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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻5号

2021年04月発行

雑誌目次

増刊号 術前画像と術中解剖—カンファレンスで突っ込まれないための知識〔特別付録Web動画〕

序文

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.1 - P.1

 手術を施行するにあたり,鉗子や器機を上手に使いこなす「メスさばき」と並んで重要なのが解剖の知識でしょう.マクロ解剖はもちろん,内視鏡下の解剖や顕微鏡下の解剖も含め,人体の正常構造を熟知しているからこそ疾病による構造の変化に対峙できます.一方,各種の画像検査は,術前に疾病の性状や拡がりを確認するためのものですが,画像診断にも解剖の知識は欠かせません.手術が上手な先生は,2次元的な画像から得られる情報を頭のなかで3次元的に構築し,病変部位と周辺臓器のイメージをしっかり持って手術に臨みます.術中,臓器を切り開いて病変に到達し,周囲の正常組織を傷つけることなく病変を取り除く.この過程において,例えば「この臓器の裏側には何があるか」「ここを切るとその奥に何があるか」など,解剖の知識を駆使して3次元的なイメージを術野に重ね合わせることで瞬時に判断し,手術操作を進めていきます.これができるようになると,手術が飛躍的に安全かつ円滑になります.

 術前カンファレンスはどの病院でも必ず開催するものですが,術者だけでなく,手術に直接関わらない医師も含めた多人数が1つの画像を診ることで,術前診断や術式の確認はもちろん,カンファレンス前には気が付かなかった画像所見が発見され,術式が修正されることもあります.また過去の経験から術中に注意すべき点を指摘してくれる医師もいます.筆者がまだ研修医のころ,画像カンファレンスといえばシャーカステンにX線やCT画像のフィルムを貼り出し,それを供覧しながら症例のプレゼンをしていました.それはそれで準備が大変で緊張の連続でしたが,今は医療画像管理システム(PACS)により複数の画像を並べて提示したり拡大したり,供覧方法は自由です.2020年からのコロナ禍を受け,カンファレンスはウェブでの開催が主流になりましたが,画像カンファレンスはセキュリティさえしっかり整っていれば,ウェブ上でその価値がさらに高まると考えます.

1.耳領域

耳介・外耳道病変に対する手術

著者: 藤田岳 ,   柿木章伸

ページ範囲:P.6 - P.11

Point

●外耳道病変では顕微鏡や内視鏡を用いた観察をまず丁寧に行う.

●高分解側頭骨CTで外耳道の骨破壊の有無や程度について確認する.

●外耳道真珠腫や腫瘍性病変の場合は,乳突蜂巣や中耳など隣接する構造への進展の有無や程度について確認する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

耳管病変に対する手術—耳管ピン挿入術

著者: 大島猛史

ページ範囲:P.12 - P.18

Point

●耳管開放症難治例に対しては耳管ピン挿入術が有効であるが,術前に鑑別診断を適切に行わなければならない.特に上半規管裂隙症候群は術前CTで鑑別できる.

●耳管ピン挿入術は安全な低侵襲手術であるが,術前CTによる耳管周囲蜂巣,内頸動脈の評価が勧められる.

●耳管周囲蜂巣,内頸動脈は術中に顕微鏡下では確認しにくいが,内視鏡を用いることにより術前画像のイメージを確認できる.

中耳炎・真珠腫に対する手術

著者: 高橋邦行

ページ範囲:P.20 - P.29

Point

●正常画像や反対側と比較して,解剖学的重要構造物と病変の関係を把握する.また,軸位断だけでなく冠状断で見ることに習熟する.

●側頭骨は正常バリエーションが多いことに注意する.特に乳突蜂巣の発育の程度,形状をよく見る.中頭蓋窩の高さが低い場合や,乳突洞が小さい場合は注意を要する.

●病変の性質・進展範囲を確認・推察する.病変と思われる陰影が炎症性硬化組織なのか/真珠腫なのか/滲出液か,進展範囲がどこまでかによって手術プランが変わるため,画像から推察する.

耳小骨奇形・連鎖離断に対する手術

著者: 田中康広

ページ範囲:P.30 - P.35

Point

●耳小骨奇形はツチ骨またはキヌタ骨の固着(以下,固着型),キヌタ・アブミ関節の離断(以下,離断型),アブミ骨固着の3つに分類される1).固着型の診断は画像では困難な場合が多いものの,ツチ骨またはキヌタ骨と上鼓室の骨壁との間で起こることが多く,術中に同部を注意深く観察し,可動性を確認する.

●離断型はキヌタ・アブミ関節に離断を生じることが多く,術前の画像にて同部に焦点を当てた観察が必要であり,キヌタ骨長脚やアブミ骨上部構造の残存度により耳小骨形成の方法が異なるため,術中にキヌタ骨,アブミ骨の状態を見極めて術式を選択する.

●耳小骨の連鎖離断があり耳小骨奇形が疑われても,鼓室内にわずかな軟部陰影を認めた場合には先天性真珠腫による骨破壊の可能性があるため,常に先天性真珠腫の存在を念頭に置いて画像診断を行う.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

耳硬化症に対する手術

著者: 西池季隆

ページ範囲:P.36 - P.41

Point

 疾患の病期が進行していたり解剖に変異が認められたりすれば,手術の遂行が困難であったり術後成績が不良となったりする可能性があり,下記を術前にCTにて確認する.

●卵円窓前方および蝸牛周囲の脱灰像を確認する.

●卵円窓の狭小化やアブミ骨底板の骨肥厚を確認する.

●顔面神経水平部の下垂(overhang)やアブミ骨の変形を確認する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

人工聴覚器手術

著者: 野口佳裕 ,   岡愛子 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.42 - P.50

Point

●人工内耳・EAS手術では,内耳奇形の診断が重要である.

●VSB手術では,中耳炎術後状態,顔面神経走行異常,高位頸静脈球,中耳奇形を評価する.

●Baha®手術では,側頭骨CTを通常より上方まで撮影し,インプラント想定部位の骨の状態を評価する.

顔面神経疾患に対する手術

著者: 綾仁悠介 ,   萩森伸一

ページ範囲:P.52 - P.57

Point

●術中損傷の回避と,十分な減荷の施行にあたっては,顔面神経の臨床解剖に精通することに加え,術前の画像診断,特に側頭骨CTにて個々の症例ごとに患者特有の解剖について評価しなければならない.

●顔面神経とその周囲の構造の把握が重要である.手術工程の順に,①第2膝部から乳突部への外側偏位の程度,②顔面神経窩の広さと発育,③retrofacial cellの発育,④鼓室部の骨壁欠損,⑤上前鼓室での中頭蓋底の高さ,に術前から着目しておく.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

内リンパ囊手術(めまいに対する手術)

著者: 北原糺

ページ範囲:P.58 - P.64

Point

●メニエール病の確定診断のため,施行可能であれば,術前に内リンパ水腫の存在を内耳造影MRIで確認する.

●内リンパ囊手術を安全に施行するため,術前に側頭骨CTでS状静脈洞の張り出し,頸静脈球の高さ,顔面神経の走行ルートを把握する.

●内リンパ囊手術を円滑に施行するため,術前に側頭骨CTで前庭水管,内リンパ囊のおよその位置を確認する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

側頭骨悪性腫瘍に対する手術

著者: 堤剛

ページ範囲:P.66 - P.74

Point

●側頭骨の微細構造を立体的に理解する.

●解剖学的個人差のある部分を画像から正確に読み取る.

●微細な外耳道外進展を厳密に評価する.

●切除範囲に影響する静脈血流の個人差を事前に評価する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

小脳橋角部腫瘍に対する手術—経・後迷路法

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.76 - P.82

Point

 本稿では経側頭骨手術である経迷路法および後迷路法に対象を絞って解説する.術前画像診断のポイント,画像診断に基づく術中解剖の把握方法のポイントとして,以下の3点を挙げる.

●顔面神経,蝸牛神経の走行と腫瘍との位置関係

 神経の腫瘍背側走行例では機能温存手術は困難となるため,機能温存を主目的とした手術は避けるべきであり,術前の画像評価に基づく神経走行の判断がきわめて重要である.

●内耳道底への腫瘍進展の有無

 聴力温存を企図する場合,内耳道底まで腫瘍が充満した例ではどのアプローチ法であっても聴力温存と腫瘍全摘の両立は困難である.確実な聴力温存を優先させるのであれば,内耳道底付近の腫瘍は全摘せず亜全摘などにとどめる選択をする必要もある.

●S状静脈洞の突出と高位頸静脈球

 S状静脈洞の優位側が術側の場合,S状静脈洞は側頭骨内に突出し,また,その場合には高位頸静脈球を合併していることが多い.側頭骨CTにて術前に血管走行を確認しておくことが必要である.

2.鼻副鼻腔領域

鼻中隔彎曲症・外鼻変形に対する手術

著者: 細川悠

ページ範囲:P.84 - P.90

Point

●鼻中隔の解剖を理解し,segmentごとの術式を知る.

●L-strutが彎曲しているか否かで術式が異なる.

●梨状口と下鼻甲介に注目すると前彎が見えてくる.

●外鼻変形がもたらす鼻腔の狭小化を理解する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

アレルギー性鼻炎に対する手術

著者: 濱田聡子

ページ範囲:P.92 - P.97

Point

●鼻閉の要因となる鼻腔の狭小部位を,画像で詳細に同定する.

●鼻腔内の画像所見により,粘膜変性手術や鼻腔形態改善手術などの術式選択を行う.

●下鼻甲介骨の溝状構造を確認し,後鼻神経末梢枝を含む索状物の走行を把握し,確実に切断する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

慢性副鼻腔炎に対する手術—篩骨洞手術

著者: 吉川衛

ページ範囲:P.98 - P.103

Point

●篩骨洞は,眼窩や頭蓋が隣接し,迷路のような構造をしているため,画像検査により解剖学的な特徴を必ず術前に確認しておく.

●解剖学的な安全領域と危険領域を認識しながら手術操作を行う.

●鼻副鼻腔形態が大きく変貌している再手術症例などでの副損傷を回避するだけでなく,術前プランニングにおいても手術用ナビゲーションシステムが有用である.

慢性副鼻腔炎に対する手術—前頭洞手術

著者: 前田陽平 ,   端山昌樹

ページ範囲:P.104 - P.110

Point

●必ずthin slice CTで読影する.

●通常の方法で開放できるのかを予測する.

●鉤状突起の付着部を把握する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

慢性副鼻腔炎に対する手術—上顎洞手術

著者: 都築建三

ページ範囲:P.112 - P.122

Point

●術前画像所見から腫瘍を鑑別して否定し,骨破壊の有無,上顎洞病変の性状,炎症波及の程度を把握する.

●炎症が上顎洞,前部篩骨洞,前頭洞に認められ,後部篩骨洞,蝶形骨洞に認められなければ,上顎洞炎からの感染型が多い.

●上顎洞の炎症性貯留物は,術中に完全に除去しなければ再発する.

慢性副鼻腔炎に対する手術—蝶形骨洞手術

著者: 御厨剛史

ページ範囲:P.124 - P.129

Point

●蝶形骨洞と周辺の重要臓器は近接し,隔壁となる骨がない部分がある.

●側窩は上顎洞後方に存在し,病変にアプローチしにくい領域である.

●洞内中隔,洞間中隔,神経隆起,頸動脈管など,術中指標となるべき構造には個体差があり,個々の症例ごとに十分に理解しておく.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

副鼻腔囊胞に対する手術

著者: 比野平恭之

ページ範囲:P.130 - P.139

Point

●術前CTだけではなくMRIも撮影することが,囊胞の診断と位置の把握に有用である.

●各副鼻腔で囊胞と周囲の眼窩,鼻涙管,視神経管,頭蓋の位置などにより手術アプローチが異なる.

●手術では視野と操作性の確保のため鼻中隔,鼻甲介の処理を必要とする場合があり,ナビゲーションの併用が望ましい.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

副鼻腔良性腫瘍(乳頭腫)に対する手術

著者: 田中秀峰

ページ範囲:P.140 - P.147

Point

●CTで骨肥厚部を確認し,MRIで脳回様パターンを見つける.

●腫瘍進展がないところからワーキングスペースを作る.

●対側からのアプローチも選択肢に入れる.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

前頭蓋底病変に対する内視鏡下手術

著者: 花澤豊行 ,   山﨑一樹

ページ範囲:P.148 - P.155

Point

●腫瘍周囲の構造物を切除してワーキングスペースを確保し,腫瘍茎を同定するとともに,腫瘍をどのように分割切除するか検討する.

●術前画像検査により前頭蓋底の切開部位を推測し,術中所見と照らして確定する.

●頭蓋底の再建方法は手術のプランニングにおいてとても重要である.鼻腔に何が温存できるのかを,ワーキングスペース確保のため切除する構造物と兼ね合わせて考える.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

トルコ鞍・傍鞍部・側頭下窩病変に対する内視鏡手術

著者: 青木聡 ,   大村和弘

ページ範囲:P.156 - P.161

Point

●Onodi cellの有無を確認する.

●蝶形骨洞前壁への上鼻甲介の付着位置を確認する.

●蝶形骨洞の発育具合を把握する.

眼窩壁骨折・鼻骨骨折に対する手術

著者: 高林宏輔

ページ範囲:P.162 - P.170

Point

●眼窩壁骨折における超緊急症例の把握:外眼筋を追跡することで超緊急の整復の要否を判断する.

●眼窩壁骨折の整復におけるランドマーク:眼窩下神経・下眼窩裂・上顎洞後上壁が整復にあたり信頼のおけるランドマークである.

●鼻骨骨折における観血的整復の要否:鼻骨を支持する上顎骨前頭突起・前頭骨・鼻中隔の骨折の状態を把握し,観血的整復の要否を判断する.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

3.咽頭・喉頭領域

睡眠時無呼吸に対する手術

著者: 北村拓朗 ,   鈴木雅明 ,   髙橋梓 ,   伊藤有紀 ,   岩永明日菜 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.172 - P.178

Point

●閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する外科的治療の適応や術式決定のためには,咽頭視診や経鼻内視鏡検査に加え,補助的に画像診断を用い上気道形態の評価を行う必要がある.セファロメトリーは頭頸部の顎顔面の硬組織ならびに軟組織双方を頭部矢状面上に投影し評価することが可能で,OSAの補助診断の一手法としてもその有用性が認識されている検査法である.

●セファロメトリーの項目のうち,口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)の効果予測因子として,facial axis,PNS-P,MP-H,lower pharynxなどが知られている.

●PNS-P,MP-H,lower pharynxは電子カルテ上の画像システムでも計測可能であり,PNS-P>40mm,MP-H<20mm,lower pharynx>8mmを基準としてUPPPの適応を判定する.

音声障害に対する手術

著者: 福原隆宏

ページ範囲:P.180 - P.187

Point

●声帯病変による音声障害に対する手術(喉頭微細手術)

 ・喉頭ストロボスコピーで声帯粘膜振動を評価する.

 ・高画質ファイバースコープで術中観察をする.

 ・術中所見で術式選択をする.

●反回神経麻痺による音声障害に対する手術(甲状軟骨形成術Ⅰ型,披裂軟骨内転術)

 ・原因検索と披裂部の受動運動の有無を確認する.

 ・3D-CTを活用して術式の決定をする.

 ・CTや超音波検査装置によって披裂軟骨の位置予測を行う.

●痙攣性発声障害による音声障害に対する手術(甲状軟骨形成術Ⅱ型)

 ・術前診断が難しい(鑑別疾患に注意).

 ・高音発声時に症状が軽快する.

 ・音声治療が無効である.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

気管切開術

著者: 近藤貴仁 ,   塚原清彰

ページ範囲:P.188 - P.195

Point

●術前画像検査で気管や気管周囲臓器に偏位がないかを確認しておく.触診で甲状軟骨(喉頭隆起,上甲状切痕),輪状軟骨下縁,気管の位置を確認しておく.

●術前にCTや単純X線画像から手術体位,麻酔方法,皮膚切開線,気管の開窓位置,気管の切開方法,気管フラップの縫合方法を検討しておく.

●カニューレの確実な気管内への挿入を確認する.術後のカニューレの逸脱,迷入,閉塞に細心の注意を払う.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

嚥下障害に対する手術

著者: 香取幸夫

ページ範囲:P.196 - P.203

Point

●嚥下障害の手術は,喉頭の機能を温存する嚥下機能改善手術と,気道と消化管を分離して肺炎を防止する誤嚥防止手術の2種類の群に分けられる.

●特に嚥下機能改善手術では,嚥下障害の原因となっている病態に応じた手術方法を選択する.

●回復不能な誤嚥があり,喉頭の感覚が失われている症例,また進行性の神経筋疾患には嚥下機能改善手術の適応が難しく,誤嚥防止手術を選択する.

頸部外傷に対する手術

著者: 梅野博仁

ページ範囲:P.204 - P.211

Point

●頸部外傷後の創部感染による創傷治癒遷延の原因として,異物残存の可能性が考えられるが,頸部CT検査では異物の実体が不明瞭な場合がある.

●創部が清潔でなければ,洗浄を行い自然な創傷治癒を待つ.

●頸部外傷による嗄声では,喉頭内視鏡検査に加えて,頸部CT検査により喉頭軟骨の骨折や偏位の有無を把握する.

●頸部外傷で皮下気腫を認める場合,気道損傷部位を頸部CT検査で把握する.喉頭内腔粘膜の損傷が高度であれば,直達喉頭鏡検査で粘膜損傷部位と程度を診断し,早急な喉頭粘膜修復と喉頭軟骨の整復を行う.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

4.頭頸部癌領域

頸部郭清術

著者: 上村裕和

ページ範囲:P.214 - P.222

Point

●各症例の身体的諸条件を考慮して術前画像を評価する.

●手術解剖学をよく理解することで,術前治療既往への対応や術後補助療法につながる頸部郭清術プランに役立てる.

●解剖学的な異常やバリエーションの存在を意識した読影を行う.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年4月)。

鼻副鼻腔癌に対する外切開による手術—局所進行上顎洞癌に対する上顎全摘術

著者: 有泉陽介 ,   朝蔭孝宏

ページ範囲:P.224 - P.231

Point

●上顎洞癌の術前画像診断では,造影CTと造影MRIで後上方進展を確認する.正円孔や海綿静脈洞に浸潤があれば開頭頭蓋底手術が必要である.

●上顎洞癌に対する上顎全摘術では,眼窩内容を極力温存して術後照射を行う.

●上顎全摘術では,CTで正円孔から腫瘍までの距離を確認しておく.翼状突起基部の骨切りは,翼口蓋窩内の正円孔開口部を目視して行う.

口腔・中咽頭癌に対する外切開による手術

著者: 松本文彦

ページ範囲:P.232 - P.238

Point

●経口切除だけで手術が可能か,外切開が必要かの見極めが大切である.

●術前から,切除後に再建が必要かどうかの判断をしておく.

●頸部からの下準備と,経口的アプローチによる十分な切除の両方が重要である.

喉頭・下咽頭癌に対する外切開による手術

著者: 浅田行紀

ページ範囲:P.240 - P.244

Point

●喉頭全摘(TL),咽喉頭食道全摘(TPLE)は,切除範囲がかなり定型化されている.

●上下・側方など周囲への腫瘍浸潤の所見を読み取り,切除範囲の変更が必要かどうかを検討することが重要である.

喉頭・咽頭癌に対する経口切除術—ロボット手術も含めて

著者: 加藤久幸 ,   池田裕隆 ,   楯谷一郎

ページ範囲:P.246 - P.255

Point

●術前画像診断(特にMRI T2強調画像)で腫瘍の進展範囲の評価と正確な切除範囲を設定し,手術適格例を決定する.

●経口切除術は切除可能かつ術後の嚥下機能が温存できる症例がよい適応となる.

●インサイドアウトの局所解剖,危険部位を理解したうえで手術を行う.

唾液腺腫瘍に対する手術

著者: 東野正明

ページ範囲:P.256 - P.261

Point

●術前穿刺吸引細胞診や画像所見から,できる限りの質的診断を行う.

●超音波検査,MRIで局在診断し,質的診断とともに,顔面神経の処理方法,および術後顔面神経麻痺のリスクを考えておく.

●悪性三徴候(疼痛,可動性不良,顔面神経麻痺)は良悪性および悪性度を反映する.

甲状腺癌に対する手術

著者: 北村守正

ページ範囲:P.262 - P.269

Point

●甲状腺癌の診断は超音波検査を中心に隣接臓器浸潤を総合的に判断し,手術に臨む必要がある.

●特に広範に浸潤している症例では解剖書を見直し,どの組織に浸潤の可能性があり,合併切除した場合どのような症状が出現するかを事前にシミュレーションしておく.

頸部・副咽頭間隙腫瘍に対する手術—神経鞘腫・唾液腺腫瘍・頸動脈小体腫瘍

著者: 小澤宏之

ページ範囲:P.270 - P.279

Point

●副咽頭間隙は茎突前区と茎突後区に分かれる.

●茎突前区では耳下腺深葉由来の腫瘍が多く,茎突後区では神経や血管由来の腫瘍が多い.

●腫瘍の局在や由来組織に合わせて,経頸部法,経耳下腺法,その他のアプローチを選択する.

頭蓋底腫瘍に対する拡大手術

著者: 四宮弘隆

ページ範囲:P.280 - P.286

Point

●頭頸部悪性腫瘍の頭蓋底手術は,腫瘍の進展部位により,症例に応じて適切な切除範囲を設定する必要がある.

●前頭蓋底手術では内視鏡アプローチが進んできており,どこまで内視鏡で行い,どこから開頭が必要かの判断が重要である.

●画像診断のポイントとして,眼窩内進展の有無,頭蓋底骨や硬膜への浸潤範囲,海綿静脈洞進展の有無,脳神経周囲浸潤の有無などが挙げられる.

●事前に脳神経外科・形成外科と十分に切除範囲の意思統一を行うことが重要である.

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.287 - P.287

あとがき

ページ範囲:P.288 - P.288

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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