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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻6号

2021年05月発行

雑誌目次

特集 遠隔医療の“いま”と“これから”〔特別付録Web動画〕

ページ範囲:P.389 - P.389

《知っておきたい基本と話題》

IT用語の意味と正しい使い方

著者: 露無松里

ページ範囲:P.390 - P.395

POINT

●ITに類似する用語としてICT,IoTがあり,それぞれ意味が異なる。

●遠隔医療の通信にはセキュリティの面から,VPN通信が推奨されている。

●クラウドには,その提供形態からASP/SaaS,PaaS,IaaSなどさまざまなタイプのサービスがある。

●遠隔医療の形態としてD to D,D to Pが代表的である。

●医療情報の記録形態としてPHR,EMR,HERがある。

●画像形式としてDICOM,院内の画像管理にはPACSが多くの施設で普及している。

遠隔医療の基礎知識と現況

著者: 東福寺幾夫

ページ範囲:P.396 - P.400

POINT

●遠隔医療は情報通信技術を医療に応用したものであり,そのヒトへの応用を遠隔診療という。遠隔診療のうち,リアルタイム性を有する医療行為はオンライン診療といわれる。

●遠隔医療実施上の障害となっていた医師法第20条の「無診察治療等の禁止」規定は,厚生省(当時)の解釈通知によりクリアされた。

●オンライン診療の実施にあたっては指針が示されており,その理解と遵守が求められる。

●コロナ禍により初診からのオンライン診療などが認められたが,その恒久化については慎重に検討すべきである。

遠隔医療における第5世代移動通信システムへの期待

著者: 竹下康平

ページ範囲:P.401 - P.405

POINT

●商用の第5世代移動通信システム(5G)が本邦でもスタートし,部分的に通信可能エリアが整備されてきている。

●5Gネットワークでは4Gに比べ,「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」が特徴である。

●総務省や通信会社が主体となって医療分野でも実証実験が行われている。

●実際の医療5Gサービス開発につながるよう,今後医療現場の積極的な関与が必要である。

—臨床現場から在宅介護支援・通訳を交えた国際医療支援まで拡大してきた—ライブ映像双方向カンファレンスシステム

著者: 佐々木春光

ページ範囲:P.406 - P.411

POINT

●「ヒトが動くのではなく情報を動かす遠隔医療」は高画質映像の共有がカギである。

●ライブ映像を共有する双方向コミュニケーションは地球上の医療サービスを変えられる。

●専用アプリが不要であることとインターネットブラウザ通信がシステム導入の垣根を下げた。

●「1秒間30fpsの高画質動画伝送」が遠隔支援が可能な診療科を拡大した。

●5th generation(5G)通信が超高齢社会の在宅医療支援の一助となる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年5月)。

画像診断支援システムとAIを用いた遠隔医療

著者: 島村泰輝

ページ範囲:P.412 - P.416

POINT

●遠隔画像診断はクラウド化によって導入コストが下がり,誰でも使えるものになってきた。

●クラウドの安全性はさまざまな方法で用意されている。

●高い医療水準維持のための秘訣の1つに医師間連携が挙がり,遠隔システムによってそれは可能となる。

●遠隔医療システムはあくまでもツールであり,医師の本質は変わらない。

《進む臨床での活用》

聴覚障害診療における遠隔医療

著者: 高野賢一

ページ範囲:P.417 - P.421

POINT

●聴覚障害診療においても遠隔医療は有用性が高く,患者・医療者の双方に恩恵をもたらすものである。

●遠隔マッピングは,遠方から専門医療機関に通院しなくても,患者の地元で対面と遜色ないマッピングを受けることができる。

●遠隔言語訓練は,時間的制約の多い児童とその保護者にとって,メリットが大きい。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年5月)。

季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)におけるオンライン診療

著者: 稲生優海

ページ範囲:P.422 - P.426

POINT

●耳鼻咽喉科領域でもオンライン診療の活用が拡がっており,アレルギー性鼻炎は相性がよいと考えられる。

●オンライン診療を活用した薬物療法では,通院が難しかった患者でも,対面診療より短い間隔での経過観察が可能となるため,治療効果や副作用の判定を行いやすくなる。

●舌下免疫療法では,口腔内の炎症の確認など,症状に応じて対面診療を促すタイミングを逃さないことが,患者の治療継続率を高めながらオンライン診療をうまく利用していく鍵と言える。

●オンライン診療は治療の選択肢の1つである。患者の重症度や副作用の発現状況などにより,対面診療をうまく組み合わせることが重要である。

摂食嚥下障害診療における遠隔医療

著者: 野﨑園子

ページ範囲:P.427 - P.431

POINT

●オンライン診療は,病病連携・病診連携・在宅医療において,視覚情報をリアルタイムに共有でき,医療の質向上に寄与する。

●オンラインリハビリテーションは,患者側の安心感とリハビリテーション意欲の維持,リハビリテーション効果につながる。

●オンライン診療は,摂食嚥下障害患者の医療へのアクセシビリティ向上と医療への能動的参画を促し,在宅の食生活の質向上に寄与する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年5月)。

睡眠障害診療における遠隔医療

著者: 千葉伸太郎

ページ範囲:P.432 - P.436

POINT

●わが国では2018年から持続的気道陽圧(CPAP)治療の遠隔モニタリングが保険収載された。

●睡眠障害専門の医療者・施設の不足,医療レベル格差・偏在など,わが国の睡眠医療の課題に対し,ITを使った遠隔睡眠医療はさまざまな可能性を示す。

●睡眠医療としては,倫理,個人情報保護,セキュリティ,医療の質,安全性などの課題を念頭に,慎重かつスピード感をもって遠隔医療を進めていくことが望ましい。

脳卒中診療における遠隔医療

著者: 長谷川泰弘

ページ範囲:P.437 - P.441

POINT

●telestrokeとは,医師対医師(D to D)で行われる脳卒中に特化した遠隔救急医療支援であり,歴史的にはrt-PA静注療法の均霑化を目的として発達してきた。

●telestrokeを用いたdrip and ship,drip and stay法による連携が,実現すべき脳卒中医療提供体制の姿として第7次医療計画(2018〜2023年)において示されている。

●2020年,日本脳卒中学会は一次脳卒中センター(PSC)を認定し(2021年1月現在974施設),220施設にPSCのコア施設を委嘱した。また「脳卒中における遠隔医療(Telestroke)ガイドライン」を整備し,telestrokeの本格導入が加速化している。

視器障害診療における遠隔医療

著者: 石子智士

ページ範囲:P.442 - P.446

POINT

●眼科遠隔医療は,安定した慢性疾患のフォローや眼科検診には有用であるが,症状のある急性疾患への対処は限定的である。

●現状では,遠隔医療でできる眼科検査には限界がある。

●小型軽量の眼科検査装置開発・SNSの普及・AIの進化と,現状に応じたインセンティブの確保が,眼科遠隔医療普及の鍵となる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年5月)。

原著

小児の頰部に生じた結節性筋膜炎の1例

著者: 武田紘子 ,   蓼原瞬 ,   丹生健一

ページ範囲:P.447 - P.450

はじめに

 結節性筋膜炎は皮下組織,主に深在性筋膜に孤立性の結節を生じる良性の線維性病変である。病理学的には線維芽細胞の反応性増殖であるが,急速な増大や周囲組織への浸潤を認めることがあり,時に肉腫などの悪性腫瘍との鑑別が必要となる。30〜40歳台に好発し,小児での報告は稀である。

 今回,われわれは小児の頰部に生じた結節性筋膜炎を経験したため,文献的考察を加えてその概要について報告する。

咬筋に生じた粘液線維肉腫の1例

著者: 上田隆 ,   木戸上知弘 ,   清水昭一朗 ,   山本一宏

ページ範囲:P.451 - P.455

はじめに

 粘液線維肉腫(myxofibrosarcoma:MFS)は高齢者の四肢に好発し,無痛性で緩徐に増殖する,頭頸部では稀な悪性軟部腫瘍である。今回われわれは,咬筋原発と考えられるMFSの1例を経験したので報告する。

当科で経験した小児の外耳道軟骨腫

著者: 山本陽平 ,   菅原一真 ,   橋本誠 ,   岩本文 ,   松浦貴文 ,   沖中洋介 ,   坂本めい ,   山下裕司

ページ範囲:P.456 - P.461

はじめに

 外耳道良性腫瘍は比較的稀な疾患であるが,軟骨腫の報告は非常に少ない。また,小児例はより少ないとされるが,理由としては無症状で経過することから,耳鼻咽喉科で耳内の診察を受けるまで指摘されない可能性があるとされる1)。今回われわれは,外耳道原発と考えられる軟骨腫の小児例を経験した。本症例は骨部外耳道の前壁に白色腫瘤として認められたが,検討するなかで,当科で経験した他の小児例5例にも同部位に白色腫瘤を認めたことが明らかになった。そこで,これらの症例を併せて文献的考察を加え,報告する。

前庭性片頭痛のvestibular evoked myogenic potential(VEMP)結果の検討

著者: 上野真史 ,   五島史行

ページ範囲:P.462 - P.466

はじめに

 前庭性片頭痛(vestibular migraine:VM)は,通常型の片頭痛とめまいの両者が共通の病因によって生じると考える疾患単位として提唱されたものである1)。VMは外来めまい患者の5〜15%程度を占めると考えられ2),近年注目されている疾患概念である。しかしその臨床的特徴はいまだ不明な点が多く,本邦における本疾患概念の認知度は依然として低いといわざるをえない。

 本疾患の病態については中枢説や内リンパ水腫の存在などが報告されているが,依然その原因や病態は不明である。また,非定型メニエール病(Ménière disease:MD)との鑑別が問題となることもある。そこで,今回われわれは当科で経験したVM 7症例とMD 3症例につき,vestibular evoked myogenic potential(VEMP)の検査結果を比較検討し,VMの病態について考察した。

経過観察中に振子様となった喉頭蓋囊胞症例

著者: 三村昇平 ,   武田純治

ページ範囲:P.467 - P.470

はじめに

 喉頭蓋囊胞は日常臨床においてしばしば遭遇する疾患であり,臨床的には無症状であることが多く,また良性疾患であるため経過観察されやすい。しかしながら,時に嚥下時の違和感,咽喉頭異常感,気道閉塞などの呼吸症状を呈することがあり,有症状の場合は囊胞摘出術が行われる。今回われわれは,喉頭蓋谷に存在した囊胞状腫瘤が3年の経過で喉頭蓋舌面に基部をもち,長い茎を有する振子様の状態に変化した1例を経験したので報告する。

下鼻甲介shoulder osteotomyを行った狭鼻の1例

著者: 田中大地 ,   中丸裕爾 ,   鈴木正宣 ,   本間あや ,   中薗彬 ,   木村将吾 ,   本間明宏

ページ範囲:P.471 - P.474

はじめに

 鼻閉を訴える症例のうち,鼻腔の形態異常を伴い保存的治療で十分な治療効果が得られない場合は手術治療が選択される。一般に下鼻甲介肥大や鼻中隔彎曲による鼻閉は,粘膜下下鼻甲介骨切除術や鼻中隔矯正術にて改善できることが多い。しかし鼻腔の横幅が狭い,いわゆる“狭鼻”症例では,内鼻弁の横幅が狭いため,粘膜下下鼻甲介骨切除術や鼻中隔矯正術だけでは同部位を十分に拡大できず,鼻閉の改善が得られないことがある。

 近年報告された下鼻甲介shoulder osteotomyは,下鼻甲介の基板(下鼻甲介肩)を切除して前端を外側化させる術式で,内鼻弁を外側に拡大することが可能となる1)。今回われわれは下鼻甲介shoulder osteotomyを行った狭鼻の1例を報告する。

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目次

ページ範囲:P.385 - P.385

欧文目次

ページ範囲:P.387 - P.387

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.476 - P.476

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.480 - P.480

 晩春の候,皆様いかがお過ごしでしょうか。

 小生,本稿を執筆している1週間前の早朝,自宅そばの公園を散歩しながら満開の桜を眺めることができました。今年の桜は美しかった。淡いピンク色の花びらには本当に癒されます。こんな気分は2年ぶり。なにせ昨年は新型コロナウイルス感染症が蔓延し始め,自分の勤務先では院内感染が発生し,桜の花を楽しむような状況ではありませんでした。あれから1年,第3波が去って今度は第4波の脅威がすぐそこに来ているようですが,われわれ医療従事者にはワクチン接種も開始され,学会も現地開催に戻りつつあります。1日も早く,元の生活に戻りたいものです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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