳科領域》

手術顕微鏡と内視鏡・外視鏡

著者: 窪田俊憲

ページ範囲:P.870 - P.876

Point

●顕微鏡と内視鏡は中耳腔内の病変部位によって使い分ける。

●tympanomeatal flap挙上時にexternal auditory canal(EAC)型鼓索神経に注意する。

●鼓室洞,耳管上陥凹の手術操作は,内視鏡を用いても難しいため,連続性に病変を剝離できているのか常に意識する。

●外視鏡は術者と3Dモニターを共有するため,指導や教育に威力を発揮する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

耳科手術用ドリル

著者: 須納瀬弘

ページ範囲:P.877 - P.881

Point

●正確なドリリングには快適で安定した姿勢と手の固定,患者の体位が重要である。

●小さなバーはむしろ危険である。局所の解剖に即した最も大きなバーを選択する。

●基本の動きは内側から外側,危ないところからどこかへ,構造と平行に。

●骨内の構造同定にはカッティングバーが有利だが,小さなカッティングバーは危険である。

●構造の露出と内耳道上下の削開にはダイヤモンドバーの有用性が高い。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

顔面神経と聴覚のモニタリング機器

著者: 細谷誠 ,   大石直樹

ページ範囲:P.882 - P.887

Point

●モニタリング機器の特性を知ることが重要である。

●顔面神経モニタリングは,顔面神経根刺激誘発筋電図(FREMAP)の値だけでなく,自発筋電図から得られる波形・検出音,および術中所見に応じて判断をすることが肝要である。

●聴覚モニタリングの際のノイズ軽減のためには発生源の把握が大切である。

●適切なタイミングでの術者への警告のためには,モニタリング担当医が手術操作とその意図を理解することが重要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

鋭匙/剝離子/マイクロ鉗子

著者: 白馬伸洋

ページ範囲:P.888 - P.891

Point

●①鋭匙,②剝離子,③鉗子の使い方のコツについて解説する.

●側頭筋の骨膜剝離は,鋭匙(微弯の大)の背を上にして,先端部を骨膜下へ潜り込ませるように,頭側から尾側へ向かって押し出すように剝離する。

●外耳道皮膚の剝離は,鋭匙(微弯の大)の背を上にして,側部を骨膜下へ潜り込ませるように筋肉の剝離を進める。

●鼓膜の二層剝離は,テラメッサー(直の中)の背を上にして,側部を鼓膜上皮層と粘膜層の間に潜り込ませるように,上皮層を下から上へテラメッサーを少し回転させて持ち上げるように剝離を進める。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

耳科手術材料

著者: 稲垣彰

ページ範囲:P.892 - P.895

Point

●手術に用いる材料には自家材料と人工材料があるが,それぞれに一長一短がある。

●内視鏡下耳科手術における伝音再建にはアパセラム®が利用できる。

●アパセラム®のフランジを足場として薄切耳介軟骨を屋根瓦状に留置することにより,内視鏡下手術に許される限られた手術動作でも,中耳の陰圧に対抗する鼓室を形成しうる。

●顔面神経の動的再建にナーブリッジ®が利用できる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

《鼻科領域》

鋭匙鉗子/截除鉗子/スタンツェ/サクションキュレット

著者: 和田弘太

ページ範囲:P.896 - P.900

Point

●鉗子の適切な選択・使用,内視鏡との位置関係,ワーキングスペースの確保が重要である。

●鋭匙鉗子は押し当てすぎると限界壁の損傷のおそれがあるため注意する。

●截除鉗子は強い力で押し当てない限り眼窩壁や頭蓋底損傷のリスクは少ないが,鉗子の先端部まで組織を完全には切除できない。

●スタンツェは引っ張って切除するのではなく,動かさず潰すようなイメージで切除する。さまざまな角度と向きがあり,使用する場所によって選択する。

●サクションキュレットは吸引が必要な部位の剝離や,少し力をかけて剝離をする必要がある部位で有用であるが,頭蓋底損傷などのリスクに十分注意すべきである。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

電気メス/バイポーラ/コブレーター

著者: 田中秀峰

ページ範囲:P.902 - P.905

Point

●経鼻内視鏡下に出血点を明視化する。

●血液や煙の吸引サポートをしてもらう。

●組織が炭化するほど焼灼しない。

●血管の走行を考慮し,中枢側を追加で凝固する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

マイクロデブリッダー(ブレード・バー)

著者: 高田洋平 ,   朝子幹也

ページ範囲:P.906 - P.909

Point

●マイクロデブリッダーブレードは,病的粘膜などの鉗除と吸引を同時にできる有用なツールである。

●眼窩・頭蓋底・視神経・内頸動脈周囲などの危険部位では,ブレードを慎重に操作することが大切である。

●上顎洞や前頭洞病変に対し,彎曲したブレードを用いることによって操作可能な範囲が広くなる。

●バーを取り付けることによって硬い骨も削除できるようになり,拡大前頭洞手術(EMLP)や頭蓋底手術にも有用なツールとなる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

レーザー/アルゴンプラズマ凝固法/高周波熱凝固法

著者: 中村陽祐 ,   竹内裕美

ページ範囲:P.910 - P.914

Point

●下鼻甲介粘膜の腫脹を軽減することによる鼻閉の改善を目的とする。

●粘膜の扁平上皮化生によって鼻漏やくしゃみにも効果がある。

●CO2レーザーとアルゴンプラズマ凝固法は非接触型で粘膜表層に,高周波熱凝固法は接触型で粘膜下組織に作用する。

●いずれの手技も局所麻酔下に短時間で施行でき出血も少ないため,外来手術(日帰り手術)として行われることが多い。

止血資材/創傷被覆材/フィブリン糊

著者: 牧原靖一郎

ページ範囲:P.915 - P.919

Point

●鼻副鼻腔内からの出血に対する止血方法の基本は,出血点を同定して凝固焼灼止血を行うことである。

●止血資材には,外来での鼻出血に対する処置などに使用される酸化セルロースやゼラチンスポンジ,主に頭蓋底手術に使用されるゼラチン・ヒトトロンビン合材など,状況に応じた選択肢がある。

●内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)終了後のパッキング資材として,圧迫による癒着予防効果をもち,吸引除去が可能なナゾポア®が有用である。

《頭頸部外科領域》

メス/剪刀/鑷子

著者: 上村裕和

ページ範囲:P.920 - P.925

Point

●術野を適切に確保して,トラクションとカウンター・トラクションをうまく利用する(場をつくる)ことがメス,剪刀の能力を引き出す鍵となる。

●右手(メス,剪刀など)と左手(鑷子など)を協調させることを学ぶ。

●メス,剪刀,鑷子の得意とする場面,不得意とする場面を理解して使用する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

電気メス/バイポーラ

著者: 松本文彦

ページ範囲:P.926 - P.929

Point

●電気メスとバイポーラの原理を理解して使用する。

●適切なモードを選択して使用する。

●カウンタートラクションを十分にかけ,電気メスで切るのではなく組織に近接させるだけのイメージをしっかり意識する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

ハーモニック/リガシュア/サンダービート—頭頸部手術でのエナジーデバイステクニック

著者: 塚原清彰

ページ範囲:P.930 - P.933

Point

●自分がどのタイプの術者かを認識する。

●ハーモニックは術者が持つのに向いている。

●リガシュアは助手が持つのに向いている。

●盲目的切除による誤切除に注意する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

デービス開口器/FK-WOリトラクター/佐藤式喉頭鏡

著者: 楯谷一郎

ページ範囲:P.934 - P.939

Point

●経口手術の際に使用される開口器にはそれぞれに利点・欠点があり,適切な使用部位も異なる。

●デービス開口器は経口手術で最も使用される開口器であり,中咽頭上壁・後壁・側壁の展開に適している。

●佐藤式喉頭鏡は最も下咽頭の展開に優れた喉頭鏡で,構造もシンプルで使いやすく,舌圧子(大)を装着すれば中咽頭前壁の展開にも優れる。

●FK-WOリトラクターには多彩なブレードがあり,部位によって適切なブレードを使用できるメリットがあるが,選択に困ることが欠点にもなる。中咽頭全域の展開に適している。

ラリンゴマイクロサージャリー機器

著者: 二藤隆春

ページ範囲:P.940 - P.944

Point

●直達喉頭鏡は無理なく挿入できるサイズを選択する。

●喉頭鉗子は愛護的に扱い,力まず把持する。

●喉頭鉗子の一部を喉頭鏡に当てるなどし,手の震えを抑える。

●鉗子類の特性を理解し,ダメージを与えない安全な手技を選択する。

頭頸部領域の神経モニタリング機器

著者: 手島直則 ,   丹生健一

ページ範囲:P.945 - P.949

Point

●甲状腺手術や耳下腺手術における術中神経モニタリング機器の使用は,今や不可欠なものになりつつある。

●術中顔面神経モニタリングを併用することで安全に顔面神経を同定でき,神経への負担の少ない手術操作が可能となる。

●甲状腺手術において術中神経モニタリングを使用することで,容易に反回神経を同定して安全に神経を追跡でき,術中の負荷軽減と反回神経の機能温存を図ることができる。

ネオベール®

著者: 岡上雄介 ,   児嶋剛 ,   堀龍介

ページ範囲:P.950 - P.954

Point

●ネオベール®はポリグリコール酸を材料としたシート状の吸収性縫合補強材である。

●細切することで,さまざまな形状の創面に合わせた被覆が可能となる。

●フィブリン糊との親和性が高い。

●フィブリン糊と併用することで,疼痛緩和・出血予防・瘢痕拘縮の抑制に有効である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年10月)。

--------------------

目次

ページ範囲:P.865 - P.865

欧文目次

ページ範囲:P.867 - P.867

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.956 - P.956

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.960 - P.960

 いま東京パラリンピックが開催されています。東京オリンピックの開催は賛否両論がありましたが,少なくとも多くの感動を与えてくれたことは間違いないと思います。素晴らしいパフォーマンスを発揮されたアスリートの皆さんに感謝したいと思っています。一方,コロナ感染拡大の勢いが収まらず,全国の医療現場は厳しい状況に陥ってしまっています。子どもたちへの感染も広がっている状況で,夏休みが明けたあとどのようになるのか,本当に予断を許さない状況です。世の中が少しでも良い方向に向かってくれることを祈っています。

 さて,今月の特集は「手術道具・材料はこう使う!—プロに学ぶ基本とコツ」です。昔はどの分野でもプロの技は盗むもの,とされていましたが,いまは多くの分野で情報が公開され,従来は質問することも許さない雰囲気だったプロ側も,自らの技のコツを惜しみなく伝授する傾向が世の中全体で強くなってきています。学ぶ側からすると嬉しい変化ですが,しかし私の若いときは,まだ技を「盗む」雰囲気が多分に残っていました。卒後5年目に勤務した静岡赤十字病院では,当時院長を務められていた頭頸部頭蓋底外科のパイオニアである行木英生先生の技を盗もうと私自身必死でした。プロの術者は,難しい局面でも手術のペースを変えることなく,一定のペースで手術を進められるものであり,そして何よりプロの術者としてのオーラを纏い,その空間を完全に支配しているという感じを受けました。術者としての頂を見せていただいた感じで,その経験はその後の大きな財産となりました。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?