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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻13号

2021年12月発行

雑誌目次

特集 頭頸部の再建をマスターする!〔特別付録Web動画〕

ページ範囲:P.1061 - P.1061

《皮弁の採取法と術後管理》

DP皮弁・大胸筋皮弁・広背筋皮弁

著者: 田中顕太郎

ページ範囲:P.1062 - P.1065

POINT

●頭頸部再建に使用可能な有茎皮弁について概略を述べる。

●胸三角筋部皮弁(DP皮弁)は,内胸動静脈第2,3肋間穿通枝を血管茎とし,前胸部から肩部にかけて筋体を含まない形で作成する。

●大胸筋皮弁は,乳頭部のやや内側に皮島をデザインし,大胸筋体とともに胸肩峰動静脈を血管茎として作成する。

●広背筋皮弁は,筋体上に作成された皮島とともに広背筋体を剝離し,胸背動静脈を血管茎として作成する。

前腕皮弁・腹直筋皮弁

著者: 大﨑健夫 ,   榊原俊介 ,   寺師浩人

ページ範囲:P.1066 - P.1069

POINT

【前腕皮弁】

●橈側の剝離では橈骨神経浅枝を温存する。

●血管茎の剝離は先に中枢側まで剝離し,全体像をつかむとやりやすい。

●深部静脈と皮静脈を交通する穿通静脈(perforating vein)を含めて挙上すると有用である。

【腹直筋皮弁】

●臍周囲に穿通枝が多い。また,大きな皮弁が必要な場合は頭外側へ拡大する。

●メッシュでの補強,腹帯装着など,腹壁瘢痕ヘルニアの予防に努める。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

前外側大腿皮弁

著者: 宮本慎平 ,   岡崎睦

ページ範囲:P.1070 - P.1074

POINT

●術前の超音波カラードップラーは不可欠である。

●穿通枝は中点型と近位型に分けられる。

●中点型は下行枝から派生する筋肉内型の穿通枝が大半である。

●近位型は大腿筋膜張筋の筋・筋膜移行部あたりに存在し,斜行枝から派生することが多い。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

腓骨皮弁・肩甲骨(皮)弁

著者: 前田拓 ,   林利彦

ページ範囲:P.1076 - P.1083

POINT

●腓骨(皮)弁は腓骨動静脈を主な栄養血管とし,腓骨と腓骨動脈の穿通枝で栄養される皮島から構成される骨(皮)弁である。比較的長めの骨を採取可能で,特に中顔面や下顎の再建においては最も使用されることの多い硬性組織再建方法の1つである。

●肩甲骨(皮)弁は肩甲下動脈〜肩甲回旋動静脈を栄養血管とする骨(皮)弁であり,頭頸部・四肢の外傷や,腫瘍摘出による軟部組織欠損を伴う骨欠損症例がよい適応となる。

●肩甲骨(皮)弁は,胸背動静脈の角枝を利用することで血管柄をより長く採取でき,骨弁の長さに制限はあるものの頭頸部再建に用いることが可能である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

遊離空腸弁採取術と胃管再建術

著者: 中村哲

ページ範囲:P.1084 - P.1087

POINT

●下咽頭喉頭頸部食道切除術における空腸弁採取。

●空腸弁採取にあたっては,腸間膜の血管透見(transillumination of mesentery)により血管走行を確認する。

●咽頭喉頭食道全摘術における遊離空腸±大彎側細径胃管再建。

●赤外観察カメラによるインドシアニングリーン蛍光法で胃管の血流確認を行う。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

皮弁の術後管理

著者: 長谷川弘毅 ,   朝戸裕貴

ページ範囲:P.1088 - P.1091

POINT

●皮弁モニタリングは,視診,触診,pin prick testなどを基本として,他の方法を補助的に組み合わせることで,より高い精度を目指している。

●早期離床は,肺炎,深部静脈血栓,せん妄などの術後合併症を低下させる。また,早期離床させた場合も,吻合部血栓の割合は増加しないとされている。

●enhanced recovery after surgery(ERAS)といわれる,術後回復強化を目的としたプログラムが提唱されており,頭頸部再建領域でもガイドラインが作成されている。

●術後の抗血栓療法に関しては,理想的なプロトコールは確立されていない。薬剤投与時は症例ごとに出血のリスクに注意する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

《部位別再建法》

咽頭皮膚瘻の再建

著者: 蝦原康宏

ページ範囲:P.1092 - P.1095

POINT

●瘻孔発生時の咽頭皮膚瘻作成の際,最優先すべきは頸動脈破裂の回避である。

●咽頭皮膚瘻の作成は,①瘻孔部位からできるだけ短い距離,②頸動脈をまたがない,③気管孔から遠ざける,のが目標となる。

●咽頭皮膚瘻の閉鎖は,肉芽による自然閉鎖・一期縫縮で完治することもあるが,局所・有茎皮弁を必要とする症例も多く,局所の評価と計画性のあるデザインが必要である。

甲状腺癌切除後の気管・喉頭の再建

著者: 大月直樹

ページ範囲:P.1096 - P.1101

POINT

●気管や喉頭への浸潤例に対する手術は根治性を損なうことなく,発声および嚥下機能をできる限り温存することが必要である。

●残存気管の状態や反回神経麻痺の有無,および年齢や全身状態を考慮して術式を検討する。

●気管・喉頭切除後の再建法には一期的再建と二期的再建がある。

●二期的再建においては,気管軟骨部の2/3周および気管軟骨の5気管輪以上の欠損では支持組織再建が必要となる。

●甲状軟骨の1/2以上の切除,輪状軟骨の2/3以上の切除では喉頭全摘術の適応となる。

顔面神経の再建

著者: 垣淵正男

ページ範囲:P.1102 - P.1106

POINT

●神経再建の方法には,神経の端々および端側縫合,神経移植,神経移行などがある。

●側頭骨外の顔面神経欠損には神経移植による再建が行われることが多いが,複数の分枝を再建する場合は工夫を要する。

●側頭骨内・頭蓋内の顔面神経欠損に対しては,神経移行術が行われることが多い。

●顔面神経再建後は,病的共同運動や顔面拘縮などの後遺症を予防するための後療法が重要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

遊離皮弁による口腔・中咽頭の再建

著者: 安永能周 ,   荒木淳 ,   中尾淳一 ,   石井義剛 ,   森裕晃

ページ範囲:P.1108 - P.1113

POINT

●遊離皮弁による口腔・中咽頭の再建で重要なのは,温存された組織を最大限に活かして,嚥下機能と構音機能を保つことである。

●舌半切の再建では薄い皮弁を用いて,残存舌の動きを妨げない再建を行う。

●舌亜全摘以上の再建では口峡部を狭く作ることによって,嚥下に必要な中咽頭圧と,構音に必要な狭い共鳴腔を確保する。

●中咽頭の上側壁中心型欠損に対する再建では,Gehanno法や舌根縫い上げ法を行い,鼻咽腔と口峡部をできるだけ狭く作る。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

下顎の再建—血管柄付き骨移植またはチタンプレートを用いて

著者: 櫻庭実

ページ範囲:P.1114 - P.1118

POINT

●下顎硬性再建における手術のポイントを述べる。

●骨移植による再建では,残存歯の咬合と,将来の骨結合性インプラントの可能性に配慮する。

●下顎プレートによる再建では,感染や露出といった合併症を回避するよう注意する。

下咽頭の再建—喉頭温存の場合を含めて

著者: 後藤孝浩

ページ範囲:P.1120 - P.1123

POINT

●下咽頭の再建には咽頭喉頭食道全摘(TPLE)と部分切除に対する再建があり,どちらも血管柄付き遊離組織移植が第一選択となっている。

●TPLEに対しては,空腸による再建が標準術式といえるほど最も多く行われてきたが,腹部合併症のリスクやコストの問題から,一部の施設では大腿皮弁による再建も行われるようになっている。

●下咽頭部分切除に対しては,切除範囲などに応じて空腸(パッチ)あるいは薄い遊離皮弁が用いられるが,下咽頭部分切除の再建を行っている施設は少なく,適応基準も含めた検討がまだ必要である。

●下咽頭の再建は放射線照射後の症例も多く,術後の咽頭皮膚瘻への対策も考えておくべきで,また空腸による再建後は腹部合併症にも対応できるよう消化器外科との連携が必要不可欠である。

上顎・眼窩の再建

著者: 野村正 ,   橋川和信

ページ範囲:P.1124 - P.1127

POINT

●一次再建では,遊離腹直筋皮弁移植を中心にできるだけシンプルな再建を心がける。

●眼窩底欠損症例では,チタンメッシュなどの硬組織再建を検討する。

●頭蓋底手術では,移植皮弁により頭蓋内と鼻腔の確実な遮断を行う。

●義眼床再建では,義眼を挿入する十分なスペースを作成する。

頭蓋底の再建

著者: 有川真生 ,   景山大輔 ,   赤澤聡

ページ範囲:P.1128 - P.1133

POINT

●頭蓋底再建の最大の目的は頭蓋底と副鼻腔の確実な遮断である。

●小欠損にはpericranial flapや側頭筋弁などの局所皮弁が用いられるが,放射線照射例や栄養血管が切除される場合には不適である。

●遊離皮弁の際は移植床血管の候補が少ないため,確実な確保が必要である。

内視鏡下頭蓋底再建—有茎鼻中隔粘膜弁を用いて

著者: 山﨑一樹 ,   花澤豊行

ページ範囲:P.1134 - P.1137

POINT

●有茎鼻中隔粘膜弁の挙上では,栄養血管である蝶口蓋動脈中隔後鼻枝を損傷しないことが重要である。

●中隔後鼻枝を損傷しないためには,蝶形骨洞自然口の直下から後鼻孔縁直上までを粘膜弁の茎として作製することが大切である。

●前頭蓋底再建は大腿筋膜2枚と有茎鼻中隔粘膜弁を用いたmultilayer reconstructionを行う。

頸動脈の再建

著者: 小澤宏之 ,   秋山武紀 ,   尾原秀明

ページ範囲:P.1138 - P.1143

POINT

●頭頸部癌の頸動脈浸潤例において,頸動脈合併切除を伴う拡大手術が予後に寄与するかどうかは明らかではないが,切除による長期生存例があることから,症例によって選択肢になりうる。

●頸動脈再建を行う場合には,術前に血管造影検査にて頸動脈遮断テストを行い,一時的な遮断に耐えることができるか評価する。また自家静脈グラフトによる血行再建を行う場合には,採取する血管について評価を行う。

●頸動脈再建手術では,周術期の出血リスクや脳血管障害の発生リスクがある。周術期管理には慎重を期す必要がある。

書評

帰してはいけない外来患者 第2版

著者: 坂本壮

ページ範囲:P.1119 - P.1119

 “人は変えられるのは 未来だけだと思い込んでいるけど 未来は常に 過去を変えているんじゃないかな”

 私は主に救急外来で仕事をしている。救急というと多発外傷やショック,心肺停止など,死に瀕している患者さんばかりが来院すると思われがちだが,そんなことはない。『救命病棟24時』,『コード・ブルー』,最近では『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』,『ナイト・ドクター』など,おいおい,こんな若手がそんなことを,それも美男美女ばかりが……てな感じの突っ込みどころ満載ながらも楽しいドラマに出てくるような症例はまれだ。リアルな救急外来で出合う症例の多くは,発熱,呼吸困難,意識障害,意識消失,めまい,何らかの痛みなどを主訴に来院し,バイタルサインはおおむね安定している。最近では,高齢者が動けない,元気がない,食欲がないといった症例も多く,病歴聴取や身体所見の評価に苦渋しながら,みんな対応しているだろう。

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目次

ページ範囲:P.1057 - P.1057

欧文目次

ページ範囲:P.1059 - P.1059

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1144 - P.1144

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.1148 - P.1148

 本年6月号のあとがきでお知らせしました通り,来年5月25日(水)〜28日(土),神戸国際会議場とポートピアホテルにおきまして第123回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会総会・学術講演会を主催させていただくことになりました。神戸大学にとりましては昭和43年の第69回(会長:浅井良三先生)以来の栄誉であり,教室員一丸となって鋭意準備を進めております。皆様ご承知の通り,2021年5月12日の定時社員総会にて本学会名を「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」と変更することが承認され,期せずして第123回は新学会名で初めての総会・学術講演会となります。大きな節目となる会を担当させていただく重責に身の引き締まる思いです。

 宿題報告では,塩谷彰浩教授(防衛医大)に「咽喉頭癌の経口的手術と反回神経の再生医療」,中川尚志教授(九大)に「側頭骨・中頭蓋底疾患の病態と治療」,臨床講演では欠畑誠治教授(山形大)に「耳科手術のパラダイムシフト—内視鏡下手術と外視鏡下手術」,河田了教授(大阪医科薬科大)に「耳下腺腫瘍の臨床—体系的な診断・治療から得た新知見と将来展望」について御講演いただきます。特別講演・招聘講演は,がん光免疫療法を開発した小林久隆先生(NIH),同治療法を実用化し世界に先駆けてわが国に導入した楽天メディカルジャパン社 三木谷浩史会長,国産初の手術支援ロボットhinotoriTMを開発したメディカロイド社 橋本康彦会長(川崎重工社長)と,「神戸医療産業都市」に因んだ方々にお願いし,そのほかにも「第123回」に因み「ホップ・ステップ・ジャンプ」と,本会の益々の発展を予感させるさまざまな企画を揃えております。

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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