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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科93巻9号

2021年08月発行

雑誌目次

特集 副腎皮質ステロイド—どこに注意し,どう使う?

ページ範囲:P.677 - P.677

《押さえておきたい知識》

副腎皮質ステロイドの薬理学と薬剤の特性

著者: 川合眞一

ページ範囲:P.678 - P.683

POINT

●副腎皮質ステロイドはグルココルチコイド(GC)と同義で使われることが多く,近代医学の発展に最も貢献した薬物の1つである。

●GCは特異的受容体に結合し,主作用・副作用に関連したさまざまな遺伝子の転写を促進または抑制することにより多様な作用を発揮する。

●化学修飾により多くの合成GCが開発され,また臨床使用に便利な多くの剤形が工夫されている。

●製剤間での変更,パルス療法,漸減・中止法など,臨床的注意点をまとめた。

副作用を防ぐためのマネジメント—長期使用後の離脱についても含めて

著者: 中村潤 ,   佐藤浩二郎

ページ範囲:P.684 - P.689

POINT

●副腎皮質ステロイドを一定用量・期間以上使用する場合は,感染症に注意し,特に致死的疾患であるニューモシスチス肺炎の予防にST合剤を使用する。

●骨粗鬆症は特に閉経後女性で高頻度でみられる副作用であり,副腎皮質ステロイド長期使用例では,ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体などでのマネジメントが必要となる。

●耐糖能異常・高血圧症・脂質異常症をはじめとした多くの副腎皮質ステロイド関連の副作用は,生活指導や内科的治療によって予防すること,または増悪を防ぐことができる。

●副腎皮質ステロイドの長期使用後に,発熱,頭痛,食欲不振,筋肉痛,関節痛,ショックなどの副腎不全症状が出現することがあるため,ステロイド減量は慎重に行う。

周術期のステロイドの使い方—ステロイドカバーについても含めて

著者: 野牛宏晃

ページ範囲:P.690 - P.693

POINT

●原発性(副腎性)・続発性(視床下部・下垂体疾患性)副腎不全症と自己免疫・炎症性疾患では長期にステロイドを内服している。

●周術期のステロイド補充はヒドロコルチゾンを用い,急性副腎不全のリスクを回避する。

●侵襲の大きさに応じてヒドロコルチゾン補充量を決定する。

●急性副腎不全症を疑う場合,速やかにヒドロコルチゾンの投与を開始する。

《ステロイド投与の実際》

急性感音難聴

著者: 岡愛子 ,   鬼頭良輔 ,   野口佳裕

ページ範囲:P.694 - P.698

POINT

●初期治療は,軽・中等度難聴ではステロイド内服,高度・重度難聴ではステロイド点滴を提案する。

●糖尿病などの合併症がある患者,妊婦の初期治療,もしくは高度・重度難聴の救済治療としてステロイド鼓室内投与を提案する。

●ステロイドによる副作用と治療効果のバランスという観点から,ステロイド治療は発症から29日以内,救済治療としてのステロイド鼓室内投与は発症から21日以内を治療適応の目安とする。

●高度・重度難聴のステロイド点滴にプロスタグランジンE1製剤を併用することを検討する。

メニエール病—ステロイド鼓室内投与を中心として

著者: 加藤雄仁

ページ範囲:P.700 - P.703

POINT

●メニエール病の急性期には,感音難聴の治療としてステロイドの使用が検討される。

●めまい発作予防の治療には段階的治療が適応される。

●ステロイド鼓室内投与はメニエール病難治例の治療選択肢となりうる。

●ステロイド鼓室内投与は鼓膜穿孔のリスクをもつ。他治療も考慮に入れて優先順位を決定すべきである。

顔面神経麻痺

著者: 山田啓之

ページ範囲:P.704 - P.708

POINT

●Bell麻痺やHunt症候群に対する副腎皮質ステロイドの投与は,麻痺の程度や発症からの日数を考慮して投与量を選択する。

●顔面神経麻痺に対して副腎皮質ステロイドを投与する際は,①発症初期は麻痺が進行する可能性があるため頻回に診察を行う,②B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化の可能性を考慮する,③合併症を考慮することが必要である。

●小児例は成人例に比べ予後がよいとされているが,必要に応じて副腎皮質ステロイドの投与を行う。また小児例の診察は本人の協力を得にくいため注意が必要である。

●妊娠中の麻痺症例では担当の産科医と密に連携し,本人・家族と相談のうえ,治療にあたることが望ましい。

嗅覚障害・味覚障害

著者: 鈴木久美子

ページ範囲:P.710 - P.713

POINT

●エビデンスレベルの高い嗅覚障害の治療法には,鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する経口・鼻噴霧ステロイド療法,アレルギー性鼻炎に対する鼻噴霧ステロイド療法がある。

●ベタメタゾン点鼻療法は,鼻噴霧ステロイド療法よりも強力な抗炎症効果が期待できる。点鼻姿勢が重要であり,枕なし側臥位は有効である。下垂体・副腎系の抑制といった副作用を避けるため,長期使用にあたっては休薬期間を設ける。

●ステロイド療法は,症候性の味覚障害に有効な場合がある。

アレルギー性鼻炎

著者: 太田伸男 ,   佐藤輝幸

ページ範囲:P.714 - P.720

POINT

●鼻噴霧用ステロイド薬は,アレルギー性鼻炎の幅広い重症度および病型において選択される。

●ステロイドの作用機序と薬理作用を十分に理解し,製剤の特徴を把握したうえで治療戦略を練ることが重要である。

●鼻噴霧用ステロイド薬のアドヒアランスを向上させるため,患者の重症度と嗜好を考慮した薬剤選択がポイントとなる。

好酸球性副鼻腔炎・中耳炎,多発血管炎性肉芽腫症

著者: 岡崎健 ,   都築建三

ページ範囲:P.722 - P.727

POINT

●好酸球性副鼻腔炎・好酸球性中耳炎に対する副腎皮質ステロイド(以下,ステロイド)の投与方法と期間は重症度に応じて決定するが,明確な基準はない。

●ステロイドは良好な治療効果を示すが,副作用も考慮して,全身投与が長期に及ぶ場合には局所投与に切り替える。

●好酸球性副鼻腔炎・好酸球性中耳炎の喘息合併例では下気道病変のコントロールも重要である。

●多発血管炎性肉芽腫症は全身疾患であり,ステロイドと免疫抑制薬の併用が推奨され,内科との連携が必須である。

急性咽喉頭炎・気道閉塞—口内炎も含めて

著者: 杉山庸一郎

ページ範囲:P.728 - P.733

POINT

●急性咽喉頭炎では,気道狭窄のリスクがある場合には積極的に副腎皮質ステロイドを経静脈的に投与する。

●喉頭浮腫では副腎皮質ステロイドの効果を経時的に観察し,有効性を確認することが重要である。

●副腎皮質ステロイド投与に反応が乏しい急性気道狭窄では,気管切開術を躊躇しないことが重要である。

●副腎皮質ステロイドにより軽快する,繰り返す急性咽頭・喉頭炎では全身疾患も考慮する。

膠原病—免疫抑制薬との併用

著者: 押領司健介

ページ範囲:P.734 - P.739

POINT

●広義の膠原病とされる疾患には,自己炎症優位のものと自己免疫優位なものが混在する。

●自己炎症優位な疾患ではステロイドの使用は短期間で済むことがほとんどで,維持投与はむしろ感染に伴う原疾患の悪化を招くことがあるという意味でも有害である。

●関節リウマチやベーチェット病ではほとんどが,全身性エリテマトーデス・ANCA関連血管炎・巨細胞性動脈炎でもかなりの割合でステロイドの投与は不要となってきている。

●ステロイドを免疫抑制薬と併用する場合には,日和見感染に留意する必要がある。

頭頸部癌

著者: 柊陽平 ,   高橋秀聡 ,   折舘伸彦

ページ範囲:P.740 - P.743

POINT

●手術前の副腎皮質ステロイド投与により,術後悪心嘔吐,術後疼痛の緩和が期待される。周術期の副腎皮質ステロイド単回投与による手術部位感染などの合併症は増加しないと報告されている。

●高催吐リスク抗癌剤に対する制吐療法として副腎皮質ステロイドが有効である。また,免疫チェックポイント阻害薬の投与による有害事象の治療にも副腎皮質ステロイドが重要な役割を果たしている。

●頭頸部癌の緩和医療においても副腎皮質ステロイドが有用である場合がある。

原著

振子様扁桃像を呈したfibroepithelial polypの1例

著者: 真栄田裕行 ,   安田大成 ,   仲宗根和究 ,   島袋拓也 ,   上里迅 ,   鈴木幹男

ページ範囲:P.744 - P.748

はじめに

 振子様扁桃は日常診療でしばしば遭遇する病態であり,これまで耳鼻咽喉科領域からも多くの症例が報告されている。有茎性で呼吸や嚥下運動に伴って受動するものが一般に振子様扁桃と称されているが,そのなかでも扁桃組織と異なる組織型を有したものは広義の振子様扁桃として分類されている。今回われわれは,そのなかでも比較的稀な組織型であるfibroepithelial polyp例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

慢性中耳炎から両側硬膜外膿瘍,両側S状静脈洞血栓症をきたした1例

著者: 石田ちひろ ,   熊田純子 ,   稲吉康比呂 ,   木田渉 ,   中屋宗雄

ページ範囲:P.749 - P.753

はじめに

 耳性頭蓋内合併症には,髄膜炎,硬膜外膿瘍,硬膜下膿瘍,脳膿瘍,S状静脈洞血栓症などがある。近年は抗菌薬の開発,医療機器や医療技術の進歩によりこれらの合併症の頻度は減少しているが,今日でも耳性頭蓋内合併症に関する報告は散見されている。耳疾患の既往症がない患者の中耳炎であっても,患者が免疫低下状態であるときは重症な合併症をきたしうる1)ため,迅速かつ適切な対応が必要となる。

 今回われわれは,きわめて稀なA群β溶血性レンサ球菌による両側慢性中耳炎の増悪から両側硬膜外膿瘍,両側S状静脈洞血栓症をきたした1例を経験したので報告する。

本態性血小板血症に合併した難治性鼻出血の1例

著者: 成尾一彦 ,   阪上剛 ,   堀中昭良 ,   松山尚平 ,   岡本倫朋 ,   北原糺

ページ範囲:P.754 - P.758

はじめに

 本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)は骨髄増殖性腫瘍の1つで,造血幹細胞レベルでの腫瘍化のため骨髄内の巨核球が著増し,血中の血小板増加がみられる稀な疾患である。血栓症あるいは出血傾向が起こりうるが,診断契機として健康診断などでの血液検査で指摘され,無症状で発見されることも多い。耳鼻咽喉科領域でETを合併した症例の報告1)はきわめて稀で,本邦で鼻出血の報告はない。

 今回われわれは,人間ドックでの血液検査で血小板数の異常を契機に診断されたET症例で,鼻出血の治療に際し気道確保のための気管内挿管ならびに血管内治療を要した難治性鼻出血症例を経験したので報告する。

急性難聴から診断に至った多発性硬化症の1例

著者: 有本一華 ,   永野広海 ,   喜山敏志 ,   原田みずえ ,   川畠雅樹 ,   大堀純一郎 ,   山下勝

ページ範囲:P.759 - P.764

はじめに

 多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は最も一般的な脱髄性疾患であり,多彩な神経症状を呈する。MSでは視神経炎が最も多い症候であるが,耳鼻咽喉科領域でも顔面神経麻痺,難聴,めまい,声帯麻痺などを伴うこともある。今回,急性難聴で当科に紹介となり,MSの診断に至った症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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目次

ページ範囲:P.673 - P.673

欧文目次

ページ範囲:P.675 - P.675

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.721 - P.721

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.768 - P.768

 暑さの厳しい日が続きますが,皆様いかがお過ごしでしょうか。

 先日,札幌で開催された耳鼻咽喉科臨床学会に参加してきました。会長の本間明宏先生は小生と同じ平成元年卒,ご存じの方も少なくないと思いますが,日耳鼻ひらひらの会の仲間です。このコロナ禍のなか,大きな学会をハイブリッド形式で開催・成功され,同期生としてとても誇らしい気持ちでした。ウェブで学会に参加できると,興味のある講演がいつでも聴講できるし,見直しもできてメリットがたくさんあります。でも,現地に赴き旧知の仲間に会えるのはやっぱり楽しい。「久しぶり!」「相変わらず忙しくしてるの?」から始まるたわいないおしゃべりだけでも,何だか元気になります。早くみんなで集まって,美味しいお酒と肴を目いっぱい堪能して,このコロナクライシスを吹き飛ばしてしまいたい! 昨年から続いている鬱憤とかどんよりとした気分を晴らすには,ワイワイ騒げる明るい飲み会が自分にとっては一番の薬だと思います。なんといっても酒は百薬の長ですから! でもその一方で,酒はされど万病のもと,とも言われます。飲み方は大事ですよね。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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