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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻7号

2021年06月発行

雑誌目次

特集 必見!頭頸部がんのあたらしい治療

ページ範囲:P.485 - P.485

《あたらしい薬物療法》

HPVワクチン—現状と今後の展開

著者: 折舘伸彦 ,   佐野大佑 ,   波多野孝

ページ範囲:P.486 - P.489

POINT

●ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)対する感染予防ワクチン(2価,4価,9価)がすでに本邦で製造販売承認されている。

●HPVワクチン接種が広く実施されている諸外国では,HPV感染や子宮頸癌の前癌病変の発症減少が報告されている。

●頭頸部領域では中咽頭癌,特に扁桃・舌根原発の癌とHPV感染との関連が確実視されている。

●口腔内HPV感染がHPV関連中咽頭癌の発症に先行すると考えられる。

●HPV関連中咽頭癌が好発する中高年男性の口腔内HPV16陽性率は低く,効果的なワクチン接種の時期・年齢について今後検討されなければならない。

唾液腺癌に対する個別化薬物治療—現状と今後の展開

著者: 多田雄一郎

ページ範囲:P.490 - P.498

POINT

●唾液腺癌はきわめて多様な病理組織像を呈し,多数の腫瘍型があるため,それぞれの生物学的特徴に応じて薬物治療の適応を検討する。

●本邦では腫瘍型にかかわらず,プラチナ製剤とタキサン系抗癌剤の併用療法の有用性が報告されている。

●NCCNガイドライン2021年版では,AR陽性癌には抗アンドロゲン療法,HER2陽性癌には抗HER2療法,NTRK融合遺伝子陽性癌には抗NTRK療法,腫瘍遺伝子変異量高値(TMB-H)症例にはペムブロリズマブの投与が呈示されている。

免疫チェックポイント阻害薬—現状と今後の展開

著者: 岡弘毅 ,   本間義崇

ページ範囲:P.500 - P.505

POINT

●頭頸部癌に対してもニボルマブとペムブロリズマブが保険適応になった。

●再発または遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の現状について概説する。

●局所進行頭頸部扁平上皮癌と,再発または遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮癌に対する治療開発の状況について概説する。

光免疫療法—理論と実際

著者: 篠﨑剛

ページ範囲:P.506 - P.509

POINT

●セツキシマブと光感受性物質である色素(IR700)を結合させた抗体-光感受性物質複合体に690nmの光を照射することによって細胞を選択的に破壊する。

●病変に応じて組織内や組織表面から光を照射する。

●治療の精度は照射手技に依存するため,習熟した医師による施行が必要である。

《あたらしい放射線治療》

粒子線治療

著者: 小藤昌志

ページ範囲:P.510 - P.515

POINT

●粒子線治療(重粒子線治療・陽子線治療)はX線治療と比較して線量集中性に優れる。

●重粒子線治療はX線治療と殺細胞作用が異なるため,X線抵抗性腫瘍にも効果が期待できる。

●粒子線治療は頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)に保険適用となっている。

ホウ素中性子捕捉療法—理論と実際

著者: 粟飯原輝人

ページ範囲:P.516 - P.521

POINT

●ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は,ホウ素中性子捕捉反応で生じたα線を用いた高LET放射線治療である。

●2020年6月に医療用加速器中性子照射装置を用いた頭頸部癌への治療が保険適用の承認を受けた。

●文献的には高い奏効率の報告が多く,治療前に治療効果に影響を与える因子を検討することで,治療効果の予測が可能である。

●生存率や長期予後などのしっかりとしたエビデンスはない。今後,医療者・研究者の裾野の拡大が,将来的な発展と普及の鍵を握る。

《手術支援ロボット》

da Vinci® surgical system—適応と限界

著者: 藤原和典

ページ範囲:P.522 - P.526

POINT

●内腔からみた解剖の理解や適切な適応選択は,安全で確実な手術の施行において重要である。

●腫瘍の浸潤範囲以外に,術前の全身状態や嚥下機能も適応決定において重要である。

●transoral robotic surgery(TORS)はさまざまな疾患に対する治療として報告されており,今後さらなる適応の拡大が期待される。

hinotoriTM—国産初手術支援ロボット承認で高まる期待

著者: 四宮弘隆

ページ範囲:P.527 - P.531

POINT

●頭頸部領域において経口的ロボット手術(TORS)が保険適用ではないものの薬事承認を受け,徐々に広がりつつある。

●hinotoriTM(Medicaroid社)が国産医療用ロボットとして初めて製造販売承認を受け,産業用ロボットをベースとした日本の技術力に期待がかかる。

●hinotoriTMは8軸の多関節アームやネットワークサポートシステムを備え,今後さらに5GやAIの技術を用いた新たな時代をめざしている。

●頭頸部領域において,管腔臓器に適した形状や機能を備えたロボットの開発が待たれる。

Review Article

難治性の好酸球性副鼻腔炎—治療戦略のパラダイムシフト

著者: 池田勝久

ページ範囲:P.532 - P.542

Summary

●疫学の観点から,発症頻度は0.6〜2.2%,男女比は3対1,平均年齢は48〜52歳,気管支喘息の合併は20〜30%,再発率は26%,再発までの平均期間は23か月である。

●診断基準は,病巣の両側性,鼻茸の有無,篩骨洞陰影の優位性,血中好酸球の割合の項目を点数化し,①17点満点で11点以上であること,②鼻茸組織中好酸球数(400倍視野)が70個以上であること,の両者を満たす場合である。

●鼻噴霧用ステロイド薬の効果が乏しい再発性鼻茸や嗅覚障害に対し,経口ステロイド薬として第一選択となるのはプレドニゾロンである.短期間(7〜21日間)の,30〜60mg/日もしくは体重1kg当たり0.5〜1mgの固定量,または漸減の投与法は有害事象が少ない。

●生物学的製剤であるデュピルマブは,術後の再発症例や全身的ステロイド抵抗症例など,既存の方法では治療に難渋する重症好酸球性副鼻腔炎に対する新規治療薬で,その適応は,①手術の既往と鼻茸再発がある,または高齢や合併症などにより手術が非適応であること,②両側の鼻茸のサイズが中鼻甲介下縁を超える,または鼻茸が中鼻甲介の内側(嗅裂部)にあること,③中等度以上の鼻閉症状があり,許容できるが煩わしいこと,の①〜③すべての項目を満たすものである。

原著

診断に難渋した外耳道真珠腫を合併する外耳道骨腫症例

著者: 佐原利人 ,   柿木章伸 ,   向井俊之 ,   寺村侑 ,   髙野智誠 ,   安原一夫

ページ範囲:P.544 - P.548

はじめに

 外耳道骨腫の報告は比較的稀ではあるが,外耳道良性腫瘍のなかでは最も多く認められる疾患である1)。一般的に外耳道骨腫は局所所見,CT所見から比較的容易に診断に至る例が多いとされるが2),今回われわれは術前病理組織検査とCT,MRIなどの画像検査施行後も診断に難渋し,手術加療ののちに真珠腫を合併する外耳道骨腫の診断に至った1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

喉頭に発生したRosai-Dorfman病の3例

著者: 木村哲平 ,   四宮弘隆 ,   丹生健一

ページ範囲:P.549 - P.555

はじめに

 Rosai-Dorfman disease(RDD)は原因不明の組織球集積による無痛性リンパ節腫大を主症状とする疾患として,1969年にRosai,Dorfmanにより初めて報告された1)。全身のあらゆる部位のリンパ節やリンパ節外の臓器に発生し,皮膚や中枢神経系のほか,耳鼻咽喉領域では鼻腔,上顎洞,喉頭,気管といった上気道や唾液腺組織に発生した報告が散見される2)。そのなかでも節外病変として喉頭にRDDが発生した報告は少ない。喉頭に発生したRDDは嗄声や咳嗽,呼吸困難感を主訴に発見されることが多く,気道狭窄をきたすこともあり,減量手術が有効と示している文献もある2)。治療についても一定のガイドラインは存在せず,副腎皮質ステロイド治療,化学療法,放射線治療,手術治療の報告がみられ,発生部位や症状によって使い分けることが推奨されている2)。喉頭に発生した場合,診断に必要となる十分な組織量を採取するのが困難なことも多く,診断に難渋し,全身麻酔下の切除生検による診断を要することも多い。

 今回われわれは,喉頭に病変を生じたRDDに対して,気道狭窄を防ぐために手術治療を行った3例を経験したため,文献的考察を含めて報告する。

急速増大し顔面神経麻痺を呈した耳下腺海綿状血管腫の成人例

著者: 立之大智 ,   藤井正人 ,   奥井文子 ,   竹林亜貴子

ページ範囲:P.556 - P.560

はじめに

 耳下腺腫瘍は病理学的に非常に多彩であり,その臨床像もさまざまである。多くの場合は良性腫瘍であり,最も多いのは多形腺腫である。悪性腫瘍もみられるが,腺様囊胞癌や粘表皮癌など腺系癌が多くを占め,それらの悪性度もさまざまである。一般に,多形腺種やワルチン腫瘍などの良性腫瘍は増大しても顔面神経麻痺をきたすことはない。一方,小腫瘤であっても顔面神経麻痺を認める場合は悪性腫瘍を疑う。今回,われわれは急速に増大して顔面神経麻痺をきたしたため悪性腫瘍を疑って手術を施行し,成人の耳下腺腫瘍としては稀な血管腫であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

下咽頭に粘膜疹を認めた咽頭梅毒の1例

著者: 岡田峻史 ,   佐々木俊一 ,   稲木香苗 ,   利國桂太郎

ページ範囲:P.561 - P.565

はじめに

 梅毒はTreponema pallidum(Tp)による全身性の性感染症である。本邦での報告数は2011年から増加に転じており,2016年には日本性感染症学会から注意喚起が通達されている。近年は性交様式の多様化に伴い,口腔咽頭症状を初発症状とする梅毒患者が増加傾向にある。耳鼻咽喉科領域の代表的な梅毒症状として口唇の硬結や軟口蓋の白斑(butterfly appearance)が挙げられるが,初診の段階では他疾患との鑑別が困難なことも多い。今回われわれは,頸部リンパ節腫脹を主訴に来院し,下咽頭に粘膜疹を認めた咽頭梅毒の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

喉頭浮腫で受診し好酸球増多症候群と診断された1例

著者: 古谷花絵 ,   松浦賢太郎 ,   松井秀仁 ,   梶原理子 ,   大平真也 ,   定本聡太 ,   若山恵 ,   和田弘太

ページ範囲:P.566 - P.571

はじめに

 好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES)とは,1968年にHardyとAndersonにより概念が提唱された,好酸球増多に加え,組織中の好酸球増多により臓器障害を呈し,かつ臓器障害をきたすほかの原因がない疾患のことである1〜3)(表1)。皮膚,肺,消化管,心臓,神経などが主な標的となる2)が,われわれが渉猟しえた限りでは喉頭浮腫を呈した報告は認めなかった。HESの治療は一般的に副腎皮質ステロイドが第一選択となることが多く,副腎皮質ステロイドに抵抗性の場合は免疫抑制薬やIFN-α,抗IL-5抗体などを使用する。またFIP1L1-PDGFRA融合遺伝子異常がある場合はイマチニブが奏効するといわれている4,5)

 今回われわれは,HESが原因と考える喉頭浮腫を認めた症例を経験したため,若干の文献的考察をふまえて報告する。

お知らせ

第38回 耳鼻咽喉科ニューロサイエンス研究会

ページ範囲:P.565 - P.565

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目次

ページ範囲:P.481 - P.481

欧文目次

ページ範囲:P.483 - P.483

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.572 - P.572

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.576 - P.576

 ようやく新型コロナウイルスのワクチン接種が医療従事者を対象に先行して始まりました。でも,この原稿を書いている時点で2回目の接種を受けた人は全国でまだ85万人。「まん延防止等重点措置」の実施にもかかわらず感染者は増え続け,ゴールデンウィークを前にして,ついに3回目の緊急事態宣言が発出されました。期間は5月11日(火)までの予定で,第122回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会の前日です。無事,総会・学術講演会が開催されることを願います。ちなみに来年の総会・学術講演会は5月25日(水)〜28日(日),神戸ポートアイランドでの開催となります。「神戸医療産業都市」の名にちなみ,医療技術・医療機器・医薬品の最新情報について取り上げたいと思っています。

 ということで,今月号の特集では「頭頸部がんのあたらしい治療」と題し,頭頸部がんに関連する最新の医療技術・医薬品の情報を取り上げました。薬物療法では,最近,肛門がんの予防にも適応拡大されたHPVワクチンについて折舘先生(横浜市大)に,適応拡大が待たれる唾液腺がんに対する薬物療法について多田先生(国際医療福祉大三田病院)に,免疫チェックポイント阻害薬について岡先生・本間先生(国立がん研究センター中央)に,ついに保険適用となったがん光免疫療法について篠﨑先生(国立がん研究センター東)にご執筆をお願いしました。放射線治療・医療機器では,粒子線治療について小藤先生(放射線医学総合研究所)に,保険適用となったばかりの中性子捕捉療法について粟飯原先生(関西BNCT共同医療センター)に,適応拡大が待たれるda Vinci® Surgical Systemについて藤原先生(鳥取大)に,国産初の手術支援ロボットhinotoriTMについて四宮先生(神戸大)に解説していただいています。ぜひお目通しいただき,来年,ぜひ神戸にお越しください。Review Articleは順天堂大名誉教授 池田勝久先生にお願いしました。治療戦略が大きく変わった難治性の好酸球性副鼻腔炎についてご解説いただいています。こちらもご一読のほどお願いいたします。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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