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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻1号

2022年01月発行

雑誌目次

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

ページ範囲:P.5 - P.5

《中耳・内耳》

耳管ピンを用いた耳管開放症の治療

著者: 池田怜吉

ページ範囲:P.6 - P.11

POINT

●耳管開放症は,多くの症例において生活指導または保存的治療にて改善する。

●耳管ピンは保存的治療にて症状がコントロールしえない難治症例に対する治療である。

●耳管ピン治療は2020年12月より保険適応となった。

●さまざまな所見を総合してピンのサイズを決定することが重要である。

リティンパ®を用いた鼓膜再生療法

著者: 金井理絵

ページ範囲:P.12 - P.17

POINT

●鼓膜再生療法は組織工学の概念(細胞,足場,調節因子)に基づいた新しい鼓膜穿孔の治療法である。

●穿孔縁の新鮮創化(細胞の誘導),トラフェルミン(調節因子)を含ませたゼラチンスポンジ(足場)の留置,フィブリン糊の滴下による再生環境の維持が治療の柱となる。

●外切開や自家組織の採取を要することなく,短時間で施行できる低侵襲治療法である。

●鼓膜再生療法が健康保険の適用治療となって以降,当院の治療成績では高い穿孔閉鎖率(98.3%)と良好な聴力改善が得られた。

中耳加圧装置を用いた難治性メニエール病,遅発性内リンパ水腫の治療

著者: 藤坂実千郎

ページ範囲:P.19 - P.22

POINT

●難治性メニエール病,遅発性内リンパ水腫に対して,新たに薬事承認・保険収載された中耳加圧装置による治療について紹介する。

●中耳加圧治療の歴史は古く,1970年代から研究が始まり,Meniett®,鼓膜按摩(マッサージ)器,中耳加圧装置(EFET01)と継承されている。

●中耳加圧装置による治療は,「中耳加圧装置の適正使用指針」を遵守することが望ましい。

●治療効果は,患者に月間症状日誌を必ず記載させることで,めまい係数などにて評価し,めまい症状,眼振所見だけでなく,定期的に聴力検査を行うことが肝要である。

《鼻副鼻腔》

デュピルマブを用いた好酸球性鼻副鼻腔炎術後再発例の治療

著者: 松根彰志 ,   臼倉典宏

ページ範囲:P.24 - P.27

POINT

●好酸球性鼻副鼻腔炎治療への生物学的製剤の使用が本邦で初めて開始された。

●デュピルマブは術後再発症例に有効であり,重大な副作用は認めていない。

●全身ステロイドの中止や減量が大いに期待できる。

●好酸球性鼻副鼻腔炎の診断基準,重症度や投与開始時の必要条件を満たす必要がある。

●いくつかの使用上の問題点が指摘されている。

オマリズマブを用いたアレルギー性鼻炎の治療

著者: 米倉修二

ページ範囲:P.28 - P.33

POINT

●オマリズマブは,IgEのマスト細胞結合部位であるCε3に対するヒト型モノクローナル抗体である。

●2019年に既存治療で効果不十分な重症または最重症の季節性アレルギー性鼻炎治療薬として承認された。

●使用に関しては,添付文書情報だけでなく,「最適使用推進ガイドライン」に基づくことが求められる。

●高額な薬剤であり,患者負担を考慮して投与が必要な症例を慎重に判断する必要がある。

ポリウレタン製医療用スポンジを用いた鼻副鼻腔手術後の止血治療

著者: 柳徳浩

ページ範囲:P.35 - P.39

POINT

●鼻副鼻腔手術後には止血が必要である。

●手術において出血しやすい解剖学的部位をきちんと理解することが大切である。

●パッキングの目的は止血,創傷治癒促進,癒着の防止である。

●ポリウレタンフォームは優れた止血資材の1つである。

《咽頭・喉頭》

植込み型舌下神経電気刺激装置を用いた睡眠時無呼吸障害への治療

著者: 中田誠一

ページ範囲:P.40 - P.48

POINT

●2021年に,舌下神経電気刺激装置(HGNS)の植込み手術の術式などが保険収載されたが,神経のどの部分を刺激すればよいのかなど,今後注意すべき点は多い。

●HGNSの植込み・管理をする病院は一定の条件を満たす必要がある。

●適応は,①18歳以上,BMI 30未満の閉塞性睡眠時無呼吸患者にて持続陽圧呼吸(CPAP)を試したができず,②薬物下睡眠内視鏡検査にて軟口蓋の同心性虚脱を認めない者となるが,術後合併症などについてインフォームド・コンセントを得たうえで治療に進むべきである。

チタンブリッジ®を用いた痙攣性発声障害の治療

著者: 讃岐徹治

ページ範囲:P.49 - P.53

POINT

●痙攣性発声障害は,喉頭に器質的異常や運動麻痺を認めず,発声時に内喉頭筋の不随意的,断続的な痙攣による発声障害をきたす疾患である。

●甲状軟骨形成術2型は,発声時に声門が強く内転しても声帯が強く閉まらないように甲状軟骨を正中に切開し,両側甲状披裂筋の付着部を甲状軟骨ごと外側に広げて固定する手術術式である。

●声門開大維持に用いる医療材料「チタンブリッジ®」の医師主導治験が実施され,2017年12月15日に新規医療機器として薬機承認された。

●喉頭形成術(甲状軟骨固定用器具を用いたもの)K400-3として保険収載され,条件を満たした全国の医療機関で施術が可能となった。

ボツリヌストキシンを用いた痙攣性発声障害の治療

著者: 兵頭政光 ,   長尾明日香

ページ範囲:P.54 - P.58

POINT

●痙攣性発声障害に対しては,ボツリヌストキシン治療が標準治療である。

●内転型では有効率は90〜95%,治療効果持続期間は12〜15週である。

●本邦においては,医師主導治験によりボトックス®の保険適用承認が得られた。

●有害事象として気息性嗄声や液体誤嚥がみられるが,おおむね4週以内に改善する。

《頭頸部》

セツキシマブサロタロカンナトリウムを用いた頭頸部イルミノックス治療

著者: 牧野琢丸

ページ範囲:P.59 - P.64

POINT

●頭頸部イルミノックス治療は“第5のがん治療”として期待される治療である。

●アキャルックス®を点滴静注後に波長690nmのレーザ光を病変部に照射することで,病変部に治療反応が生じる。

●現在のところフロンタルディフューザーとシリンドリカルディフューザーを用いた2通りの照射方法があり,個々の症例に応じた照射・穿刺プランを熟考することが肝要である。

●治療経験がまだ少ないため,治療適応をよく吟味し,安全に配慮したうえで症例を蓄積していかなければならない。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた頭頸部癌治療

著者: 廣瀬勝己

ページ範囲:P.66 - P.72

POINT

●ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は,ホウ素と中性子の反応によって生じるα線と放出リチウム核のエネルギーを利用したミクロレベルの局所的な重粒子線治療である。

●局所再発の扁平上皮癌に対する初期治療効果は,完全奏効率で5割程度である。

●局所再発をきたした切除不能な患者では,深部への進展がない早い段階で本治療を検討することが望ましい。

NTRK融合遺伝子陽性がんに対するTRK阻害薬

著者: 竹下直宏 ,   岡野晋

ページ範囲:P.73 - P.76

POINT

●臓器横断的ゲノム診療として,NTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対してTRK阻害薬が薬事承認された。

●頭頸部がんにおいても耳下腺がんや甲状腺がんにNTRK融合遺伝子の発現を認め,治療適応となる。

●次世代シークエンサー(NGS)による遺伝子パネル検査をもとに,今後も臓器横断的ゲノム診療が加速していくことが期待される。

Review Article

頭頸部がんの基礎研究

著者: 峯田周幸

ページ範囲:P.78 - P.92

Summary

●これまで,頭頸部がんに特徴的にみられる遺伝子の欠失や変異,あるいはコピー数の増幅などが多数指摘されており,近年は各遺伝子のネットワーク,染色体異常,エピジェネティクス,プロテオミクスなどの研究が進んでいる。

●本稿では,次世代シークエンスによるゲノム解析で明らかになったこと,また頭頸部がんと血管内皮増殖因子(VEGF),ヒトパピローマウイルス(HPV),がん幹細胞などとの関連について解説し,創薬や治療法の進歩に対する期待に関しても述べる。

●ニボルマブの登場によりあらたながん治療法も一気に広まった。

原著

悪性疾患が疑われたアトピー性皮膚炎由来皮膚病性リンパ節症の1例

著者: 嘉陽祐紀 ,   真栄田裕行 ,   金城秀俊 ,   上里迅 ,   安慶名信也 ,   又吉宣 ,   鈴木幹男

ページ範囲:P.93 - P.97

はじめに

 皮膚病性リンパ節症(dermatopathic lymphadenopathy:DPL)はリンパ節の反応性病変の1つであり,さまざまな皮膚疾患に付随して出現するリンパ節腫大の症候名である。原因となる皮膚病に特異性はなく,腫大リンパ節も孤発性のことが多いが,時に多発性のリンパ節腫大をきたし,炎症性リンパ節腫大や悪性疾患のリンパ節転移に類似する様相を呈することがある。頸部のリンパ節腫大を主症状とすることから,われわれ耳鼻咽喉科医が日常臨床の場で遭遇することもあると思われる。

 今回われわれは,日常よくみられるアトピー性皮膚炎に続発したDPLを経験したので,文献的考察を含めて報告する。

当科で経験した孤立性線維性腫瘍3例の検討

著者: 比嘉朋代 ,   真栄田裕行 ,   鈴木幹男

ページ範囲:P.99 - P.103

はじめに

 孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)は,1931年にKlempererら1)により初めて報告された間葉系細胞由来の腫瘍で,好発年齢は中高年であり,明らかな性差はないとされる2)。主な好発部位は胸膜だが,全身の軟部組織に発生が報告されている。一方,頭頸部領域における発生は比較的稀とされる。SFTのなかには時に周囲組織への浸潤や遠隔転移をきたす例もあり,注意が必要な腫瘍の1つである。

 今回,当科で経験した3例について文献的考察を加え報告する。

化学放射線療法による口内炎に対する半夏瀉心湯の効果

著者: 竹本洋介 ,   菅原一真 ,   橋本誠 ,   坂本知美 ,   山本陽平 ,   沖中洋介 ,   山下裕司

ページ範囲:P.104 - P.108

はじめに

 頭頸部癌に対する化学放射線療法(CRT)は多くの施設で施行されている標準治療の1つだが,さまざまな有害事象が生じ,治療中断や患者の生活の質(QOL)低下につながる場合がある。近年,さまざまな支持療法が提案されているが,完全に有害事象を予防することは難しい。なかでも,口腔咽頭領域の粘膜炎は必発で1),その疼痛により経口摂取が困難になる患者は多い。その結果,経管栄養を余儀なくされ,嚥下障害と相まって入院期間が長期化することも少なくない。粘膜炎やそれに伴う疼痛を可能な限り制御し,経管栄養に依存する期間を短くすることが非常に重要である。

 近年,頭頸部癌のCRTに伴う口内炎に対する半夏瀉心湯の効果が多くの施設で報告されるようになった2〜8)

 今回われわれは,当科でCRT中の頭頸部癌患者に対し,これまで行われてきた支持療法に加えて半夏瀉心湯による含嗽,内服を行ったため,若干の文献的考察を含め報告する。

書評

即戦力が身につく頭頸部の画像診断

著者: 山下拓

ページ範囲:P.65 - P.65

 頭頸部画像診断に関する書物は,部位別に分け網羅的に記述されているものが多い。これらの書物は,診断のついている症例を辞書的に調べるには都合がいいが,画像診断を専門としない耳鼻咽喉科頭頸部外科医が,多忙な臨床の合間に読破し,偏りなく画像診断を学ぶのは容易なことではない。また,診断のついていない症例の初見画像をどのように読み解いて,診断や治療方針に結び付けるかを学ぶことにも困難を伴う。一方で本書は,経験を積んだ医師はもちろん,経験の浅い初学者であっても症例を疑似体験しながら,比較的容易に幅広く頭頸部疾患の画像診断を学べるように構成されている。

 具体的には,まず年齢・性別および簡単な経過が示され,それとともにキーとなる画像が提示される。ここですぐに診断名を見るのではなく,経過と画像から何を疑うか自分なりに考えた後,画像所見の項目を読むことをお勧めしたい。頭頸部画像診断のエキスパートによる記述には,初学者からベテランまで,どのようなレベルの医師にとっても「なるほど」と思わせる読影のポイントやコツが簡潔に示されており,各症例においてより深く画像診断を学ぶことができる。画像所見の後には診断名が示されているが,引き続いて,その疾患についての臨床上のポイントや,解剖学的な周辺知識などの「問題」が提示される。クイズ形式でこれらの問いに答える訓練を行うことで,経験を積むのに何年もかかるような多岐にわたる疾患群を,あたかも実臨床で経験したかのように生きた知識として習得できる。その後には,疾患の概説および鑑別診断と,その鑑別のポイントが記載されている。収められている珠玉の136症例を本書で疑似体験すれば,耳鼻咽喉科頭頸部外科医として診断面において大きく飛躍が期待できるものと考える。

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目次

ページ範囲:P.1 - P.1

欧文目次

ページ範囲:P.3 - P.3

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.98 - P.98

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.112 - P.112

 皆さま,明けましておめでとうございます。

 2022年の年頭に当たり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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