icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻8号

2021年07月発行

原著

立位性頭痛が診断の一助となった脳脊髄液減少症の慢性めまい症例

著者: 神山和久1 井上彰子12 松浦賢太郎12 川島孝介1 古谷花絵1 和田弘太1

所属機関: 1東邦大学医療センター大森病院耳鼻咽喉科 2湘南鎌倉総合病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.655 - P.659

文献概要

はじめに

 脳脊髄液減少症の多彩な症状の1つにめまいがある。そのため,めまいを主訴に耳鼻咽喉科を受診する患者のなかには本疾患を有する患者が存在する可能性がある。脳脊髄液減少症にはブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法)などの治療法も考慮されうるため,まずは診断に至ることが重要である。したがって,耳鼻咽喉科医でも,めまいの鑑別疾患として,脳脊髄液減少症について理解しておく必要がある。

 今回われわれは,外傷受傷後2年以上めまい症状に苦悩し,脳脊髄液減少症の診断に至った症例を報告する。前庭誘発頸筋電位(cervical vestibular evoked myogenic potential:cVEMP)検査で軽微な前庭機能障害が認められたが,前庭リハビリテーションで症状が改善せず,問診を取り直した結果,「立位性頭痛の随伴」が鑑別診断の一助となり,radio isotope(RI)脳槽シンチグラフィ検査で診断した。本症例は,脳脊髄液減少症例にcVEMP検査を施行した貴重な症例であり,また,耳性めまいとして経過が不良である場合には,随伴症状を確認する必要性が示唆された症例でもある。過去の文献を交えて考察する。

参考文献

1)Mokri B:Low cerebrospinal fluid pressure syndromes. Neurol Clin 22:55-74, vi, 2004
2)脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会(編著):脳脊髄液減少症ガイドライン2007.メディカルレビュー社,東京,2007
3)菊地由花・他:特発性脳脊髄液減少症の一例.日病総合診療医会誌6:20-23,2014
4)篠永正道:脳脊髄液減少症の診断と治療の実際.新薬と臨67:1090-1095,2018
5)瀬尾 徹・他:新しいcVEMPの評価法.耳鼻ニューロサイエンス34:31-33,2020
6)瀬尾 徹:前庭誘発筋電位(VEMP).耳喉頭頸86:726-733,2014
7)瀬尾 徹:VEMP.JOHNS 27:777-781,2011
8)横田淳一・他:めまいを主訴とした交通外傷後低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の2症例.Equilibrium Res 67:276-285,2008
9)Miller RS, et al:Spontaneous intracranial hypotension mimicking Menière's disease. Otolaryngol Head Neck Surg 135:655-656, 2006
10)高橋浩一:症例から診るめまい診療—めまいと脳脊髄液減少症.JOHNS 37:77-81,2021
11)國弘幸伸:聴覚検査結果から推測されるめまいは? JOHNS 29:1847-1850,2013
12)佐藤慎哉:脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準.日保医会誌110:193-201,2012
13)佐藤慎哉:低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)のガイドライン.医のあゆみ235:791-795,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら