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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻12号

2021年11月発行

原著

アナフィラキシー後,吐き出し法にて舌下免疫療法を継続しえたスギ花粉症例

著者: 小池隆史1 高橋優宏1 古舘佐起子1 岡晋一郎1 岩崎聡1 岡野光博2

所属機関: 1国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科 2国際医療福祉大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.1026 - P.1031

文献概要

はじめに

 舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)はアレルギー性鼻炎の根治的治療であるアレルゲン免疫療法の1つである。本邦ではスギ花粉症に対して2002年以降に厚生労働省研究班による臨床研究がスタートし,多施設でのSLITの有効性が確かめられ,2014年にスギ花粉症に対して保険適用された1,2)

 従来の皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)と比較して,重篤なアナフィラキシー反応誘発の可能性がきわめて低く,入院を必要とせず自宅での施行が可能であることが特長である3)。しかし,局所的な副反応の発生はSCITよりも多いと報告されており,アナフィラキシーの発生報告も皆無ではないため,SLIT実施にあたっては,かかりつけ医に加え,患者自身も起こりうる副作用とその対策の概要を理解することが求められる3)。また,副反応への対応については『鼻アレルギー診療ガイドライン』にも記載されているが,副反応改善後のSLIT再開の時期や,投与量,投与法の調整などについては,まだ現場の医師の裁量によるところが大きい4)

 今回われわれは,飲み込み法にてSLITを導入後の早期にアナフィラキシーを生じたが,症状改善後に減量したうえで吐き出し法にてSLITを再開した結果,アナフィラキシーを再発せずに経過良好となった症例を経験したので報告し,文献的に考察する。

参考文献

1)Okubo K, et al:A randomized double-blind comparative study of sublingual immunotherapy for cedar pollinosis. Allergol Int 57:265-275, 2008
2)増山敬祐:Year in Review鼻アレルギー:舌下免疫療法について.アレルギー64:1210-1214,2015
3)寺田哲也:舌下免疫療法の副作用対策.MB ENT(193):41-45,2016
4)日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会(編):鼻アレルギー診療ガイドライン—通年性鼻炎と花粉症 2020年版.ライフ・サイエンス,東京,2020
5)Cardona V, et al:World allergy organization anaphylaxis guidance 2020. World Allergy Organ J 13:100472, 2020
6)中村陽一:アナフィラキシーガイドライン.アレルギー67:17-23,2018
7)増山敬祐・他:アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の指針.日鼻誌53:579-600,2014
8)藤枝重治:アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の指針2014,アレルギー性鼻炎に対する免疫療法の指針2011—概略.MB ENT(236):97-104,2019
9)小川由起子・他:スギ花粉症に対する舌下免疫療法207例の副反応の検討.日耳鼻118:1429-1435,2015
10)Kawashima K, et al:Development of eosinophilic esophagitis following sublingual immunotherapy with cedar pollen extract:a case report. Allergol Int 67:515-517, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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