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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻10号

2022年09月発行

雑誌目次

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

ページ範囲:P.805 - P.805

真珠腫 これから増える? 減る?

著者: 小森学

ページ範囲:P.806 - P.810

Point

●過去に報告されている真珠腫の疫学調査についてまとめた。

●先天性真珠腫の絶対数は人口増減と同じ推移を示すと考えられる。

●後天性真珠腫のなかでも狭義の真珠腫性中耳炎は減少すると考えられる。

●後天性真珠腫の絶対数は,原因不明であること,リスク因子であるアレルギー性鼻炎の増加が見込まれること,高齢化が進むことなどから増加してくると考えられる。

手術術式 なぜこんなにたくさんある?

著者: 増田正次

ページ範囲:P.811 - P.817

Point

●本稿の解説は,成人の乳突腔に進展した真珠腫性中耳炎を想定した。

●耳科手術医が何の目的でさまざまな術式を用いるのか,耳科手術初学者の理解を深めるため,実際の症例の術後耳を提示しながら解説した。

●病変の摘出,術後外耳道形態の再建,削開腔の処理に焦点を絞り,耳科手術医がさまざまな術式を選択する理由を端的に記載した。

弛緩部陥凹 ぜったい手術?—手術適応の実際

著者: 吉田忠雄

ページ範囲:P.818 - P.822

Point

●陥凹の程度,癒着,骨破壊など,鼓膜弛緩部陥凹を評価する。

●中耳真珠腫進展度分類における弛緩部陥凹の位置付けを理解する。

●弛緩部陥凹症例の手術適応は,見逃しがちな注意すべき症例もあるため,局所所見,聴力検査,画像検査などを総合的に検討し決定する。

術前CT どこまでわかる?

著者: 窪田俊憲

ページ範囲:P.824 - P.829

Point

●external auditory canal型鼓索神経はCTで同定可能であり,tympanomeatal flapを挙上する際に注意が必要である。

●上鼓室前骨板前方の耳管上陥凹の大きさや陰影の有無はCTで確認できるが,鼓膜張筋ヒダのバリエーションはCTで確認できない。

●鼓室洞の深さはCTを用いてType A,Type B(B1 and B2),Type Cに分類でき,深さによって術野や手術手技が異なってくる。

●CTのみで真珠腫の進展範囲は正確に把握できず,MRIや術中所見での判断が必要になることがある。

術前耳管機能検査 いる? いらない?

著者: 池田怜吉

ページ範囲:P.830 - P.835

Point

●耳管の状態は,鼻すすり型開放耳管,隠蔽性開放耳管,開放耳管,狭窄耳管,正常耳管に大きく分けられる。

●術前耳管機能検査は真珠腫手術において必須の検査である。

●耳管機能検査装置以外の方法でも耳管機能を把握しようと努める必要がある。

●術前だけでなく,術後の耳管機能評価も重要である。

外耳道入口部拡大 いる? いらない?

著者: 柘植勇人

ページ範囲:P.836 - P.841

Point

●外耳道入口部拡大は,canal wall down(CWD)のopen法では必須である。

●CWDの軟組織再建法の場合,末梢充塡だけでは充塡組織が萎縮し,清掃困難や乳突部における真珠腫の再形成再発をきたす可能性があり,基本的には入口部拡大の併用を考慮する。

●軟組織再建における外耳道入口部拡大は,未上皮部分をつくらない拡大術を採用すると都合がよい。その代表的手技として,筆者が行っているZ形成術を活用した入口部拡大を紹介する。

●軟組織再建+Z形成活用の入口部拡大+外耳道拡大+末梢充塡は,open法に置き換わる手技として活用している。

鼓膜チューブ留置 いる? いらない?

著者: 志津木健

ページ範囲:P.842 - P.846

Point

●鼓膜チューブは中耳陰圧対策になる。

●陰圧対策によって術後の滲出性中耳炎や鼻すすり癖による鼓膜陥凹を予防できる。

●陰圧対策だけでポケット再形成や軟素材後壁再建後の陥凹を防げるわけではない。

削開腔充塡 いる? いらない?

著者: 森田由香

ページ範囲:P.847 - P.851

Point

●乳突腔充塡によって再形成性再発の防止が可能である。

●乳突腔と上鼓室も併せて充塡することが重要である。

●聴力良好例,乳突蜂巣発育良好例ではその適応は慎重にすべきであり,病態に応じた術式選択が重要である。

ぜったいCanal Wall Up!

著者: 白馬伸洋

ページ範囲:P.852 - P.856

Point

●外耳道後壁保存型鼓室形成術(canal wall up mastoidectomy:CWUM)は,外耳道後壁削開型鼓室形成術(canal wall down mastoidectomy:CWDM)と違い,正常な鼓膜の位置と外耳道の形態を保存し,cavity problemの心配がない真珠腫手術の理想的な術式である。

●CWUMでは,CWDM with reconstructionと違い,保存された外耳道が外耳道再建の強固な支えとなることで真珠腫再形成予防が可能となる。

●CWUMでは,真珠腫の外耳道侵入部におけるbottom push up(BPU)という操作により,外耳道が広く保存されることで,より確実に真珠腫再形成予防が可能となる。

●CWUMでは,BPUにより外耳道侵入部における真珠腫母膜の緊張が緩和され,剝離が容易となることで,真珠腫遺残予防が可能となる。

《世界の潮流》

米国での真珠腫手術

著者: 柴田清児ブルース

ページ範囲:P.857 - P.861

Point

●米国における中耳手術の発展は,William Houseをはじめとする近代のneurotologist/otologistの功績が大きい。

●人種間での中耳真珠腫の発生率は異なり,白人,黒人,ヒスパニック,黄色人種の順に多い。

●手術アプローチはcanal wall up(CWU),もしくはcanal wall down(CWD)が基本であるが,CWD後にcanal wall reconstruction(CWR),もしくはmastoid obliterationを行う手術法もある。

●CWRを行う場合は外耳道後壁を一時的に外し,CWDと同じ視野で手術操作が可能であり,その後,外耳道後壁再建により外耳道の自然な自浄能を保つことができるメリットがある。

ヨーロッパでの真珠腫手術

著者: 茂木雅臣

ページ範囲:P.862 - P.866

Point

●ヨーロッパにおいても中耳真珠腫はcommon diseaseである。

●ヨーロッパでは国・地域によって医療制度の違いが大きく,真珠腫治療を取り巻く状況もさまざまだが,概して医療技術や設備などは日本と同等の水準にある。

●センター化による症例の集約化,また豊富な経験に裏打ちされた高水準の技術,オーガナイズされた教育システムが,安全で確実な真珠腫手術の継承に貢献している。

●頭蓋底手術や人工聴覚器手術の豊富な経験が真珠腫手術にも応用されうる。

原著

下咽頭梨状陥凹瘻の治療経験

著者: 平山俊 ,   榎本圭佑 ,   杉田玄 ,   河野正充 ,   熊代奈央子 ,   保富宗城

ページ範囲:P.867 - P.871

はじめに

 下咽頭梨状陥凹瘻は先天性内瘻の1つである。1973年にTuckerら1)が前頸部膿瘍の感染経路としてはじめて報告したことに始まり,1979年にはTakaiら2)が急性化膿性甲状腺炎の感染経路として報告している。本疾患は,小児期における頸部の反復性感染の原因として常に念頭に置いておくべき疾患であり,的確な診断と根治治療が重要となる。今回,当科において治療した下咽頭梨状陥凹瘻の7例について,その臨床経験をまとめたので,文献的考察を加え報告する。

AYA世代口腔がん症例の検討

著者: 須波綾 ,   安里汐織 ,   大西美帆 ,   東野正明 ,   河田了

ページ範囲:P.872 - P.876

はじめに

 adolescent and young adult(AYA)世代とは,15〜39歳の思春期および若年成人であり,就学,就労,結婚,妊娠,出産などAYA世代特有のライフイベントが多い世代である。そのため,AYA世代の診療では小児や壮年・老年世代のがん診療にはみられない特徴や課題が存在する。国立がん研究センターによる全国のがん診療連携拠点病院の院内がん登録データによると,2016〜2017年の2年間で,AYA世代のがんは5万7788例の報告がある1)。AYA世代は小児期と並んでがん死亡率が低く,AYA世代のがんは白血病,リンパ腫などの血液がんや脳腫瘍,甲状腺がん,卵巣がん,子宮がん,乳がん,精巣がん,骨軟部肉腫が上位を占める2)。2018年頭頸部悪性腫瘍登録1万3149例のうち,39歳以下の症例は362例(2.8%)と少ない3)。その原発部位は口腔が169例(46.7%)で最も多く,唾液腺81例(22.4%),鼻副鼻腔43例(11.9%),上咽頭32例(8.9%),中咽頭20例(5.5%),下咽頭12例(3.3%),喉頭5例(1.4%)の順であった。

 そこで,AYA世代における口腔がんについて,われわれの施設で経験した症例の特徴について検討した。

成人自閉症スペクトラム障害患者の鼻腔異物例

著者: 阪上剛 ,   成尾一彦 ,   岡本倫朋 ,   堀中昭良 ,   松山尚平

ページ範囲:P.877 - P.880

はじめに

 鼻腔異物はほとんどが10歳以下の小児にみられ,成人例は比較的稀である。発達障害症例では異物挿入を反復することが報告されているが,今回,成人自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)患者の鼻腔異物を表面麻酔下に摘出しえた1例を経験したので,考察を交えて報告する。

造影CTにて判明した篩骨洞glomangiopericytomaの1例

著者: 福家智仁 ,   山田弘之 ,   金児真美佳 ,   小林大介 ,   平田智也

ページ範囲:P.881 - P.885

はじめに

 鼻副鼻腔領域に発生するglomangiopericytomaは,稀な低悪性度の間葉系腫瘍である。易出血性の腫瘍で,切除に際して,栄養動脈の塞栓術を行う報告も散見される。今回,甲状腺癌手術後に撮影した造影CTにて腫瘍を指摘され,内視鏡下に切除したglomangiopericytomaの症例を経験したので報告する。

endoscopic medial maxillectomy with preservation of inferior turbinate(EMMPI)を用いて摘出した上顎洞血瘤腫の1例

著者: 佐藤孝大 ,   木村将吾 ,   中丸裕爾 ,   本間あや ,   鈴木正宣 ,   本間明宏

ページ範囲:P.887 - P.892

はじめに

 上顎洞血瘤腫とは,上顎洞の易出血性良性腫瘍の総称である。比較的稀な疾患ではあるが,断続的な鼻出血や骨破壊を伴う腫瘤性病変を呈するなど,悪性腫瘍との鑑別が臨床上問題となる1〜4)。性差は3対2で男性に多く,好発年齢は10〜40代と比較的若年者に認め5),50代以上が多くを占める上顎洞扁平上皮癌に比べて好発年齢が低い6〜8)。病因としては真性血管腫や炎症性変化・出血による二次性産物,両者の混在があり9),病理組織学的所見は血管のうっ血や拡張,拡張血管の集簇,出血巣やフィブリンの析出の3つの所見が混在していることが特徴的である10)。根本的治療法は外科的切除であり,腫瘍の局在や大きさによって犬歯窩切開やendoscopic medial maxillectomy(EMM),endoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)など,アプローチの異なる術式から選択して手術治療を行う11〜13)

 今回,われわれは上顎洞血瘤腫に対してendoscopic medial maxillectomy with preservation of inferior turbinate(EMMPI)を用いて腫瘤摘出を行った。上顎洞底部の腫瘍基部において術中・術後ともに良好な視認性と操作性が得られたので,文献的考察を含めて報告する。

お知らせ

第13回耳鼻咽喉科心身医学研究会

ページ範囲:P.841 - P.841

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目次

ページ範囲:P.801 - P.801

欧文目次

ページ範囲:P.803 - P.803

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.886 - P.886

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.896 - P.896

 医師の働き方改革推進のため,令和6(2024)年4月から医師に対して労働基準法等に基づく休日・ 時間外労働時間の上限が適用され,労働時間の短縮が求められています。これは,診療活動のみならず教育・研究活動にも大きな影響を与えると考えられることから,質の高い医学教育・医学研究をより効率的に実施していくことが求められています。一方,日本専門医機構は,このたび,育児・介護休業法附帯決議への対応の観点から,子育て世代の支援 (育児と仕事が両立可能な職場環境整備)を行っている医療機関の研修プログラムについては,特別地域連携プログラムの設置を条件に,専攻医の採用数に加算を行う方針となりました。今や,専攻医に女性が占める割合は40%となり,研修期間中に出産や育児などのライフイベントを経験することは「特別な事情」ではなくなっています。専攻医採用数の対策のためではなく,女性専攻医が男性と同等の臨床経験を積めるような環境を整え,女性耳鼻咽喉科専門医の質を担保することは,日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会にとって喫緊の課題です。こうしたことから,本学会では,タスクシフトやICT化などの医師の働き方改革や,院内保育,病児保育,延長保育,夜間保育施設,男性専攻医の育児休業など,子育て世代への支援への取り組み事例を調査し,働き方改革と子育て世代の支援の推進に取り組んでいきます。読者の皆様も,成功例をご存知であれば,ぜひ,情報のご提供をお願いいたします。

 さて,今月号の特集は「真珠腫まるわかり!」です。中耳真珠腫に対する手術では,外耳道後壁を温存するか? 外耳道後壁を再建するか? 削開した乳突洞を充填するか? 1回で終わらせるか? 段階手術にするか? など,さまざまなポイントで術式の選択が求められます。専攻医や専門医を取得したばかりの読者の皆さんは「なんでこんなにいろいろあるの?」と思われていることでしょう。本号では,真珠腫のエキスパートの皆様にこの質問に答えていただいています。全編お読みいただくと「なるほど!」と解っていただけると思います。ぜひ,ご通読ください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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